表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハインソード・サーガ  作者: 威風
第3章 ~王都炎上、決意のハインリヒ編~
65/185

010 またこの展開かよ

今週分です。


「はぁ、はぁ、はぁ……ッ!!」


息を切らしながら、走り続けるクロード。


王立学院に入学してまで、何故この様な原始的な授業を受けなければいけないのか、彼は思い付いた教師に脳内で罵詈雑言を浴びせながら、目の前を走る妹に視線をやった。


「随分と頑張りますね、クロード兄様」


アルマナ=ディ=リアネス。


青く長い髪をリボンで結び、体操着姿で走るその姿は、傍目には王女に見えぬであろう。


「運動はお得意ではないと聞いていましたが?」

「……フッ、年下の妹に負ける程ではない!」


言い返すクロードだが、それはどうみても虚勢であった。元々白い肌は青白く。額には大量の汗を流し、乱れた呼吸を整える事すら出来なくなっている。


「取り巻きに邪魔されず、こうして話せる機会というのも中々無いでしょう? 良い機会だから言っておきます」


「……」


「――貴方が王では、国が滅びます。国民の事を思うのなら、王位継承を辞退するべきです」


「……な、に……ッ?」


アルマナから放たれる率直な辞退勧告に、クロードは遅れながら怒りの表情を浮かべた。


「それも、予見の力だとほざくのか?」


「……ええ」


当然の様に頷くアルマナに、クロードはその場で笑った。

笑う。笑う。笑うしか――ない。



「――盗人猛々しいとは、この事か」

「……」

「子は親に似るものだな? あの妾の母親によく似ている……」

「……」

「どうした? 不機嫌そうだな? ――怒ったか?」

「いいえ、特には」

「そうか――僕は、怒っているぞ」



言ってクロードは、その表情を変えた。

浮かべていた笑みは静まり、アルマナを射殺さんとばかりに睨む。


「正室である母は、父である王に愛されていなかった。政略結婚だからな? それも仕方が無いだろう。妾であるフルセアを愛するのも構わない。だが――それを王位継承にまで持ち込むのは違うだろう?」


「兄様は、シャルル王が私的な理由で継承者を選んでいると?」


じっと。クロードの目を見詰めながら、アルマナは問い返す。


「……ッ」


内心では「当然だ!」と、叫びたいクロードであったが、アルマナの瞳に射抜かれると、途端にその言葉も出て来なくなる。


――苦手だ。

――昔からずっと、この妹だけは苦手だった。

――僕自身の事を、ずっと見透かされている様で……。


――あの、星の様な蒼い瞳が――怖かった。



「あー……何だ、こっちでもお邪魔虫か……」


「! ハインリヒ……」


走る二人に追い付いてきたのは、白銀の髪のハインリヒ。

彼は王女と王子の姿を見るに、げんなりとした表情を浮かべる。


「丁度良いわ。ペースを上げるわよ、ハイン」

「ん? もうやり取りは良いのか?」

「ええ、必要な事はもう話したから」

「ふーん……」


言って、アルマナは走る速度を上げていく。


「ぐ……ッ、ま、待てッ……! ――ッ!?」


慌てて追い掛けようとするクロードだが、そこで突然、足を抑え、その場に倒れ込んでしまう。


「おい!」


思わず、クロードに声を掛けるハインリヒ。

そんな二人の様子を見ながらも、アルマナは冷静だ。


「無理をするからよ……放っておきなさい、ハイン」

「いやいや。放っておくって、お前……」


流石にソレはないだろうと。

ハインリヒはアルマナに向かって首を振る。


「どうせ取り巻き達が何とかするでしょう? 優しくする理由なんてないわ。私達、敵同士なのよ?」


「……お前」


「……フッ、アルマナの言う通りだな。お前達に助けられるなんて、死んでも御免だよ。……分かったのなら先に行け。束の間の勝利に気を良くしていればいいさ」


「……」


言われたハインリヒは、しかし――躊躇すら見せずにクロードの傍に寄り、その身体を腕に抱えた。


「うぐッ!」

「……ちょっとは我慢しとけ」


持ち上げた時の痛みで顔を顰めるクロード。

本当は腕の中でも暴れたい気分なのだろうが、痛みにより、大人しくしているしかない。


「ハイン……ッ」

「らしくないぞ、アルマナ……今のお前には焦りが見える」

「――ッ!」

「此処はもう良い。お前は先に行け」

「そう……ッ! 随分と仲良くなったのね、貴方達!?」

「……」

「その調子で弱みでも握ってくれたら良いのにッ!」

「アルマナ……」

「気安く呼ばないでッ!!」


ヒステリックに叫ぶアルマナは、そのまま走り去ってしまう。


「……はぁ」


――案の定、面倒臭い展開になってきたな。

思いながら、ハインリヒはその場で重い溜息を零した。







「よっと、保健室は……此処だな?」


クロードの奴を俗に言うお姫様抱っこしながら、俺は保健室へと入っていく。


「……ッ!」

「まだ痛むのかー?」


言いながら、俺はクロードの抑える足へと視線をやる。


「筋肉が波打ってるな。という事は、切れた訳ではないのか。いっその事、肉離れなら回復魔術で一発だったんだがな? こいつはそうもいかない。ま、暫くしたら痛みも治まるだろう」


「……他人事のようにッ」

「そりゃ、他人事だし」


保健室の中は誰もいない様だ。

なら、ありがたく空いたベッドを使わせて貰おう。


「てか、お前結構汚いな?」

「な、何だとッ!?」

「汗と泥で汚ねーよ。このままじゃ流石に不味いだろう」

「……おい、何をする気だ?」

「何をって……」


俺は一旦その場にクロードを下ろすと、奴の来ている汚れた体操着へと手を掛ける。


「脱がす」

「――おいィッ!?」


何だか突然愉快な声を叫びだすクロード。


「てか、男同士なんだから恥ずかしがるなよ。ホモかお前?」

「――お、お前がソレを言うかッ!?」

「む。……その言い様は何か引っ掛かるが――まぁ良い」


問答無用だ。


「や、やめ――ッ」

「てい!」


嫌がるクロードを無理やり脱がすハインリヒ。

何か語弊がある説明だが、事実だから仕方がない。


問題は、そう――


「くう……ッ!」

「……」


クロードの胸に、白いサラシが巻いてあったという事。

泣きそうな顔で此方を見詰め、必死に己の胸元を抑える王子。


……王子?


何か、以前にも似た様な事があった気がするが――敢えて言わせて貰おう。




「……お前、女だったのか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
アズワルド世界地図↓
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ