三匹の冒険家
何よりふんわりウェーブのかかった金色の髪が印象的な女性だった。尻尾はあるが耳が見えず、姿だけでは何の動物かは判断できない。服はTシャツに短パン姿で、キッシュやネザーラより幾分年上に見える。
「お前達、冒険家になりたいんだってな。チワから聞いたぜ」
「あなたは?」
「俺はラングール。分かりにくいから先に言っとくが、猿の亜種だ」
「そうですか。それで、何か用ですか?」
突然の来訪者に、物怖じしない性格のキッシュが応対するが、ネザーラは怯えて後ろに隠れていた。
「いやなに、仲間を探してるって聞いてな。それで、俺も仲間に入れてくれねぇか?」
「え?」
唐突な申し出に、二匹は呆気にとられる。
「いやあ。俺もついこの前、冒険家を始めたばっかりでな。俺と同じ様な奴がいるって聞いて、これは好機だと思ったんだ」
「そうでしたか。どうしましょう?」
キッシュは、先に仲間になったネザーラに聞いてみた。
「う~ん……いいんじゃないかな」
ネザーラの時も同じだが、お互い初対面の状態では直感で相手を推し量る他は無い。
余談だが、そうした直感は肉食動物より草食動物の方が鋭いとされている。
「まあそう固く考えるなって。一緒に冒険してみて、もし相性が悪そうなら解散すれば良いんだし」
「それもそうですね。それでは、これからよろしくお願いします」
こうして、猿のラングールも仲間に加わった。
「よし! 決まりだな。それじゃあメシ食いに行こうぜ」
「どうしてそうなるかな?」
ラングールの唐突な提案に、ネザーラが思わず突っ込んだ。
(ご飯を食べに行く? つまりこれから狩りにでも行くのでしょうか?)
キッシュは会話の意味を正しく理解できず、的外れな想像をしていた。
「お互いを知るには、一緒に卓囲んでメシを食うのが一番早いだろ? だからそこで、改めて自己紹介とかしようぜ」
「なるほど、確かにそれは良い案だね」
「だろ? それに金の事は気にするな。今回は俺が払ってやるから……って、どうした? さっきから黙りで」
ラングールは会話に入って来ないキッシュの方に向き直った。
「僕にはよく分からないのですが、ご飯を食べると言う事は、まず獲物を狩って来るんですよね?」
ここでようやく二匹は、キッシュが会話に着いて来れていない事に気付いた。
「そっか、キッシュちゃんは街は初めてだったんだね。ここでの食事は他とはちょっと違っててね」
「まあ実際に行けば分かるって。それにしても、ナリはちっちゃくてもちゃんと肉食動物なんだな。あははははは!」
「もう、笑い事じゃないよ。最初捕まった時は食べられるかと思ったんだから」
「大丈夫です。仲間は食べません……よほどお腹が空かない限りは」
その言葉に、ネザーラはにわかに焦りだした。
「ほら早く行こう! キッシュちゃんのお腹が空く前に」
ネザーラに押される形で、三匹は同じ道を進み始めた。