↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハインソード・サーガ  作者: 威風
第2章 ~傭兵団結成!城塞都市の攻防編~
32/185

014 首席少年は目撃する

決闘を終えた俺は、暫しの休憩をザンスに申し入れ、一人で個室の部屋へと入っていく。

窓にソファに机――簡素な休憩部屋だ。


が――今はそれがありがたい。


「……ッ」


扉を背に、ずるずるとその場にへたり込む俺。


【マナ】も【気】も全て出し切った。


半端じゃなく――疲れていた。


そもそも、正気を失ったレシィを相手にしていた段階で体内の【マナ】は尽き掛けていたし【気】だって残り少なかった。


最後の戦いは――半分賭けであった。


レシィ=クリムゾンの厄介な部分は、その攻撃力ではない。

並外れた耐久力にある。

あのまま素手で――体術で戦われては、勝ち目がなかった。


だって、そもそも攻撃が通らない。


火の第八魔法『アグニ』を使って、肌を焦がす程度でしかダメージを与えられなかった段階で――俺はそれに気が付いたのだ。


このままでは不味い。

そう思った俺は、勝利するためのルート。

いかに相手に敗北感を与え、負けたと思わせるかに重きを置いた。



そうして考え付いたのが――レシィに剣を持たせようという事である。



あいつが剣を装備していた事は、四年前に見て知っていた。

基本スペックがもろに出る体術では敵わなかったが――剣術ではどうかと考えたのだ。


ぶっちゃけ、下手そう。


自慢の腕力でのゴリ押し……剣術の『け』の字も知らない戦い方をしそう……。

そんな偏見に塗れた考えで、俺は奴に剣を持たせてみた。


で、実際にやってみたのだが――俺の想像は半分正しかったと言わざるを得ない。


レシィ=クリムゾンの剣の腕は、確かにショボかった。

想定外だったのは、それでも身体スペックでゴリ押しされると、かなり厄介だったという点だろう。


想定よりも遥かにギリギリの戦いを強いられてしまった。


疲労困憊だ……。



「……あーあ」



俺は手に持った剣へと視線をやると――使用していた魔術を解除する。

土魔術により、糊付けされ、剣の形を保っていたものが――粉々に風化する。



……実際は、引き分けだったという訳だ。



さようなら。子供の頃から愛用していた――俺の剣。




◆




「信じられん……」


ザンス=クリムゾンは、折られた巨剣――イグニスを見詰めながら、そう呟く。

アダマンタイトを用いて鍛造された剣が、何の変哲もない市販の量産剣に敗れたのだ。

呟きたくなる気持ちも分かる。


「綺麗に切られたよな……」

「修理出来るかしら?」

「いや、そもそもしねぇ。記念としてとっとくよ」

「記念?」

「ハインリヒと全力出して戦った、記念!」

「……」


ニコニコと笑みを浮かべるレシィに、呆れた表情を向けるアルマナ。


「それに、案外使いやすくなったかも知れねぇしな。頑丈なのは良いが、コイツは私のタッパで扱うにゃ、でか過ぎた」


2メイル程あったイグニスは、現在1.5メイル程の大きさとなっている。

レシィの身長が165セイルなので、それでも取り扱うには大きい位であった。


「名付けて――ソードオフ・イグニス。どうだ? ――イケてね?」

「剣をソードオフってどうなのかしら……?」


――まぁ、気に入っているなら構わないけれど。と、アルマナは内心呟く。


「……もう、大丈夫なのね?」

「あぁ、闘争心も治まった……世話を掛けちまったな?」

「気にしているなら、それは後で剣で返しなさい」

「――だな」


言いながら、レシィは訓練場の周囲を見渡す。

戦闘の余波により、石畳は潰れ、壁には亀裂が入っていたりと、散々な有様だ。


「……酷いな」

「片付けは業者に頼むとして、暫くは訓練場は閉鎖するしかあるまい」

「悪いな、オヤジ」

「お前が化物になるよりは、マシな結果だろう」

「……」


レシィとザンスのやり取りは、未だ何処かぎこちない。

レシィ側の問題が片付いたとは言え、父との問題は――また別である。


「腹、減ったなぁ……」


動き疲れ、自身の腹部を抑えながら、そんな気の抜けた事を言うレシィ。


「折角だから、ハインリヒを誘ってご飯でもどうかしら?」


アルマナの提案に「それ、いいな!」と賛同するレシィ。

時刻は丁度、夕刻を周った頃であった。




◆



その場から解散する騎士団員とザンス。

アルマナとレシィに強制的に連れられ、渋々繁華街へと歩き出す、ハインリヒ。


無人となった訓練場の中で――動く影があった。


「この魔法陣……やはり見た事がない……ッ」


飛び散った石畳の破片。

それを組み合わせ、浮かび上がった紋様を見つつ、影は呟いた。


壊れた壁の隙間から――月の光が差し込む。

露わになった影の正体は、一人の少年であった。


王立学院の制服に身を通し、羽帽子を被った、利発そうな眼鏡の少年。


レイド=レヴァノフは――身を震わせながら、その紋様に手を触れる。


「属性指定無し……無属性……ッ!? そんなやり方があるのか……ッ!?」


それに――あのレシィ=クリムゾンを打倒した実力……。

何処を取っても、只者ではない。


「ハインリヒって呼ばれていたよな……?」


見付けたかも知れない。レイドは思いながら、唾を飲み込む。



「ハインリヒ=セイファート――ハインリヒ、先生ッ!!」



王立学院首席の少年、レイド=レヴァノフはこの日――自身の退学を決意した。


お読み頂きありがとうございます。


誤字脱字報告も、ありがとうございました。

いやー凄い助かります。

なるべく少なくしていく努力はしていきますので、今後とも応援よろしくお願いします。


気に入ったらブクマ&評価どぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
アズワルド世界地図↓
html>
― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは31話まで拝見しました 主人公が最初から自らのあふれる才能に飲まれる形で自信過剰になってしまっているところから、だんだんと周りとの比較に思うところがあったりしての心理について面…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。