表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

シエル

 誕生日の12月25日。時間は夜23時を回った頃。


 最後の日記を書き終えて、遺伝子改造をした鷹のホーに託す。ホーはとても優秀で、今までも色んなものを秘密裏に運んでくれていた。


 「ホー、頼んだよ・・・」


 ホーが窓から飛び出して暗い夜空を飛んで行く。ボクの日記は仲間の元にきっと届くだろう。


 室内からホーを見送っていると、ふと背後に気配を感じた。


 やっぱりボクの推察通り、奴らはやって来た。


 サラ達は特効薬をバラ撒く為に、もうこの家には居ない。ボクだけだ。

 むしろ仲間を殺させない為に、ボクは1人になる選択をした。


 「遅かったね。もうすぐボクの誕生日が終わってしまうよ。祝いに来てくれたんだよね?」


 冗談まぎれにそう言いながら、扉の方を向くと黒ずくめの男達が立っていた。


 「ここまで粘ったようだが、もうお前は終わりだ・・・動くなよ?」


 彼らは研究が成功して特効薬が世界中にバラ撒かれた事をまだ知らないみたいだ。


 「動くも何も、君たちが僕を歩けない身体にしたんじゃないか」


 ボクは車椅子だ。逃げられないし、もう逃げる必要もない。


 彼らはニヤニヤしながらサイレント付きの銃を構える。


 「シエル・・・何か、言い残す事はあるか?」


 彼らは遊びで聞いているんだろうな。


 ボクは間違いなく死ぬけど、怖くはない。兄ちゃんが先に地獄で待っている。

 そういえば地獄に堕ちた者は、そこで永遠の責め苦に遭うと聞いた事があった。


 (・・・でももし、次に生まれ変わるチャンスが貰えるのなら、今度はボクが兄ちゃんを守りたい。もう無力な自分は嫌だ。カミサマなんて居ないって散々思い知らされた人生だったけれど、今だけは祈ってもいいよね・・・?)


 ボクは笑って最期の言葉を言った。


 『・・・カミサマはボクの業の深さとワガママ、どちらを選ぶんだろうね?』




 次の瞬間、世界は真っ白になった。



◇◇◇



 気づくと僕は白い部屋に居た。


 「あれ・・・?ここは?」


 ボクは死んだはずだ。なら、ここが地獄なのかな?


 そして自分が立っている事に気づく。


 「足がある・・・」


 (そうか、霊体なら足が復活しちゃうんだ?意外と便利かも。)


 ただ、この真っ白な空間は感覚を不安にさせる。何か声を発してないと気が狂いそうになる。


 なんでもいい、とにかくなにか声を出さなければ・・・!


 息を大きく吸った時、急に目の前に綺麗な女の人が現れた。

 ボクは驚き、尻もちをつく。


 「えっ!?あ、あの・・・?!」


 綺麗な女の人は、最初はボクを見ながら言葉に迷っているようだったが、すぐ意を決した表情になり、語り始めた。


 『・・・シエルよ、お前の願い通り、お前を転生させる事に決めました。』


 (え・・・カミサマ・・・なの?!)


 頭の中で何度も状況確認してみたけど、やっぱりカミサマってことで良いかもしれない。


 (本当に・・・いたんだ・・・。)


 とりあえず・・・転生するならするで構わない。でもそれよりも大事な確認ポイントがある。


 「・・・そこに兄ちゃんはいるんですか?」


 『はい、もちろんです。』


 ですが・・・、と続く。


 『・・・あなたの兄であるロイドの魂は転生時に、8人の神からとても愛されて・・・人智を超える力を持って転生されました。』


 「人智を・・・超えるチカラ・・・?」


 『はい・・・ですがロイドは過酷な運命の中で魂そのものがボロボロになってしまっていました。8人の神は、彼の辛い記憶を消し去り、新しい人生を与える事にしたのです』


 「つまり、ボクのことは覚えてない・・・?」


 『はい・・・。彼の魂を守る為には仕方がなかったのです。』


 「そっか・・・」


 『そして、貴方もまた神々から愛される器のようです。・・・兄を守りたい、と貴方は強く願いました。ですが、貴方の魂もまた、深く傷ついています。そのまま転生をすれば、貴方は前世の記憶を何度も何度も夢で追体験をする事になるでしょう。悪夢は時によって人を蝕んでしまうもの・・・そうなれば魂も長くは持ちません・・・それでも記憶を持って転生を望みますか?』


 「うん」


 『え・・・即答するのですか??もう少し悩んでも良いのですよ??』


 「だってさ、兄ちゃんを忘れて転生するか、兄ちゃんを覚えたまま転生するかの二択でしょ?ボクにとっての1番の悪夢は、ボクが兄ちゃんを守れなくなる事だよ。守れるように生まれ変わらせてくれるんでしょ?兄ちゃんの役に立てるなら、いつ死んでも本望だよ」


 『ぷぷっ』


 『あっはっは!やっぱり面白い子だ!』


 『あはは!兄貴大好きっ子もここまで極めてこられると逆に爽快よね』


 急に女神様の他にも沢山のカミサマが現れた。


 『だって、あのロイド君の弟君だもの!こうなると思ったのよねぇ』


 『うん、ボロボロだけどこっちも綺麗な魂の色だね。兄弟でこんなの、なかなかないよー?』


 『こら、お前たち・・・!』


 女神様はオロオロしてる。


 『いいじゃないですか、大女神さま。ワシらはこの子も気に入った!』


 『でも、ロイド坊やを守れるくらい強くなりたいだなんて・・・随分と言ってくれるわよねぇ。でも楽しそう!』


 ボクの目の前でカミサマ雑談?会議?が行われている。

 

 『この子には、とっておきの“オプション”を付けてあげましょうよ♪・・・ほら、丁度・・・復活の儀式が始まったようだし?』


 『ああ、それが良いね!すぐに転生後のロイドを見たらわかるように“魂が反応”するようにしておこう!そのくらいならボロボロの魂でも問題ないさ!』



 そうしてボクはノリノリになった神々によって転生した。


 最初は転生してすぐに兄ちゃんに殺される所だったけど、結局、ボクは生きて兄ちゃんと一緒に過ごせている。



 ーーーそして、今。



 「んー、じゃあ・・・シエル、でどうだ?」


 記憶は消し去られたと聞いていた。


 期待しなかったと言えば嘘になる。だが、我ながら一方的な思いで勝手に期待をするなんて、痛いにも程があると自覚はしていた。


 奇跡でも偶然でも何でも構わない。


 目の前にいる兄は魂は同じだとしても、前世の兄とは違う事もわかってる。実際、今の自分達には血の繋がりなどもなく、種族も違う。


 でもボクは、今でも“弟”であることを許された気がしたんだ。


 嬉しくて嬉しくて、涙が溢れてくる。


 ボクはこの世界でも“シエル”でいられる。





 それにしても、ボクの魂に刻まれた本当の名前はいい加減過ぎた。


 ロイドノ・オ・トートー  ってなんだよ。


 モロに“ロイドの弟”だよね。カミサマってこんな、しょーもない名前つけるんだね。絶対にテキトーだよね?これ絶対に秒で決めてるよね?


 もしカミサマ達にまた会う機会があったら、文句を言ってやらなきゃいけない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ