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バックトラック 01-10

 ダンジョン・シーカーは、マンティコアの死体に歩み寄ると確認した。とどめをさす必要がないと判断したのかマンティコアから離れ、バイクのところへゆく。

 レザージャケットのおとこはバイクについたケースから、何かを取り出す。驚いたことに、それは翼を持つ猫である。

驚いた顔で見ているエリカに、おとこは笑みをなげた。


「紹介しておこう、おれの相棒である風猫のフェリクスだ」


 猫は、にゃあとエリカに挨拶したので、エリカも思わず会釈して応えた。猫は翼を使って、宙に浮く。前足には、大きな瓶を持っている。


「じゃあ、フェリクス、たのむぞ」


 まかせろ、というように猫はにゃあと鳴いて応える。そして、倒れているカタギリたちのところに行くと、瓶から透明のジェルをふりかけた。

 驚いた顔をするエリカに、おとこが声をかける。


「ああ、あんたはダンジョン初心者だったな。心配ない、あれは治療用のスライムだ。傷ついた身体の組織を、回復させてくれる」


 そう話ながら、ダンジョン・シーカーはロミオのところへ行った。おとこはアンプルを接続した注射器を、ロミオの肩へと突き立てる。

 ほう、とダンジョン・シーカーはため息をもらす。


「さすが、デモノマニアだ。回復がはやい」


 ロミオが、呻き声をあげる。意識を、取り戻したようだ。

 それと同時に、カタギリたちも呻き声をあげる。全員意識を回復できるレベルまで、傷が癒えたということらしい。


「ああ、それと。すまんな」


 ダンジョン・シーカーの詫びに、エリカは首をひねる。


「なんのこと?」


 おとこは、親指で背後にあるマンティコアの死体を指す。


「あまり綺麗に、殺せなかった。少し、値が下がってしまう」


 エリカは、驚いて首をふる。


「あれを仕留めたのは、あなたでしょ。あなたに権利が、あると思うわ」


 ダンジョン・シーカーは、首をふる。


「君たちの獲物を、横取りする気はないよ」


 カタギリが呻きながら、立ち上がる。エリカは、慌ててそちらへ向かった。

ダンジョン・シーカーは、バイクをおこしまたがる。風猫も、その肩に乗った。


「じゃあ、おれは先に地上へあがって助けを呼んでくる。このへんのモンスターは、だいたい避難してるみたいだから、

しばらくは大丈夫だろ」


 カタギリの身体を支えつつ、エリカが声をかける。


「ねえ、名前を聞いてないんだけど」


 バイクのハンドルを握ったおとこは笑みを浮かべて答える。


「ハガネ・アクムシだ」

「礼を言っておくわ、ハガネさん。ありがとう。それと、サインしてないけど」


 ハガネは、少し驚いた顔をする。


「ああ、次にあったときに必ず」


 ハガネのバイクは風を巻き起こし、ダンジョンの黄昏へと溶けていく。


「助かったのか、おれたちは」


 カタギリが、絞り出すように言葉を発した。


「呆れるばかりに、悪運が強いな。おれたち」


 エリカは、鼻で笑う。


「何いってるの、ほんの実力でしょ」


 カタギリは苦笑し、痛みで顔をしかめた。



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