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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第2章 ~傭兵団結成!城塞都市の攻防編~
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008 テレサ=エンフィールは美しかった

「……朝か」


教会の礼拝堂。その長椅子から身体を起こし、目を擦る。


昨日――帰ってから、亜人の子供達へと飯を作ったのだが――思ったよりも量が多く、結局プチパーティの様なものを開催してしまったのだ。


はしゃぐキッチェ。

一人酒が入り、楽しむプレア。


アホそうな二人に感化され、徐々に警戒心を緩めていく子供達。

ついでだからと孤児院にいる子供達も呼んで、種族の垣根を超えて皆で楽しんだ。


何だかんだ、良かったんじゃないかな。


流石にはしゃぎ疲れたのか、皆まだ眠ってるようだ。

床に転がる連中へと、軽く布を掛けてやりながら、俺はその場を後にする。



……後片付けは、任せよう。


俺は顔を洗う為、教会の裏手にある水場へと足を向けた。



そこにはどうやら――先客がいたみたいだ。



服を脱ぎ――白い肢体を露わにしながら、水を被る聖女。

金色の髪の毛先に滴る水滴が――彼女の豊満な胸元へと、零れ落ちる。

胸元を手で隠しながら、水を被るその光景は――まるで絵画の様に美しかった。


だから――俺は思わず見とれてしまった。

足を止め、彼女の上気した顔へと視線が釘付けになる。



「――ッ!?」



その目が俺の姿を捉えると、彼女は目を丸くしながら、驚いた声を出す。



あ、やばい……。

危険を察知した俺は、角から身体を引っ込ませ――



「す、すまん……」



と――謝った。



シスター・テレサ。

本名はテレサ=エンフィール。


俺が初めてこの教会を訪れた時に、出会った女性である。

うらぶれた教会に咲く一凛の花。

自身の貯蓄から孤児院を運営し、子供達を養っている優しい人。

俺なんかが入り浸っているのに、何も言わない時点で良い人なのは確かだろう。

行き倒れていたプレア=トリィを神父見習いとして置いたのもこの人らしい。


そんな優しい人の――裸体を見てしまった。


事故ではあったが……騒がれるだろうなぁ。


深く謝罪をしなければ。



内心でそう思いながら、しかし、壁の向こうから余り反応が無い事に、俺は首を傾げる。

もっと「キャー」とか叫ばれるのかと思っていたのだが――静かだ。


一体シスターは何をやっているのだろうか?

気になる俺だが、今度また覗く訳にもいかず、その場で彼女が来るのを待った。



「あ……」



待つ事数分。

少し困った様な顔をしながら、修道服を着こんだテレサが、俺の前へと現れる。



「……見ました?」


――何を?

――俺は一瞬、問い返したくなるが、そこは流石に空気を読む。


「胸元を……少し」

「……他には?」


……他には……。


……他?


「他ッ!?」


何だ?

シスター・テレサ。

俺に何を言わせたいんだ?


少しばかり聞いた事はあるが――もしかしてこれが言葉攻めという奴か?


「い、いや……他には……何も……」


絞り出す様に、そう言う俺。

果たしてこの答えが正解なのかどうかは、未だ少年の自分には分からなかった。



俺の言葉に、何だか安堵の息を漏らすテレサ。


「そうですか。……なら、構いません」

「構わないだとッ!?」


思わず、声が出る俺。

それはつまり「裸も見られても、構いません♪」という事だろうか?


流石に――エッチ過ぎるだろう。


シスター。

俺には理解が出来ないよ。



「あ! いえ!? そういう意味ではありませんよッ!?」


戸惑う俺に、遅れて意味を理解したのか――顔を真っ赤にして慌てるテレサ。


「……」


その様子を見て、ようやく俺も落ち着きを取り戻す。


「――とりあえず、悪かったな」

「いえ……此方こそ?」


語尾に疑問符を付けながら、首を傾げるテレサ。

何と言うか、可愛らしい人だよな。――本当に。



「謝りついでに――ちょっと来て貰っても良いだろうか?」

「は、はい? ……何だか、凄く嫌な予感がするんですけれど……」

「はっはっは」

「え、今なんで笑ったんですか? ハイン君!?」



勘の良いシスターを連れて、俺は礼拝堂へと戻る。

途中テレサからの質問を華麗にスルーしながら、その惨状を彼女に見せた。



「まぁ、見てくれれば分かるが――少し汚した」

「……少し?」



ジト目で此方を見詰めるシスター。


「見覚えのない子達ですね……見た感じ、亜人が多い様な」

「あぁ、それは――」



俺は此処までの経緯をシスターへと説明する。

傭兵団を作ろうと思った事。

奴隷を買った事。

その奴隷を自由にしてやった事。


――などだ。



「犯罪者を野に離したのは頂けませんが――子供達を解放したのは良い事だと思います」

「おお! それじゃあ!」


「最初からそのつもりだったのでしょう? ええ。私の孤児院で受け入れます。親を亡くした子供達――そこに種族の違いはありませんから。慈愛の女神アルフロア様も、きっとそう仰るでしょう」


「――すまない。助かる」


言いながら、俺は懐から財布を取り出し、彼女へと渡す。


「金だけ出すというのも、卑怯なやり方かも知れないが――孤児院の足しにして欲しい」

「断っても、無理やり渡すのでしょう?」

「子供の為なら、貴女は受け取るさ」

「……本当、卑怯な子ですね」

「む……」


言って、俺の頭を撫でるテレサ。

こういう子供扱いは、少し新鮮だったりする。


「ただ――後片付けは皆でしましょう」

「……」


金で解決出来ない事もある。

今日は朝から、一杯良い事を学んだ日であった。


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