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ウナギは寂しいと死んじゃうんですよ!  作者: うな重(松¥1080
2/6

誓い

 ウナギは寂しいと死んでしまうらしい。――本人談


 そもそも彼女はウナギなのだろうか?

 自称ウナギの神様と名乗る彼女と生活をはじめてから一つの季節が終わりを迎えようとしていた。謎の神様に憑かれることに不安を感じていたが、ほとんど家で寝ているだけだった。不安の中に期待もあったようで、俺は一人で意気消沈といったような気分だった。神様なら社畜から救いだす幸運を与えてくれるかも――なんて、思っていたのだろう。


 浅はかな自分にうんざりした。


 そんな中で俺は、ウナガミなる神様を天へ帰す方法を探すことにしたのだった。寝てばかりなのに食事だけはしっかりとるものだから、費用がつらい。お帰り頂くしかない。

 しかし、頼りのインターネットもウナガミなる神の文献は見て取れなかったし、図書館の本にもそんな神様は記録されていなかった。特に関係なさそうだが古事記に同名の男性が存在する。また、海神をウナガミと読むことがあるのだそう・・・。


 最近の研究ではウナギが海にて回遊していることがわかっているが・・・。


 調べているウチにドンドン詳しくなっていってしまう。彼女がウナギか確かめる為にいくつか質問したりもしたが、まるでウナギ博士ですね!と、冷やかされるばかりで進展はなかったのだが、今日帰宅すると事件は起こった。というか起こっていた。


「お帰りなさいませご主人様!私にします?」とウナガミが言うと続けて「それとも、こっちのわ・た・し?」死角からにゅるっともう一人ウナガミが出てきた。


「は?」俺は、眉をひそめた。ウナガミフエテル・・・・・・。


「あれ?どうしたんですか?リアクションが薄いですねぇ」

「そうですねぇ、もう一人増やしてみます?」


 あっけにとられる俺をよそに二人で楽しそうに話している。


 神様は時に突拍子もないことをする。いや、そんなことより尋ねるべきだろう。「なんで増えてるの?」溜息まじりに問いかけた。


 ウナガミは少しだけ申し訳なさそうに

「それが私達にもさっぱりすっぱりで・・・」

「目が覚めて催したかなって思ったら」

「にゅるっと!」

「にゅるっと!」

「増えちゃったんです!」「です!」


 聞きたくなかったし、見たくなかった。


「ご飯一人前しか用意してないから二人で分けて食えよ」と伝えればがっかりするかなと思ったのだが。

 ウナガミ達は指を自慢げに振りながら語りだした。「一人で食べても二人のエネルギーになるのですよ!これが新時代の低燃費神クオリティです!」

 俺は無視しながら、コンビニで温めた弁当を差し出した。

「またこんな食事ですか?身体に悪いですよ」

 俺は嫌そうに答える。「いいんだよ、野菜の栄養もサプリとジュースで取ってるし、これが新時代のニューノーマルヒューマンなの」


 着席すると先に食べ始めていたウナガミ達がこちらに箸を差し出してきた。「あーん」と・・・。なんてベターな展開だろう!乗ってやるべきなんだろうか?なんて、考えている間に「ピンポーン」とインターホンが鳴った。


 ウナガミ達がこちらを見つめてくる。


「いいんだよ、出なくて」と俺は食べ続ける。夜に突然来る訪問者なんてろくなものじゃないに決まってる。


「お兄ちゃんいるでしょ!明かりでバレてんだからね!!」玄関から聴きなれた叫び声が聞こえる。


「はーい。今でまーす。」

 元気にウナガミが出ていこうとするのを俺は全力で阻止しにかかった。


「やめろばか!」


「えー、でも妹さんでしょう?出るべきですよ!はいはいでまーす!」


 ウナガミの勢いで俺はバランスを崩してしまった。瞬間脳裏によぎるラッキースケベ・・・。この展開はまずい!非常に不味い。


「それは駄目だァァアアア!」


 叫んだ!そして、無意識のうちに住み慣れた家の構造を利用していたのか、壁を蹴った!!


「きゃぁ!」


 しかし、疲れからか必死の抵抗も虚しく俺はウナガミを押し倒していた。柔らかい。


「妹さんの前でそんな!私はいいですけど・・・ちょっと恥ずかしいですよ」


 ウナガミが頬を赤らめながら何か言っていると同時に妹が入ってきた。


「お兄ちゃん鍵空いてるよー。いないの――――<絶句>。ヘンタイ」


「ガチャン」


 ・・・最悪だ。俺は戸締りを忘れないと固く誓ったのだった。

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