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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第2章 ~傭兵団結成!城塞都市の攻防編~
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020 燃えるポンペイ~襲来する黒狼~


何でこんな事になったのだろう……?


スネップ=アノンドロワは、目の間に広がる光景を見詰めながら、そんな取り留めのない事を考えていた。



「……街が、燃えている……」



自身の部屋の窓から、階下に広がる街の光景。

見慣れた筈のポンペイの様子は、赤い絵の具を塗りたくったかのような火の粉が上がり、多くの人の悲鳴や怒号が上がっていた。



「こんなの知らないよ……」



未だかつて見た事のない故郷の様子に、スネップは恐れ戦く。

傍らに立つ亜人の奴隷が彼を不安そうに眺めているが、それに気付かず、彼はその場で頭を抱えた。


繁華街の方で爆発があったのだ。

都市を防備する自警団は皆、そちらへと向かった。


情報は……未だ無い。


館の防備には50の兵を割かせているが――それも頼りない。


スネップ=アノンドロワは不安で仕方がなかったのだ。

父は何故、この後に及んで地下へと隠れるのか。

何故、自分の近くにいてくれないのか。


こんな時に何故――自分を置いて逃げた母の事を思い出すのか。



彼には――理解が出来なかった。


「……ッ」

「スネップ……怖い……の?」


震える腕を、奴隷の少女が手で抑える。


「ベリー……」


そこでようやく、スネップは我に返る。

ベリー。

本当の名前は知らない。聞こうともしてない。

苺が好きだから。

そういうあだ名を付けた少女は、そんなぞんざいな扱いを受けながら、目の前のスネップの事を心配していた。


――何故だろうか……? コイツの考えは僕には分からない。


ただ――この立ち位置は良くないと、彼は思った。

奴隷に心配される貴族がいるもんか。

そんな見栄を張る為、彼は何でもないように少女の手を振り払う。



「あ……」



驚き、声を落とす少女。

少しばかり罪悪感を感じるが……貴族である青年は、無理やりその感情を押し込め、気にしない事にした。



そうした次の瞬間――部屋の真下から、爆発音が響いた。



「――なぁッ!?」



驚き、声を上げるスネップ。

音は玄関から聞こえてきた様だ。



「一体何が……ッ!?」



恐る恐ると言った体で自室から出て、玄関へと向かうスネップ。


階下へと降りた彼が最初に見た光景は――黒い炎であった。



「――」


「お、やっと見付けたぜ。お坊ちゃん」


そこには――ガラの悪そうな黒髪の青年が立っていた。

青いサングラス越しに、ギラついた眼光を此方へとぶつけ、舌なめずりをする青年。


その手には――甲冑姿の兵士が釣り上げられていた。



「な、な! ななななな――ッ!?」

「ハッ!」



動揺するスネップへと向けて、青年は手に持った兵士を投げつける。


「ひ、ひぃッ!」


その場にへたり込み、じりじりと後退するスネップ。


「おいおい、何処に行こうってんだよ? ええ?」

「……ッ」

「こいつら、お前を守るために身体を張ったんだぜ?」


両手を広げ、首を傾げてみせる青年。

彼の周囲には、倒れ伏した兵士の姿が数十とあった。



――全滅したのか……?

――たった一人の、敵を相手に?


おかしい。

目の前のこいつは何かがおかしいと――スネップは畏怖する。



「――それでも、逃げんのかよ」



青年の声の、トーンが落ちた。


頭の中で警鐘が鳴り響く。


それはきっと――気の所為じゃ――ない。



「――!!」



――ガギンッ!と、硬い物同士がぶつかり合う音が聞こえた。


閉じてしまった目を、恐る恐る開く。


するとそこには――



「何だ、テメエ?」

「――テメエこそ、何だよ?」



同じくガラの悪いメイド――ルーシー=スカイバーンが煙草を口に咥え、自動回転刃で男の爪を受け止めながら、立っていた。


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