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勇者になれなかった僕の英雄譚  作者: 稀木一護
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勇者が産まれた日

その日は王国にとって永遠に語り継がれる栄えある日になるはずだった。


魔王による被害で日に日に衰弱していく我が国ノア王国。

その対策として語り継がれてきた勇者を人工的に作り出すための魔法陣を、我が国最強と言われる7人の騎士に対して使用したのだ。


僕マルコ・ディエゴも騎士団の見習いとして頑張ってきた。7人に選ばれることはなかったが、勇者の誕生といずれ自分がなる未来を夢見ていたのだ。


この日のために人類は魔力を惜しみなく使い、騎士も地力をつけるため血反吐を吐くような訓練を行ってきた。


結果はどうだ。

そこには倒れる騎士たちと魔力を送っていた魔導士たち。

そして、()()()()()をした7人の少年少女たちがそこに眠るように横たわっていた。


その魔法陣に関わった騎士7人、魔導士たちは全員亡くなり、7人の少年少女たちは気絶しているだけであることがわかった。


王国はまた絶望に陥るかのように思えた。彼らの持つ力を見るまでは。


これは7人の別世界からきた勇者たちと勇者になることが叶わなかった僕の魔王を倒すまでの英雄譚である。



―――――――――――――――――――――――――――


「国王陛下!あれは魔力を元に力をさらに引き出し、人造的に勇者の存在を作り出すものではなかったのですか!」


騎士団の副団長、現在は団長が亡くなられたために団長代理をしているキビト団長が国王陛下に直訴した。


普段は冷静沈着で、騎士団に似合わず細身長身と貴族のようななりをしているが、今回ばかりは耐えられなかったようだ。


団長と大切な仲間の死を受け入れられず、感情のまま国王に詰め寄っている。


苦労で白く染まった髪や、歳を感じさせる皺と鍛え抜かれた筋肉が相まって、国王に静かな凄みを与えていた。

その国王が落ち着きを保とうとした声で、


「我が騎士、キビトよ。あの魔法陣に対してリスクがあったこと自体は知っていた。だが、このような事態になることは誰も想定していなかったのだ。魔王への対抗策としてこれしか考えられなかった。亡くなった騎士たちには申し訳なく思う。」


バツの悪そうな顔をする国王陛下に対して、その苦労を知るキビトは感情的になりすぎたと思いは話を変えた。


「あの七名の少年たちは一体何なのでしょう…?彼らは今どこに?」


横から説明しましょうと、キビトを落ち着かせるようにでてきたこの男は国防大臣であるシュート。


彼も黒髪に白髪が混じり、中肉中背で色白、目元にはクマがある。30歳くらいのはずだご実年齢より老けて見える。


そのシュート大臣により話された内容はこうだ。


・彼らはこことは全く違う世界からきた存在であること

・彼らは過去勇者が持っていた力に等しいものを持っていること

・現在は事情を説明して、彼らの助力を得ようとしていること


この三つだ。


「全く関係ない世界の、それも子供らに対して助力を得ると?シュート大臣」

少しまたムッとした様子で発言する


「だが結果としてそれ以外に方法があるまい。彼らには【魔王の毒(スライム・マナ)】に対する完全な耐性があるということがわかっているのだから。」


おいそれと魔王たちに対して手出しができないのは魔王がいる土地の周りが生物にとって毒となるだけの魔力。通称【魔王の毒(スライム・マナ)】で満ちているからだ。


この魔力を多量に摂取した場合、全身が汚染され体に激痛が走りやがて死ぬ。


対抗策は浄化系の魔法を使うこと。これは可能ではあるが、魔力がずっと持つわけでもないので一時的なものだ。


もう一つは元から耐性を持つ者。だが持っていたとしても他よりはマシ程度のもので肉体を蝕む。


どんどんこの【魔王の毒(スライム・マナ)】の影響は強まっており、このままでは世界を包み込む勢いだ。



「…彼らに対して任せるしかないと言うわけですね。ですが二つほど。危機的状況といえど全く鍛えぬままに送り込むわけにはいきません。

騎士団で少なくとも半年を目処に訓練をさせたいです。もう一つは我が騎士団の中にも一人だけ魔王の毒に対して耐性を持ち、浄化系の魔法を使えるものがいます。彼をその7人に対してつけてください。」



「後者はともかく、半年は長すぎる!ただでさえ騎士団の多くがいなくなり民衆の不安が大きくなっているのだぞ!」

シュート国防大臣が慌てるように答えると



「確かにキビト騎士団長のいうことにも一理ある。実際我が国最後の希望である勇者たちが簡単にやられてしまってはこの国も滅び、世界は魔王のものとなるだろう。

だが、時間がないというのも本当だ。よって三ヶ月の訓練を目処として出発できるように頼む。それまでの期間、民衆の不安を抑えるのは我らの仕事だ。」



熱を帯び始めた議論をそう国王陛下がまとめ議題は終了となった。


―――――――――――――――――――――――――――


国王陛下に対する直訴が終わったあと、キビトは頭を悩ませていた。


別世界からきた、それも少年少女に例え大きな力を得たとしても戦えるのかと。

それに先程はああ言ってしまったがマルコのやつをお供にして大丈夫かと。


とりあえずは、ことの当事者となるマルコに対して話をしようと呼び出した。


「失礼します!マルコ・ディエゴです。何か御用でしょうか!」


ハキハキとした声でまだあどけなさが残っている、金髪で碧眼の騎士見習いの少年だ。


才能は今は亡き団長からも認められており、努力家。人一倍勇者に憧れる少年だった。


まずは座るように声をかけるとぴしっ!と背筋を伸ばし座っていた。



「いきなり本題から話させてもらう。この前起こった事故のときに現れたあの7人に勇者の力があることが判明した。その7人を私たちの手で鍛え、最終的には魔王のもとへ送り出す。

そこで、マルコにはその7名の補助をお願いしたい。これは君の耐性でしかできない仕事だ。」



マルコは事故の話を聞き、俯いていたが話を最後まで聞くことで決意に満ちていた。



「あの7人とマルコには特別に訓練を行う。君がサポートする立場に回るから頑張ってほしい。

それと彼ら7人は別の世界から来た人間らしい。精神的なものも親身になってあげてくれ。

最後に彼らにとってはただでさえ急に見知らぬ土地に投げ出され、不安な状況だ。だから彼らを呼び出すにあたって死者が出てしまったということは伝えないようにしてくれるよう頼む。」



マルコは少し不思議そうな顔をしていたが、

「わかりました!魔王討伐のために全力で頑張ります!」


キビトとマルコはここで会話を終わり、キビトは他の団員に対しても口止めをするように行動したのだった。


―――――――――――――――――――――――――――


マルコ・ディエゴは悩んでいた。


自分が魔王討伐に直接的に関われることは大いなる栄誉であり、勇者を目指していた自分にとってとてもやりがいのあることだ。


しかし、実際目の前で尊敬できる先輩たちや団長が亡くなってしまったこと。そしてそこから現れた7人が彼らの死を完全な無関係とは思えないのだ。


彼らは急に呼び出されてしまった被害者。

それはわかってるのに


まずは自分にできることをやろう。彼らが勇者だというのであれば彼らを鍛えることで魔王討伐をしよう。うじうじ考えるのは自分らしくない!


そう思い、その7人と話すのを心待ちにした。










こんにちは。稀木一護と申します。

こちらが初投稿で、文章をこうして書くことも初めてです。

これからこの作品を執筆していきたいと考えているのでよろしくお願いします。

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