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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第3章 ~王都炎上、決意のハインリヒ編~
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011 保健室のファーストキス~少女は昨日より強くなる~

誤字脱字報告ありがとうございました! 助かります(*'ω'*)!!

感謝のジェットストリーム土下座(*ノωノ)!!




『――貴女は男になるのよ』


ステンドグラスから陽の光が差し込む、教会の礼拝堂。

僕の目の前で跪く母は、有無を言わせぬ様な声色で、そう言った。


『もしも女だと知られてしまえば、貴女はシャルルに捨てられる』


シャツの前を開け、肌を露出した格好の僕。

その胸に、母の爪が食い込んだ。


『こんなもの……ッ』


それは、怨嗟の籠った呟きだった。


母の言葉を他人事の様に聞きながら、僕は顔を上げる。


プライスマー教皇が何とかしてくれる。

だから、何も気にしなくて良い。


貴方はずっと男でいれば良いの。

他の兄妹は勿論、誰にも女だと知られてはいけない。



貴女だって――愛されたいでしょう?



『……うん』



頷く私。

そうだよ、私は愛されたい。


お父さんに愛されたい。お母さんにだって愛されたい。


アナタがそれを望むのなら――私は私を殺そう。


試練の女神ククゥリエ。

教会に鎮座する、その女神像に私は問う。



――これで、良いんですよね? と。



弟であるガルシアが羨ましかった。

己を偽る事をせずに、周囲に認められている様が、憎い。


妹であるアルマナが怖かった。

予見の王女。全てを見通す様なあの目が、私を見るのが恐ろしい。



仮初の王子。

偽りの仮面。


ああ、僕は……私は……何処まで行き、一体、何処まで――ッ







「――ッ」


「……起きたか、クロード」


「……ハイン、リヒ?」


ぼやけた頭で、声のした方へと視線を向ける。

白銀の髪の少年。ハインリヒ=セイファートがそこにはいた。


一体、何が……? 思ってようやく、自分がベッドへと寝かされている事に気が付く。


ゆっくりと上体を起こし、顔に手をやる。


えっと……何があったんだっけ?


ハインリヒ……私と一緒にピアノを弾いた少年。私の事をちゃんと見てくれている……? アルマナの味方。私の、敵……。


上手く働かない頭で、状況を整理していく。


……そうだ。授業で走らされて、アルマナに酷い事を言われて、倒れて。私は、わたし、は……。


「――ッ!」


思い出した!

完全に思い出した!!


「ハインリヒ! お前、僕のこと……ッ!!」

「……ようやく、頭がはっきりしたか」

「――ッ!!」


ハインリヒのその言葉に、私は顔面を蒼白させる。


知られた。

女だと知られてしまった。


決して――決して誰にも知られてはいけなかったのに……ッ!


「終わり、だな……」

「あ?」

「性別を偽っていたのがバレたんだ。――私はもう、終わりだ」

「……」


「父に……母に愛される為に、私は自身を男だと偽っていた! 18年生きてきて、ずっとだ!」


それが今、終わる。


「……肩の荷が下りたよ……」


自分でも情けなく思う程に、震えた声でそう呟く。

もう、体裁も何も取り繕えない。


「クロード……」


「アルマナの言ってた通りだ。私が王になれば、この国は滅ぶ。それが未然に防げただけ、良かったのかも知れないな……」


「……おい、何を捨て鉢に……ッ」


言いながら、ハインリヒは私の腕を掴もうとする。


「――やめろ! 触るな!!」


優しくして欲しくない。

アルマナの味方のハインリヒには、特に。


だが、そんな私の気持ちを知らずに、ハインリヒは私の肩に手をやった。触れ合った場所から、じんわりと彼の体温を感じる。


「女であろうと、男であろうと――お前はお前だろう?」


「――ッ!」


「震えが止まらないなら、俺がこうして止めてやる。だから……えーっと……あまり深刻に捉えるな! 何かこっち、すげぇ悪い事した気分になるしな! それに俺、意外と口は堅い方なんだぞ? そこまで心配するこっちゃねぇって!」


胸板を叩きながら、ハインリヒはそう言って私に笑い掛ける。



こいつは、本当に――



「――軽いな、馬鹿」

「お、おう……」


身体をそのまま前に倒し、私はハインリヒの胸に顔を埋めた。


能天気。馬鹿。自己中。ノリが軽い。王子に不敬。傲岸不遜。八方美人。女たらし。空気を読まない。――本当に、馬鹿。


思い付く限りの悪口を頭に思い浮かべながら、それでも震えが止まってしまう自分に嫌気が差す。


そっか……。

そういう事か……。


私は、誰かに私を認めて貰いたかったんだな……。



「……私の事を告げ口すれば、アルマナの王位は確定だぞ?」


耳元で、ハインリヒへとそう呟く。

ガルシアでは、アルマナは止められないだろう。

器が違い過ぎる。


「それって、意味があるのか?」

「……意味?」

「ちゃんと競い合った上で決めなきゃ、ズルいだろ?」

「……」


やはり、ハインリヒは何処かズレている。

私はそれを好ましいと感じているが――アルマナはどうかな?


「だからさ、お前もすぐに諦めるなよ」

「……」

「まだ勝負は終わってねぇって」


諦めるな、か。

――そうだな。確かに、私は諦めたくない。


王位を。そして――お前を。


自然と――自分でも驚く程に自然と――




私は――ハインリヒに口付けをした。




「――え?」

「……」


目を見開き、呆然とする銀髪の少年。

その顔が愛おしくて、私は思わず小さく笑ってしまう。


「王族の唇を奪うだなんて、お前は不敬な男だよ……」

「いや、奪うって……え?」


己の顔が火照っていくのを感じる。



「これは――二人だけの秘密だぞ?」



微笑む私に、ハインリヒは困った様な顔をしながら、小さく頷いた。


あぁそうさ。妹にだって負けはしない。



私にだって、譲れないものが出来たのだから。



日間ランキングも意外に上がっててびっくり。

評価&ブクマくれた方は本当にありがとうございます( ;∀;)

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