表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハインソード・サーガ  作者: 威風
第2章 ~傭兵団結成!城塞都市の攻防編~
25/185

007 狼 VS 修道女

「クソが……ッ」



狼の青年――ファング=コードレスは、吐き捨てる様にそう呟く。

ダークマーケットを出て、今は路地裏を歩いていた。

明日になれば、今日の凶行も白昼晒される事となるだろう。


この街の自警団も動くだろう。

少しばかり、動きづらくなるかも知れない。


そう思うと、やはり今日で目的を達成出来なかったのは痛い。


自然と、口からは舌打ちが出てしまう。



「金持ちのガキか……」



支配人の豚人間は、素性も知れないガキに売ったと言っていたが――



「一億イラをポンと出すガキなんざ――限られんだろうが……」



城塞都市ポンペイ。

その領主の息子――スネップ=アノンドロワ。



思い当たる金持ちのガキなんざ、そいつしかいねぇ。

だとしたら――あの支配人もやはり、領主連中を庇っていたという訳か?


あの土壇場で?

俺が手前を見逃すとでも思ったのだろうか?


だとしたら――舐められたもんだ。



「殺しておいて正解だったな……」



くくく――と。暗い笑みを浮かべながら、俺は路地を歩いた。


通りとは違い、人の気配など――何処にもない。



――だと言うのに。



向かい側から――修道女が歩いてきた。

腰まで伸びた金色の髪。黒い修道服に身を包んだ、一人の女がだ。



こんな所を、こんな夜に何故通る?

不用心だ。

人間族というのは、危機意識というのが足りないんじゃないか?



女とすれ違う。

香水を効かせ過ぎな気もするが――イイ女だ。



俺が悪い狼ならば――襲い掛かっていたかも――


――そう、俺が思った時。




「貴方――血の匂いがしますね?」




銀閃が――目の前に飛んできた。



「うおおおおッ!?」



慌てて後ろに飛び退き、回避する俺。

見ると――修道女の手には不思議な剣が握られていた。


剣――? いや、鞭か?

太腿から取り出した? いつも携帯してんのか、アレ?


「――ってか、何で攻撃してくるッ!?」


「殺人鬼を野放しにしていく道理は無いでしょう? ――尤も貴方は【鬼】ではなく【狼】なのでしょうけど」


「そこまで分かってんのかよ……ッ!」


色々と疑問は付きねぇが――ヤルってんなら関係ねぇ。

喧嘩なら喜んで買ってやる。



実際、むしゃくしゃしていたからな。



「――後悔、すんなよ?」



身体へと巻き付こうとする鞭の様な剣を、黒炎の放出で吹き飛ばす。

修道女の手元に戻った刃は、連結し。一本の剣へと姿を変え、俺へと突き出される。


「――痛ッ!」


人狼へと変貌した腕で、修道女の突きを受け――そのまま女の腕を潰す様に握ってやる。


「……ッ」


苦悶の表情を見せる女。

終いだな。

人間と亜人とでは、肉体強度が違う。


武器や技術でその差を埋める事は出来るかも知れないが――こうして掴まえてしまえば、それも不可能。



こっちとしては、腕を貫かれちまってるんだ。

多少ムチャクチャにされても――文句はねぇだろう。



空いた手で女を切り裂こうと――爪を振り下ろす。




同時に――腹部から肩口まで、下から切り裂かれる俺。




「な――ッ!?」



手を放し、慌てて女から距離を取る。

傷は深くはない。

だが――そもそも反撃された事がありえない。



「何か、隠し持ってやがったのか……?」

「……さぁ? どうでしょうね?」



肩で息をしながら、返答する女。

反撃に驚き、浅くなったとは言え、俺の爪も奴に届いていた様だ。

肩から血を流し、此方を睨む修道女。

その空いた手には――武器となる様な物は見られなかった。


深手ではない。

続けようと思えば続けられる。


だが――



「――朝か」



日が昇りかけた空を見ながら、俺は呟く。

負ける気はしねぇが――すぐに勝負を付けられるとも思えねぇ。


潮時だろう。



「ファング=コードレスだ。――名乗れよ女」

「……テレサ=エンフィール」

「覚えておこう。――次は最後までやってやる」

「逃げる気ですか?」

「追い掛けるか? その身体で?」

「……」

「――じゃあな」



沈黙を返答と理解した俺は――その場から駆け出した。

亜人の脚力だ。

人間が追えるものではない。



しかし――



「テレサ=エンフィールか……」


強い女だった。

何より、あの眼――何処か親近感を覚える。



「人間にしとくには――惜しい女だったな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
アズワルド世界地図↓
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ