街へ行こう①
魔王のシエル、そして魔族のフィー、ガイル、ルル。
こいつらと暮らし始めてから3ヶ月目に突入した。
研究も順調で、とにかく平和だ・・・が!
ずっと森に籠っていると、足りないものが出てくる。何せ1人暮らしだと思っていたので、急に5人に増えると、足りないものだらけなのだ。
食器にしても、料理を作る度にルルが魔法で人数分の食器を作ってはいるのだが、時間が経つと消滅してしまう。
家事でそれなりに魔力を使っているようなので、1日のトータル消費は思ったより大きいようだ。
ルルは毎日、文句も言わずに頑張っているが、そろそろ考えてあげたほうが良いだろう。
「・・・と、いうことで近くの街に買い物に行ってくる」
朝食後のお茶を飲みながら、その場に居た全員に伝えたところ、シエルがすぐに反応した。
「じゃ、みんなで行こうよ!」
「やめとけ・・・魔王と魔族が街になんて行ったら大パニックが起こるだろ」
大体、魔族が1人現れただけでも大事件だ。俺は平和に買い物がしたい。
「大丈夫だよ。見た目を人間にしたら良いんでしょ?」
そう言ってシエルは自身に何かの呪文をかけた。以前、シエルに聞いたのだが、魔族にしか使えない魔法が幾つも存在するらしい。恐らくこれは、その中のひとつなのだろう。
あっという間にツノと羽根が消えて、目と髪の色も変わる。
どこから見ても人間になった。ただ、人間になっても綺麗な顔の作りはそのままだ。
「髪と目の色は兄ちゃんとお揃いだよ」
ニッコリと笑顔のシエルに俺は違う部分で疑問を尋ねる。
「なぁ・・・魔族って人間に化けられるのか?もし、そうだとしたら街にも同じように人間に化けてる魔族がいてもおかしくないよな?」
可能だとしたらかなり厄介だ。俺は魔族がどれだけ酷い事をするのか知っている。
ウチにいるこいつらは例外中の例外だ。
「はい、全ての魔族は可能だと思います。ただ、シエル様や私たちとは違い、自分の魔力を抑える事は出来ません。見る者が見たら、“やたらと魔力が高い人間”に見えてしまうことでしょう。」
「なるほどな・・・。」
代わりに答えたフィーの言葉に俺は頷いた。
以前、あちこちの辺境に行っていた頃、確かにそういう奴を見かけた事があった。
知らなかったとはいえ、見逃していたのは痛い。
「街かぁ、楽しみだよ。この世界の街ってボクは初めてだから!」
シエルは行く気満々だ。まぁ、人間になれるのなら問題はないか・・・。
何を着て行こうかな?とか、カバンは必要かな?などとワクワクした表情で言いながら、クローゼットがある寝室にパタパタと走って行くシエルに思わず笑みが溢れる。
「で、お前らはどうするんだ?」
確認の為、振り返ると3人はもう既にちゃっかり人間の姿になっていた。
「私は欲しい本がありまして・・・」
「オレは野菜のタネがあれば欲しいッス!ついて行くッス。」
「食器を選びたいれす!あと人数分のティーカップも!あとあと・・・」
「あー、わかったわかった。みんなで行こう」
ほんと、憎めない奴らだな。
街に厄介そうな魔族がいたら、ついでに退治でもしてみるか。




