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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第3章 ~王都炎上、決意のハインリヒ編~
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006 教団七聖剣の噂


「あまり調子に乗るなよ、ハインリヒ」

「……」


ガルシアとの組手を終え、一週間。


教室を出た廊下で、クルス=オーグメントに声を掛けられた俺は、思わず溜息を吐く。


「お前、どんだけ暇なんだよ……」

「暇ではない! ただ、釘を刺しておこうと思っただけだ!!」


それが暇だって事なんだろうが……。

思った俺だが、面倒臭いので口にはしなかった。


「いいかハインリヒ!この学院にはお前より強い奴は一杯いる!」

「……ほう?」


眉唾だが、一応聞いといておこうか。


「まずは俺だ!」

「……」


真面目に聞こうとした俺が、馬鹿だったな。


「何を呆れている? まだ続きがあるんだから、ちゃんと聞け!」


だったら聞く気を無くさせるなっつーの。


「次に教団組だ。アイツらには関わらない方が身の為だ」

「教団組?」


聞いた事の無い言葉に、俺は首を傾げる。


「リアネス王国と四女神教は密接な関係にある事は知っているよな? 教団組というのは四女神教団から推薦されてきた生徒達の事を言う。普段は別校舎の教室だから、知らなかっただろう?」


「まぁ……」


説明も無かったしな。そりゃ分からんわ。


「俺達は王国組のトップクラスだが……教団組のトップクラスは正直得体が知れない。中でも【七聖剣】と呼ばれる奴等はその実力も飛びぬけているという話だ」


「七聖剣……ねぇ?」

「出る杭は打たれるという言葉もある。お前も大人しく――」



「廊下の真ん中で、一体の何の話をしているのかなぁ?」



背後から声を掛けてきたのは、白衣を着た少女であった。


白い肌に白い髪。痩せ型の体躯は何かの拍子で折れてしまいそうな程に脆く、儚い印象を受ける。絶世と言っても過言ではない、美しい顔付きが更にソレを際立たせるのだろう。


恰好から言って、生徒ではなく教師なのだろう。

だが、その歳は俺達とそう変わらない様に見える。


この学院……教師も飛び級出来るのか?


そんな事を考えながら、俺は何故か茹でダコになった隣の男へと視線をやる。


「ろ、ロア=ハーレス……」

「また君か、クルス君」


軽く息を吐きながら、ロアと呼ばれた少女はクルスへと近寄る。

その距離――顔が触れ合いそうになる程、近い。


「先生って、ちゃんと言わないと駄目だろう……?」

「――ッ!!」


囁く様な声は、俺にも聞こえた。

胸元を人差し指で押し、クルスから離れるロア。


「……おや? 君はもしかして、ハインリヒ君?」

「……そうだが、貴女は?」


「噂は聞いているよ。随分と無茶をやっているみたいだね? 僕はロア=ハーレス。此処の技術教員をやっている者さ」


「……どうも」


差し出された手を握りながら、俺は軽く返事をする。


「二人目の神童に会えた事、嬉しく思うよ。これからも頑張って」


言って、ロア=ハーレスはその場から去っていく。

その背中を見ながら、俺は握った手を動かし、言葉を反芻する。



「二人目の、神童……?」



どういう意味だ、それ?

何か知っているかと、クルスの方へと視線を向ける。


「ぐぐうう……ッ」


すると奴は、胸元を抑えながら、何か苦悶の声を上げていた。


「……」


なんつーか、分かりやすい奴……。


「おいクルス! おい!!」


正気に戻れと、俺はクルスの奴の頬をぺちぺちと叩いてやる。


「はッ!? ――な、何だハインリヒ!」

「お前……あの女教員に惚れているのか?」

「ば、ばばば!!」

「……」


問うと、突然壊れだすクルツ。

話が進まないから、もう聞くのは辞めよう……。


「さっき、二人目の神童と呼ばれたが……どういう事だ? 俺以外にも神童と呼ばれる奴がいるという事か?」


俺の問いに、クルスはこくりと頷いた。


「さっき言った七聖剣。確か、ディンハルト=シーザーという男が、そう呼ばれているな」


「ディンハルト……」


「それが、どうかしたのか?」


……いやいや。

……どうもこうも無いだろう。


他の異名ならまだしも、よりによって【神童】被り。

しかも二番手扱いをされたとなっちゃあ、黙っていられる筈もない。


ディンハルト=シーザーとか言ったな?

どんな奴かは知らんが、運が無かったな?



「――よし! 潰そう!!」



高らかに宣言しながら、歩き出そうとする俺の足を、クルスの奴が抑えやがる。


「ば、馬鹿かお前!? 何処行く気だ!?」

「ディンハルトとかいうアホを、潰しに行くって言ってんだよ!」

「ちょ――」


体重を掛けようが、何をしようが、俺の歩みは止まらない!


「やっべぇ……おい! 誰か来てくれ! ハインリヒを抑えろ!!」


焦ったクルスの声に、続々と集まる生徒達。数十人に圧し掛かられた俺は、その日の教団組訪問を諦めるのだった。


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