それぞれの"これから"
「それで、行く前に言ってた真実とやらには辿り着けたの?」
「それがな。娘に先を超されてしまったよ」
「えっへん」
娘は両親に、これまでの冒険で見聞きした事を誇らしげに語って聞かせた。
「……何だかよく分からないわね」
「まさか剣が鍵だったなんてな。おかげで、私が行きたかった所に娘達が先に辿り着いた」
悔しがる父を前に、母と娘が笑った。
「まあでも、これで分かったでしょ。自分の娘に出し抜かれる位なんだから、あなた冒険家なんて向いてないのよ」
「それはむしろキッシュが……いや、そうだな。ここらが潮時なのかもな」
父は素直に自らの衰えを認め、冒険家の引退を決意する。
「それで、キッシュはこれからどうするの?」
「僕は……」
とある遺跡への道中。
「こっちにあるのはあの遺跡だよ。どうするの? ラングールちゃん」
「そりゃもちろん、アレをいただく」
ラングールは悪い顔をしてネザーラに告げる。
「やっぱり……なら私も一緒に行って良いかな?」
「おっ、お前もアレが欲しいのか?」
「うん。むしろあれが無いと、欲しいものに届かないと思うから」
「よっしゃ! 俺達で新たな冒険に出発だ!」
「うん!」
その後間もなく、とある遺跡で爆音と可愛らしい怒号が響き渡った。
そして三度荒らされた某遺跡内。
「まったく! なんなのよアイツら!」
『何故入り口を閉めておかないのですか?』
憤慨する赤髪の少女に、至極真っ当な指摘をする声。
「ここ換気装置が壊れていて、閉めると空気が澱むのよ」
『そうでしたか』
「それにしても、よくも勝手にここの場所バラしてくれたわね! ノア」
『貴方がそれを言える立場でしょうか? まさか"新種"に瀕死の重症を負わせていただなんて』
その時、普段は穏やかなノアの声色が明確に変わった。
「し、仕方無いじゃない! 管理者の立場上迎撃しないわけにもいかないし……」
『私達で決めたルールを忘れた訳では無いのですね?』
「当たり前じゃない。だからちゃんと治療もしたし、さっきの奴らだって、無理に追撃しなかったのよ」
『……なら良しとしましょう。今や私達は、新種の成長を静かに見守る為にいるのです。私達が新種を傷付けるなど、あってはならない事です』
「とは言え」
パンドラは今いる部屋を見渡し、ため息をついた。
「また鍵を持って行かれたんだけど、アンタは大丈夫だと思う?」
『私は大丈夫だと思いますよ。あの娘達なら……』
「そう」
地上に生きるのがどんな生き物であろうと、時は動き続け、命の営みは受け継がれていく。
誰が何を成そうと、何が潰えようと、空は変わらず青いままである。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
意味不明な部分も多かったとは思いますが、その"空白"も含めて楽しんでもらえたら幸いです。