004 プレア・ターン~邪神胎動~
「随分と、楽しそうにしているなぁ……」
ハインリヒの宣言を聞きながら、建物の外へとやってきたプレア=トリィは、一人呟く。
分かっているのかなぁ、彼。
これから、もっともっと大変な事になるという事を……。
「……キッチェちゃんかぁ」
窓から窺う、少女の楽しそうな笑みを見ながら、プレア=トリィはくすりと笑う。
「面白い子もいたもんだ。――君は、僕の福音になれるだろうか?」
言いながら、プレアは視線を窓から外す。
――漸く、接触して来たか。
「――マーケスタ。ハインリヒの様子はどうかしら?」
「ペンティアム……今この場では、僕はプレアと名乗っている。古い名は使わないでくれると助かるな?」
「あらそう? 貴方――変な所を拘るのね? ま、良いわ」
女は――否、女の声を出すノイズの様な影は、そう言ってプレアのすぐ隣へと明滅し、移動する。
「……随分と楽しそうね、嫉妬しちゃう……」
「アレがトゥールスレイを討ったというのですから、驚きですよ」
「どう? どちらに付きそう?」
「まだ何とも……それに、その答えに意味は無いのでしょう?」
「ふふ……」
プレアの言葉に、ペンティアムと呼ばれたノイズは笑う。
「アルバルヴァが、彼に興味を持っている……可哀想に」
「暴虐の彼が……ですか?」
「邪神殺しを殺せるなんて、初めての事だもの」
「当然でしょう?」と、ノイズは笑う。
「貴方が此処にいる意味、無いんじゃないかしら?」
「さぁ? 少なくとも、ソレを決めるのは貴女じゃない」
「相変わらず、読めない男……」
言いながら、ノイズの気配は徐々に希薄になっていく。
「次は何方へ?」
「魔族領も良いかも知れないわね? あそこには、面白そうな玩具が一杯あるし……」
「玩具ですか……貴女に遊ばれる玩具に、同情の念を抱きますよ」
「私なんて優しい方よ。狂奔や狡知に比べれば――」
「人間の言葉ではソレを、ドングリの背比べと言うらしいですよ?」
ノイズは「嫌な男」と小さく呟きながら、その場から消えていく。
取り残されたプレア=トリィは、ズレた眼鏡の位置を直しながら、騒ぐハインリヒへと視線をやる。
――随分と調子に乗っている様だけれど、分かっているのかな?
――ハインリヒ=セイファート。
――傭兵団?……今の状況でソレは、とんでもない悪手だ。
――己の強化に、時間をつぎ込んで入れば良かったのに。
――放浪する様な旅を続けていれば、まだ良かったのに。
――もう少し、ひっそりと生きていれば良かったのに……。
――断言しよう。君は負ける。無残に殺される。
――敵は、暴虐の邪神アルバルヴァ。
――その身の危機に、良い加減、気が付け。
「最強の邪神が――君を狙っているぞ」
次回から三章に入ります。
序盤は軽いノリで行くので安心してね!




