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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第3章 ~王都炎上、決意のハインリヒ編~
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004 誰がぼっちよ


昼の授業が終わり、休み時間が訪れると、アルマナは教科書を閉じて教室内の一角へと視線をやる。


――呆れた。


そこには、多数の生徒達に囲まれるハインリヒの姿があった。


王立学院の生徒というのは、何処か閉鎖的である。


実力主義の校風に、庶民と貴族が混ぜられた教室。


己に価値無しと判断されれば、即退学もありえるシビアな学院であるのだから、それは当然と言えるだろう。


だと言うのに――この光景は一体何なのかしら?


ハインリヒ=セイファートが学院へとやってきて、一ヶ月。


まだ、一ヶ月しか経っていないと言うのに……。


既に私よりも、結果を出しているじゃない。


サポート役の優秀さを喜べば良いのか、それとも自身の非力さを嘆けば良いのかしら?


そうこうしていると、彼は私へと近付いてきて――


「よ、アルマナ。飯でも食いに行こうか?」


――そう、爽やかに言ってくる。


実に、爽やかにだ。


「……」


何でしょうね、この違和感……?


……彼、元からこんな性格だったかしら?


大して接してきた訳じゃないので、断言は出来ないけれど――多分違かったと思うわ。ええ。


環境が彼を変えた……?


――え? こんな短期間で?


脳内で必死に頭を捻る私を尻目に、彼は遠慮する生徒達にも空気を読まずに声を掛けていた。


「無理強いは感心しないわよ?」


何も知らない彼に向って、私はそう言ってやる。


仮にも彼等は貴族なのだ。


王候補である兄達の前で、この私と仲良くなんかしたら将来にだって差し支えてしまう。


そんな私と食事? 嫌がるのも無理は無いわ。



「えい」



ポコンと。軽く私の頭に手刀を落とすハインリヒ。


『うわ――ッ!?』


それを見た周囲の生徒は、一同に引く。

やられた私でさえ驚愕しているのだから、そうでしょうとも。


曲がりなりにも王女である私の頭を、平民が叩く?


どんな神経をしているのかしら、この子!?



「ふん――そんなんだから、ぼっちなんだよ」

「――ッ!」


瞬間的に、一気に血の気が昇る。


「貴方ねぇ――ッ!?」

「――ああ、悪い。言い過ぎた」

「ぐッ!?」


怒りの声を上げる瞬間、手の平で待ったを掛けながら、ハインは私の出鼻を挫く。


――ぐ! 機先を制するのが上手い……ッ!?



「――だが言わせて貰うとな、お前のその態度が周囲との壁を作っているんじゃないのか? 無理強い? お前に彼等の何が分かる?」


言って、ハインは尻込みする男子の一人へと声を掛ける。


「なぁピエール。お前だってアルマナと飯食いたいよな?」


「え、そりゃぁ、まぁ……」


「ピエールだけじゃない。ルディンやユーリア……他の連中だって、気持ちは一緒だ。下手な遠慮は彼等を下げる事になるぞ? お前だってそれは、本意じゃないだろう?」


「それは……」


言い澱む私に、突然何を思ったのか、貴族科の少女――ユーリア=マイスティアが私の腕を取る。


「行こう! アルマナちゃん! ハイン君の言う通りだよ!」

「ゆ、ユーリア、さん……?」


唐突なちゃん付けに面喰いながら、私は興奮する少女に口元を引き攣らせた。


縋り付くユーリアの影に隠れながら、ハインリヒが薄く笑ったのを私は見逃さない。


――何か、仕組んだわね……ッ! 余計な事をッ!


「……そうだね。折角同じ教室になれたんだから、俺もアルマナさんとは仲良くしたいなぁ」


「貴方まで……」


驚く私に、照れた様に笑うルディン君。


一般科の少年、ルディン=シュトラウス。

貴族科の少女、ユーリア=マイスティア。


この二人の共通点は、何方も度が付くほどのお人好しという点でしょうね。生徒達が競い合う王立学院。そのトップクラスにありながら、こういった感性を持つ彼等は、教室内でも人気がある。


それを――ハインリヒは利用したのでしょう。


「俺も!」「私も!」――と、徐々に増えていく立候補者。


オロオロとする私を見物しながら、


「よし、じゃあ皆で行こうぜ! 今日はアルマナの交流会だ!食って食って食い捲ろう!! 飯代はアルマナが奢ってくれるぞ!」


――随分と勝手な事を、宣言するハイン。


私の思惑は別として、盛り上がりを見せる周囲。


これは何というか、アレね――



「――後で覚えておきなさい、ハインリヒ=セイファート」




経過日数31日。


ハインリヒ――人心掌握率60%

アルマナ――人心掌握率15%


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