表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハインソード・サーガ  作者: 威風
第3章 ~王都炎上、決意のハインリヒ編~
97/185

042 チェスとの死闘~ビショップ戦~


 現在、リアネス王国は未曽有の危機に直面していた。


 上空より投下された爆薬に都市部は破壊され、降り立った敵兵により市民の生命が脅かされる。


 対抗するはリアネス騎士団。


 甲冑に身を包んだ騎士達は市街地故に騎乗はせず、己の足を頼りに編隊を組み、侵攻してくる緑の兵隊を迎え撃つ。


 敵の手勢は少数。気球船で運べる兵には限りがある。

 奇襲により崩れかけた王国であったが、動員兵数で言えば、此方が圧倒的に多数であった。



「戦とは――数だ!!」



 気炎を上げる壮年の騎士は、味方を鼓舞する様にそう言った。

 彼の背後には、横一列に編隊を組んだ騎士達の姿がある。


 王城への侵入経路となる一区画。

 此処を死守する事を目的として、彼等はこの場に詰めていた。



「敵は小勢! 恐るるに足らず!! 空に浮かぶあの風船も対空魔術部隊が撃ち落とすだろう。我等の使命は一つ。来るエイムスの敵兵を此処より先に通さぬ事である!! 王国に命を捧げ! 意気を上げよ! 我らが負ければ妻や子や親が死ぬぞ!!」



 壮年の騎士は彼等の隊長なのだろう。


 言葉は事実。

 

 王国市民には現状、王城への避難警告が出されている。

 

 発案はクロード=ディ=リアネス。

 

 燃える都市部に逃げ場は無く、非戦闘員であろうとも見付ければ容赦なく殺害をする敵兵の蛮行を目撃し、彼女は市内よりは堅牢であろう王城の方への避難誘導を騎士団に命じた。


 国王の死は――未だ大多数の国民には伏せられている。


 亡くなった父を偲ぶ暇もなく、重要な選択を迫られる彼女であったが、今は弟妹達が彼女を支えている。


 全ての市民が、避難できた訳ではない。


 都市部に取り残された者達とて多い。否、それが多数であろうという事は誰もが承知の上だった。


 それでも――



「!? 来ました! 敵影確認!!」


「よし、全員突げッ――」



 剣を掲げ、檄を飛ばそうとした隊長の頭が――破裂した。



「――!? 指揮を代わる!! 撃たれる前に斬れ! 斬れぇ!」



 兜ごと頭が爆ぜた隊長。その隣にいた騎士が、逼迫した様子で叫び声を上げ、騎士達を駆けさせる。



「……ゴリ押し? バーカ。死亡決定♪」



 戦場に似付かわしくない、幼い少女の声が響く。

 口笛混じりに弾丸を鉄筒へと詰め込み、片手でソレを構える。


 通常の兵に支給された物よりも、更に長大な砲身。


 筒の中先に支えとなる脚立の様な物が張り出した形状をしたソレは、本来ならば接地して撃つ代物なのだろう。



「――ベルダッヒーニャ(さようなら)



 歌う様に囁き、引き金を引く少女。


 指揮を交代した騎士の鎧を貫き、胴体部を喪失させた彼女の一射を合図とし、緑の兵――【蟻】の一斉掃射が開始される。



「駄目だ貫通する」「遮蔽物に隠れろ」「直線に並ぶとやられる」「退避」「こんな馬鹿な」「何でこんな」「全滅する」



――様々な声が戦場に彩りを見せる中、王国騎士団が完全に沈黙するのに、然程の時間は掛からなかった。



「ラーシャス・ビショップよ。敵勢殲滅完了……えぇ、簡単よキング。連中弱いわ。警戒して損した。こっちの兵器に戦術レベルで対応出来てない。この分ならすぐに城も落とせるかも……ふふ、そうなったらリアネス王の首を取るのは競争ね。……もう死んでるって? なら子供の方にしようかしら?」



 近くに倒れた騎士の亡骸。その頭部の兜を爪先で弄りながら、ラーシャスと名乗った少女は鞄の様な黒い端末を肩に掛け、自身の仲間と会話をする。


 コロコロと笑う彼女のその表情は、幼い身体に見合ったものであった。水色の髪を左右で纏め、肩までに垂らした頭。顔立ちも凡そ十代前半。軍服は帝国指揮官用の黒を纏ってはいたが、下はフリルの付いたスカートへと改造されている。


 何も知らぬ者が見れば、それこそ軍人であるとは思うまい。



「油断? ……しちゃってるかもね。それくらいこの【銃】という物が強力だって事は分かったわ。いつか誰かがマナの時代は終わるなんて言ってたけれど、案外それは今だったり――」



 言い掛けた言葉は、間近に迫った閃光に中断される。

 後方宙返りの要領で高く飛び上がり、閃光を回避するラーシャス。


 反動で肩から外れた端末が光に当てられ蒸発。その後ろで待機させていた【蟻】の兵が軒並み削られたのを目視しながら、彼女は回転する視界の中で下手人の男を睨み付けた。



「おらーッ! エクスカリバー、一丁だぜぇーッ!!」


「うわ……デブで不細工……」


「あぁ!?」



 ラーシャスの前に姿を見せたのは、そばかすに小太りの金髪の青年・アーサー=フィレモントであった。出会い頭に身体的特徴を揶揄した少女に激昂しながら、彼は飛んできた弾丸を自らの手に持つ聖剣で切り払う。



「っぶね!?」


「あ、意外とやるんだ?」



 言いながらも、容赦の無い射撃をアーサーへと繰り出すラーシャス。見た目の割に俊敏な動きでソレを回避する彼に、少女は内心で舌を巻く。



「はぁ……はぁ……ッ! このクソガキ、いきなりパンパン撃ちやがって……こっちは走んのは苦手――でぇっ!?」



 遮蔽物へと身を隠したアーサーだが、その肩を鉛玉が貫く。

 新手――ではない。

 弾丸の跳ね返りを利用した跳弾の一撃である。



 ――痛てぇ……まさか、狙ったのかあのガキ!?



「だとしたら、此処にいたら不味いじゃん!?」



 冷や汗を搔きながら、アーサーは瓦礫より脱出しようとする。が、それを簡単に許す程、敵は甘くは無い。


 前髪を掠める弾丸に、そのままへたり込むアーサー。


 退路は、無い。



「七聖剣、かしら……?」



 その外見の悪さから気付くのが遅れてしまったが、アーサーが登場した時の閃光の一撃を思い出し、ラーシャスは呟く。


 事前に通達のあった、特記戦力の一人。


 もしも己の見込み違いで無いのなら、と。ラーシャスは引き金に掛けた指に力を入れる。



「此処で始末する。この、私が――次のクイーンだッ!!」



 咆哮し。興奮した様に遮蔽物へと隠れるアーサーへと狙いを付けるラーシャス・ビショップ。


 そんな中――無機質な音声が、アーサーの方角から響いた。



≪――聖剣、覚醒――≫



 瓦礫より立ち昇るマナの柱。


 少女がそれに目を奪われた瞬間――



「エクス……ッ!」



 放出された魔力は収束を見せる。瓦礫の向こうのアーサー=フィレモント。彼の元へと、光が溢れ――



「カリバ――――ッ!!!」



 閃光が。


 瓦礫諸共、ラーシャス・ビショップを照らした。







「ビショップ。応答せよ、ビショップ。……駄目か」



 握った端末を置きながら、男は溜息を吐いた。

 

 予期せぬ事態の発生。

 

 上手く行き過ぎると、途端に揺り返しが起こるものだと、彼は頭を振って切り替える。


 王国騎士団の練度は低くはない。

 何方かと言えば、味方側の戦力が強すぎるのだろう。


 要因となったのは、やはりこの新兵器。



「銃、か……己は苦手だな」



 技術部より昨年に開発されたこの武器を、男は気に入っていなかった。幾ら帝国の技術が優れているとはいえ、この様な精巧な武器をどうして大量生産出来るのかと、彼は内心で訝しむ。


 魔力の介在せぬ技術の進化は、マナを扱えぬ帝国臣民であるならば喜ぶべき事柄なのだろう。


 だが――それが自国民以外から齎された技術であるというのならば、話は別である。


 ましてや帝国の場合、持ち寄った者は人間ですらないという。



「闘争とは剣でするものだろう? 人差し指を動かすだけの戦など、それはもはや戦いとは別のもの……簡略化された動作は殺人の意識を知らず知らずに薄めてしまう。そうなれば、晴れて腑抜けた兵士の出来上がりだ」



 強力過ぎる力は、兵に油断を誘う。

 この事態もソレが原因だろうと、男は当たりを付けた。


 黒い甲冑を身に纏う男。

 髑髏を模した兜の奥では、何を見るのか。


 他の帝国兵とは一線を画す風貌をした男は、その獲物も古臭く、鮮血で赤黒く汚れた突撃槍を手にしていた。



「――なぁ、君はどう思う?」



 振り返り。髑髏の男は膝を着いた青年へと問う。


 都市部大通り。配置された多数の【蟻】を相手に、騎士団が壊滅する中、一人で大立ち回りを演じた青年。


 礫によりトレードマークの眼鏡は割れ、教団特有の白い制服は泥と血で汚れてしまっていた。



「くッ……!」



 青年――キルツ=レヴァノフは、身体の痛みを押し殺し、目の前に悠然と立つ男へと声を張り上げる。



「――何だ? 何なんだ貴方は!?」


「スカロォ・キング……【チェス】のトップ。分かり易く言えば、前線指揮官と言った所か」



 冷静に。何処か紳士めいた言葉遣いで返答する髑髏の男。

 

 スカロォ・キングと名乗った男は、戦地でありながら落ち着いた様子でキルツを見詰めた。


 その泰然さが、妙に恐ろしい。



「君は七聖剣だろう? 凄かったな、あの技――剣が分裂し、宙を舞い、次々と此方の兵士をやっつけていった。近接戦を仕掛けながら飛ばしてきたから、少し厄介だったよ」



 まるで世間話をするかの様に、先程の戦いを回想するスカロォ。

 その声には、邪気も殺意もなく。



「残念だよ。――これでまた、優秀な戦士がこの世から消えた」



 ただ、終わってしまった。残念だけど仕方がないと。


 スカロォは自然と口にする。



「――」



 キルツ=レヴァノフは、漸く理解する。

 目の前の男は、戦争を仕事と割り切っているのだと。


 恨み辛みも何もない。


 ただ仕事として――仕方がない事だとして――自身を殺害しようとしているのだと。


 兜の奥底の無機質な感情。


 それは、仮に憎しみをぶつけられるよりも、遥かに残酷な事だったのかも知れない。


 ゆっくりと近付くスカロォの姿に構えながら――キルツは最後の抵抗を開始するのだった。



……(;^ω^)

まぁ、オマージュという事で……(*ノωノ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
アズワルド世界地図↓
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ