表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

帰らぬ父を探しに

 あれから五年の月日が流れたが、未だに父親は帰って来ない。

 娘キッシュも大きくなり、一般的に成獣と認められる年になっていた。ただ背はあまり伸びなかったため、幼い印象は拭いきれていない。


「本当に行くの?」


「はい。僕も冒険家になってお父さんを見つけ出し、連れて帰ります」


 キッシュは荷物をまとめながら、母親にそう宣言した。


「それにしても、あなたにしては随分思い切ったわね」


「冒険家になる事自体は、昔から決めていたんです。世界中の遺跡や、そこに眠る遺物には興味があったので」


 かつてニンゲンが作ったとされる数々の建造物は遺跡と呼ばれ、その中にある古い品々は遺物と呼ばれていた。


「そう言えば、キッシュ(あなた)は昔から、お父さんが持って帰る変な物が好きだったわね」


「……はい」


 楽しかった幼い頃の記憶が、帰らぬ父への憧憬として、今なおキッシュの胸に刻まれている。


「ところでそれ、邪魔じゃないの?」


 母親が指差したのは、彼女が背中に括り着けた剣だった。


「これは、お父さんが最後に残してくれた物ですから」


 その剣は、柄まで含めるとキッシュの背丈とほぼ同じ長さがある。それを鞘に入れて背負っているため、はっきり言って自力ではそこから抜けない。


「それに、剣を持ってるって、いかにも冒険家っぽいです」


「いやいや。お父さんはそんな物装備してなかったわよ」


「そうでしたっけ?」


 本当は知っているが、とぼけてみせる(キッシュ)


「その割に、服はいつものそれなのね」


「未知の場所へ行くからこそ、慣れた服が一番です」


 そう言いながら、準備を締めくくるかのように、腰まで伸びた黒髪をリボンでまとめた。

 ちなみに今も着ている彼女の普段着は、飾り気ゼロの白いワンピースである。


「ふぅ、そう言う妙なこだわりはお父さんそっくりね。とにかく、やると決めたからにはしっかりやりなさい。そして、お父さんと一緒に元気な顔を見せてちょうだい」


「はい、お母さん。それじゃあ、行って来ます」


 こうして、キッシュの父を探す旅が始まった。


「まずは街に……」


 各動物の亜種は総じて知能が高く、他の動物間での言語によるコミュニケーションを可能にした。

 その結果、互いが協力して生活する様々なコミュニティ、すなわち街を各地に形成していたのだ。

 キッシュはその中の一つ、父が冒険の拠点としていた街を、初めの目的地として定めていた。そこには、冒険家として活動するのに必要なものがある……らしい。


「楽しみです」


 今までは特に用が無かったので行った事はなかったが、まだ見ぬ場所に好奇心が疼くキッシュだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ