012 ガフ=コフィンと屋台の味
※前話冒頭修正してます。
※キャラが増えてきたので、備忘録代わりに。
教団七聖剣
・第二位ガフ=コフィン………………目付きの悪い俺様チビ。意外と常識人。
・第三位アーサー=フィレモント……性欲の強い三枚目。汚すぎる騎士。
・第六位マチュア=キュベレイ………分からせたいメスガキ。
学院金章組
・ルディン=シュトラウス……茶色いツンツン髪。主人公タイプな人柄の良い少年。
・カルナ=サヴァン……………紫髪の無口な少女。女に好かれるタイプな暗殺者。
「折角のチャンスだったのに~……ねぇ、何やってるの貴女?」
夕暮れ時の人気の無い校舎裏にて、桃色の髪をした少女が、紫髪の無口な少女へと問い掛ける。
片や教団七聖剣・第六位【深淵】のマチュア=キュベレイ。
片や王国金章組のカルナ=サヴァン。
悠然と佇むマチュアに比べ、カルナはその制服に土埃を纏わせながら、壁を背に息を荒くしている。
そんな彼女の様子を眺めながら、マチュアはサディスティックな笑みを浮かべ――
「ぐぁッ!!」
――カルナの鳩尾に、膝蹴りを入れた。
倒れ伏したカルナの顔面を、容赦なく足で踏み付けるマチュア。
「……ッ……ッ!」
「もごもご言ってて聞こえなーい♪」
ぐりぐりと靴底を擦り付けながら、マチュアは嗤う。
「ねぇねぇ? 何で貴女みたいな出来損ないが学院に入れてるか知ってるぅ~? マチュア達にぃ、馬車馬の様に扱き使われる為なんだよぉ? だからぁ、役に立たないゴミはいらないの。そこの所、もっと良く考えなきゃ駄目じゃな~い♪」
「……ッ!!」
「あは♪ ねぇ怒った? 現実を指摘されて怒っちゃった? だからさぁ、そんな感情――いらないんだってばッ!!」
叫びながら、マチュアはカルナの身体を強く踏みつける。
己の嗜虐心を満たす為の行動。
その行動は一定以上の効果があったようで……。
「……ぺッ」
吐き捨てた唾を物言わず倒れた少女に飛ばした頃には、すっかりと冷静さを取り戻していた。
「おっかねぇ奴……」
「あら、アーサー君? 覗き見なんて良い趣味してるわね♪」
背後に掛けられた声に、驚く事無くマチュアは振り返る。
そこにいたのは、金色の髪を真ん中で分けた歯並びの悪い少年である。頬に浮いたそばかすを指で弄りながら、倒れた少女へと近付き、スカートの裾を指で捲る。
「へぇ? 暗殺者でも色は白なんだな?」
「……やってく?」
口元を歪めながら、呟くマチュア。
その言葉に、アーサーと呼ばれた少年は暫し悩み、
「――いや、やめとく。お前に俺のケツを晒したくねぇ」
そう言って、きっぱりと断った。
「マチュアなら気にしないのに……」
「うるせぇ、俺が気にすんだよ!」
教団七聖剣・第三位【盲信】のアーサー=フィレモントは、そう言ってマチュアへと向き直る。
「で、失敗した訳だけど、次の手は考えてあんのかよ?」
「さぁ? マチュア知ーらない♪」
「……面倒臭せぇな。俺が行ってぶっ殺してやろうか? そのハインリヒって奴」
「お。過激~♪」
「俺はなぁ! ああいう女にキャーキャー言われてる奴が嫌いなんだよ! 大した力も無ぇ癖に調子に乗りやがって……はぁ~マジムカついてきたわ! 殺して~!!」
両手で頭を高速で掻きながら、アーサー=フィレモントは目を見開いて舌を出す。
「マチュアねぇ、そういうアーサー君のゲスい小者なところぉ、だーい好き♪」
「……褒められてる感じがしねぇ」
「褒めてないもの♪」
悪びれもせず言うマチュアに、げんなりな表情をするアーサー。
「脳筋は一人で十分。向こうに動かしやすそうな王子様がいるじゃない? 取り合えずはそっちに当たってみるわ♪」
くすくす、と笑いながら、ちょっとした悪戯を思い付いた様に言うマチュア。
相変わらず怖い女だと、アーサーは内心で思うのだった。
◆
「はぁ……」
肩を落とし、視線を落として下校する少年――ルディン=シュトラウスは、見るからに不景気そうな顔で溜息を吐いていた。
ピンとした茶色いツンツン頭は萎れ、何処となく元気が無い。
「――わッ!?」
「どぉッ!?」
上の空で歩いていた所為か、ルディンは目の前の男子生徒に気が付かなかった。吹っ飛んだ生徒へと慌てて近寄り――
「――痛ってぇ! 何処見とんじゃアホッ!!」
「す、すいません……ッ」
――滅茶苦茶、怒られてしまう。
黒い髪に鋭い目付き。灰色のスカーフを首に巻いた背丈の小さな少年は、謝るルディンへと噛み付く様に悪態を吐く。
「謝ってすんだら警邏はいらんぞ! 誠意を出せ! 誠意を!」
「せ、誠意と言われても……」
困り果てたルディンは、思わずその場で考え込む。
その時、目の前の少年から『ぐー』っと言った腹の虫が鳴り響いた。
『……』
思わず、無言で互いを見詰めてしまう。
……とにかく、行くべき場所は決まった様だ。
◆
「にゃはははは!! 美味い美味い!!」
「そ、そうかい? 気に入ってくれたなら良かったよ……」
王都の自然公園までやってきた二人は、ベンチに座りながら屋台で買ってきた包み焼きを食べていた。
勿論、費用は全てルディンの奢りだ。
両手に抱えた大量の屋台飯を見るに、少年の容赦の無さが窺える。
――出費はかさんだけど、喜んでくれたなら良かったかな?
お人好しなルディンは、内心でそんな事を考えていた。
それが、少年にも伝わったのだろう。
「……お前、良い奴じゃな?」
「え? そ、そう?」
「俺様はガフ=コフィン! お前は何て言う?」
「ルディン。ルディン=シュトラウスだよ」
「俺様のクラスは性根の曲がった奴ばっかだからなぁ。お前みたいなお人好しが見れて、少し気分が良いぞ!」
「……君のクラスって?」
「教団組だ」
「!」
ガフと名乗った少年は、腰に下げた剣を取り出し、ルディンの前へと持ってくる。
剣というよりも、それは棒の様であった。
鍔は無く、刀身と柄が同じ太さで繋がっている黒い棒と言った方が分かり易いだろう。内包したマナの濃さにより、刃の部分は判別出来るが、酷く使い難い得物だろうというのが、ルディンの正直な感想であった。
「これは……?」
「七聖剣・第二位【蒼輝】別名――エグリゴリだ。俺様の愛剣じゃ」
「……教団、七聖剣!?」
驚くルディンの声に反応し、エグリゴリが明滅する。
これは――マナの共鳴?
訝しむルディンとは別に、己が聖剣の様子に、ガフ=コフィンは八重歯を向き出しにして頬を歪ませた。
「……ハハッ! ルディン、お前聖剣に気に入られたぞ! そうか、コイツもお前の事を気に入ったか!? そうかそうか!」
「えっと……ガフ?」
話に付いていけないルディンは、ガフへと説明を求める。
「――聖剣は意思を持っている。剣の所有者は聖剣が選ぶんじゃ。……生意気だろお? 無機物が俺様達を値踏みしてやがるんだぜ? 聖剣に選ばれなかった奴は、その剣を扱ったとしても真の実力を発揮出来ん。だから教会は所有者を――」
「……ガフ?」
それまで饒舌であったガフの言葉が、そこから先は行き詰まる。
何か、言い難い事なのだろうか。
首を振り「いや」と言いながら、ガフは気を取り直した。
「とにかく――お前もこの剣に選ばれたって事じゃ!」
ポンと、肩を叩きながら、ガフはルディンに笑い掛ける。
突然そんな事を言われても……というのが、ルディンにとっては本音だろう。
「勿論、だからってコイツをやりはしねーけどな!」
「そ、それは勿論……」
貰っても困ると、ルディンは内心で呟く。
「俺様達、相性が良いのかもなぁ!」
屈託のない笑みを見せながら、ルディンへとそう語るガフ。
その姿を見て、ルディンは思わず笑ってしまう。
「ところで――お前さっきは何であんなに元気なかったんじゃ?」
「うぐ……」
気は紛れたが、失恋の痛みは未だ重い。
新たに出来た陽気な友人へと、ルディンは公園のベンチで日が暮れるまで語り合うのだった。




