表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハインソード・サーガ  作者: 威風
第3章 ~王都炎上、決意のハインリヒ編~
88/185

033 プログラムは進行中


聖女神杯とは――複数の競技からなる、クラス対抗戦である。


そこには学年の境は無い。

より良い成績を残した者が一位となり勝利する。


クラス成績の他には、個人の成績も発表され順位付けされる。

リアネス王族が重視するのは此処だ。


また、一般生もクラス成績が悪くとも、個人成績が良ければその分は外部に評価される。後の仕官にも繋がる部分である為、皆が必死となって競技に取り組むのである。



とはいえ――俺にとっての本番はその先だ。



クラスの連中には悪いが、此処は適当に流させて貰おう……。

そう思って、競技に参加しているのだが――



「弓術一位、ハインリヒ=セイファート!!」


『うおおおおおおおおお――ッ!!!』



「なんでやねん」



自身の天才さが恨めしい。

適当に手を抜いて参加しているのに、つい一位を取ってしまう。



「す、凄いよハイン君ッ!」


「貴様これで一位は何度目だ!? 段々俺は呆れてきたぞ……」



取りたくて取ってる訳じゃないんだけどな。

不甲斐ないこいつらが悪い。


ヨイショするルディンと、目を細めて呆れるクルス。


だが、俺は知ってるぞ?



「お前らだって成績は良いだろうが。クルスは体術二位。ルディンは馬術で二位を取ってるのを知ってるぞ?」


「ああ。そして全部お前に一位を取られたな」


「まさか馬術まで出来るなんてねぇ」


「うっ!」


いかん、どうやらヤブヘビだったらしい。



「まぁいい。実戦競技で共に戦えるのを楽しみにしているぞ」


「実戦競技? ……ああ、そう言えば、そんなのあったな」


「聖女神杯の一番の花なんだけどなぁ……」


「ルディン。こいつにそんな事は通用せん。今の所は貴様のおかげでクラス成績でも一位を独走しているが、実戦競技での成績如何では、それもひっくり返される恐れがある」


「教団組か?」


「ああ。連中、やはり手強い」


「各競技一位はハイン君。二位は殆どが七聖剣。この順位は変わらないけれど、上位以下の争いでは僕らは平均的に負けているからね」


「……アルマナ達はどんな感じだ?」


「王位争いか? さぁな。クロード王子の独走かとも思ったが、ガルシア王子もアルマナ王女も頑張っているぞ」


「結果が出てみないと、正直分からないね……接戦だよ」


「……そうか」


「……まぁ、庶民は庶民の悩みを考えるべきだろう。今はお互い、競技に集中しよう」



纏める様に言ったクルスの言葉に頷きながら、俺達は次の競技の開催場所へと歩き出すのだった。







プログラム通りに進行していく聖女神杯。



12個の競技が終了した段階で、小休止が取られる。

既に昼を周った時刻だ。

此処で生徒も食事を取り、午後の実戦競技へと英気を養う。


会場を後にし、校舎の食堂へと移動する生徒達。必然、いつも以上にごった返しになる食堂だが、学院側もそれを考えてか、給仕の数は平常よりも多い。


まるで祭りの様な喧騒だな。

心中で零しながら、俺は空いた席へと座り込む。



『――あ』



思わず、同時に声を上げてしまう。

卓の隣には、七聖剣のディンハルト=シーザーが座っていた。


一瞬、立ち上がって別の場所へと行こうとも考えたが、それはそれで負けた気もするので、俺は構わずに座り続ける。


ムッとした表情をするディンハルト。


俺が退かぬと見るや、近くの給仕を手招きし、料理の注文をしようとする。どうやら奴も退く気はない様だ。



「チキン定食一つ。サラダの人参はいらねぇよ」


「俺はビーフだ。野菜は増してくれ」



「かしこまりました」と言って、調理場へと向かう給仕。


途端、無言の空気が互いに流れる。



「……ふん、人参抜きねぇ? 案外ガキっぽいんだな、お前?」


「ハッ、栄養面に気を遣ってんのか? 爺臭いぜ、ハインリヒ」


「鳥頭のお前がチキンなんて食ったら共食いだろう? 俺のものと交換してやろうか?」


「テメエ……相変わらず、口の減らねえ奴だなッ!」


「そっくりそのまま返してやるよ。なぁ、口だけ神童さん?」


「あぁッ!?」


「ディン、何を騒いで――ッ、ハインリヒッ!?」



また面倒な奴がやってきた。


キルツ=レヴァノフ。口を半開きにしたまま此方を見詰める眼鏡の男の顔を眺めながら、俺は内心で溜息を吐く。


ディンハルトと合流して、食事でも摂ろうとしていたのだろう。

他の七聖剣と違って、仲の良い事だ。



「何故お前がディンと食事を!?」


「偶々座った席の隣に居ただけだ。こっちは迷惑をしているよ」


「んだとッ!」



額に青筋を浮かべ、今にも俺に飛び掛からんとするディンハルト。流石に場所を弁えているだろうから、行動には移しはしないだろうが、面白い位に挑発に引っ掛かる奴だな?


こう反応が良いと、俺もつい調子に乗ってしまう。

少しばかり、自重しとくか。



「……ハインリヒ=セイファート」


「ん?」



そう思った時だ。

キルツの奴が神妙な様子で俺の名を呼んだ。



「君も出るんだな、実戦競技に」


「あ? まぁ……出ない訳にはいかないだろう。多分」


「……」



クラスの代表五名を選出して行うチーム対抗、トーナメント戦。


・一対一の戦闘で、先に三勝した方が勝利する。

・一度試合に出た者は同じ試合には出れない。

・組み合わせは試合開始後は変更不可。


それが、実戦競技の基本的なルールだ。


説明しといてなんだが、よくあるオーソドックスな格闘トーナメントだと言えば分かり易いだろう。


他と違うのは、武器使用アリ。魔法使用アリ。という点だろうか?

そういう大会も探せば何処かにありそうな気もするけれど。


重要なのは、この競技……勝ち抜き戦ではないという事。


例え俺が勝ったとしても、残りのメンバーが負けてしまったら試合には負けてしまう。


勿論、金章組の連中は優秀だ。ちょっとやそっとの相手なら余裕勝ち出来る実力を持っている。が――問題なのは教団組だろう。


まず間違いなく、代表面子を七聖剣で固めてくる。


そうして、そうなった場合の此方の勝率は……低いだろうな。



「――で? それがどうかしたのか?」



思考し、固まったままの状態のキルツへと俺は問い掛ける。

隣にいるディンハルトの奴も、顔には出さないが興味津々の様だ。



「……実戦競技には、私は大将として参加する」


「!?」


「おい、キルツ!?」



突然の情報の暴露に、慌てふためくディンハルト。


一瞬、ブラフかとも思ったが……コイツのこの迫真の反応から鑑みて、嘘ではないのだろう。


ならば、尚更に解せぬ。


実戦競技における選出メンバー。その順番は戦術面に置いても重要な情報な筈。何故敵である俺にそれを教える?


此方の疑念が伝わったのか、キルツは俺の目を見ながら、はっきりと己の意図を口にする。



「――私と勝負しろ、ハインリヒ=セイファートッ!!」


「……なッ!?」



卓に両手を突いて、叫ぶキルツ。驚きはディンハルトのものだ。



「こんな機会はもう二度と無いかも知れない……どちらがより優秀であるか、白黒付けさせて貰う!」


「……俺がそれを受けるメリットは?」


「此方は正直に私が大将に選ばれるという事を君に話した。それだけで十分だろう?」


「……ふむ」



腕を組みながら、俺は視線を上にやりながら思案する。



「……レイドとの確執が原因か? 一応言っておくが、お前じゃ俺には勝てないぞ?」


「――ッ! ……それを決めるのは、君じゃないさ」


「――待て! 待て待て待てぇッ!!」


「何だよ、うるさいなぁ……」



立ち上がり、横から口を出してきたディンハルトに向かって、俺はうんざりした顔を向けてやる。



「聞いてねぇぞ、キルツ! 俺だってコイツと――ッ!!」


「すまん、ディン……だが、私は本気だ」


「ぐ――ッ!?」



誰に何を言われようが、一切聞く耳を持たぬ。

今のキルツはそんな様子であった。


熱い眼光を向けられたディンハルトは怯み、それで場が収まるのだと、誰もが思った次の瞬間――



「……先鋒だ」


「は?」


「俺は――先鋒だ!!!」


「……」


「――ディンッ!?」



ずり落ちそうになる眼鏡を指で直しながら、叫んだ相棒へと驚きのままに振り返るキルツ。



「悪りぃ、キルツ。今回ばかりは俺も引けねぇッ!!」


「……ッ!」


「ディンハルト=シーザーは先鋒で出る!! だからお前も先鋒で出ろ!! ハインリヒッ!!」


「……」


「いや待て! 大将戦に参加するんだ! ハインリヒ!!」



ギャーギャーと言い合いを続ける二人を眺めながら、俺は中々近付けずにいる、後ろの給仕さんへと視線をやる。


手に持った料理は大分時間が過ぎてしまったのか、出来立ての湯気は消えてしまっている。



「どうでもいいが……とりあえず、飯食わせてくれない?」



溜息を吐きながらの発言。そこから俺が料理を口にするのは、もう数分の時間が必要だった様だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
アズワルド世界地図↓
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ