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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第2章 ~傭兵団結成!城塞都市の攻防編~
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003 ヤニの臭いのするメイド

食料品を買い出しに、市場へとやってきた俺は――目の前で強面の男に絡まれる青年を見かける。


「おら! もっと金だせ、おらッ!!」

「ひひひ! 兄貴ぃ、コイツ蹴れば蹴るだけ金を落としますよぉ!!」

「や、やめたまえ君達……やめたまえーー」



「……」



普段の俺であるならば、無視していただろう。

相手は服装からして貴族のボンボンな様だし、金はたんまりあるのだろう。

流石に白昼堂々、命までは取らんと思うし……。

何より俺は、そこまで善人ではない。

見ず知らずの――それも女・子供以外を助ける趣味はなかった。


なかったのだが――



「……おい」



俺は問題に首を突っ込んだ。

何故なら、このゴロツキ二人――その顔に見覚えがあったからだ。



――っていうか、俺が買って自由にした奴隷じゃないか、こいつら。



何で早速問題を起こしてるんだよ、おい。



「おやぁ? 何だ、俺達を自由にしてくれた坊ちゃんじゃねぇか?」

「アンタには感謝してるぜ!? おかげでシャバを満喫出来るからなァッ!!」

「満喫って――それがか?」


俺は踏みつけられた青年へと視線を落としながら、奴等に尋ねる。


「おうよ!!」

「人を殴って金を稼ぐ! こんなに楽しい事はねぇぜ!!」

「……はっ」


彼等の返答に――俺は思わず笑ってしまう。

駄目だこいつら。



「最後だ。――今すぐその足を退けろ。でもって奪った金を返して、どっかいけ」



俺の言葉に、彼等は互いを見詰め――笑いだす。



「幾ら恩人とは言えなぁ……そいつは出来ねえ相談だぁ」

「ついでにオメェの金も奪っとくか。金持ちだって知ってんだぜぇ……!?」



グイっと。

目の前の男が俺の襟首を掴む。


が――



「あぱっ……!?」



次の瞬間――妙な奇声を上げ、男は俺の横へと崩れた。



「な、何が――うッ!?」



もう一人も同じだ。

頭をビクリとさせ、膝から崩れ落ちていく。



……しょーもな。



俺は溜息を吐きながら、倒れた青年へと近寄ろうとして――



「――ありがとよ」



目の前の――自動回転刃を担いだメイドに礼を言われる。

いつからそこに現れたのか――数瞬前は青年の隣にメイドなど立っていなかった筈だ。



……なんてな。



ばっちり気が付いていたさ。

路地の影から、青年の様子を窺いながら、煙草を吹かしていた不良メイド。

職務怠慢――此処に極まれりと。

内心思っていたのだが――なるほど。ふぅん? ……そこそこ速いな。

レシィ=クリムゾンと比べると――かなりランクは落ちるが――強い奴なのかも。



「一服したら助けようと思ってたんだが……部外者にやらせちまったな。悪りぃ悪りぃ」

「別に構わん。こっちもただの尻拭いだ。主人思いのメイドに関心はしたがな」

「ははは。言うねぇ? ちょっとした興味で聞きたいんだが……アンタいくつだ?」

「歳か。今年で15だ」

「――若いな。その若さで、この強さか……」

「お前もそこそこ強いな?」

「そこそこ? ……へぇ?」

「どうだ。そこで延びてる貴族に雇われるより、俺に雇われてみないか?」

「……本当に面白いガキだなぁ、アンタ……」


俺の提案に答える前に、メイドは気絶した主人を肩に担ぐ。

成人男性を片手で軽々と持ち上げるか。

背中の回転刃も伊達ではないらしい。


「まだ数ヵ月契約が残ってるからなぁ……その後、アンタがアタシの主人よりギャラを多く払ってくれるっていうんだったら――考えてやるよ」


「――ほう」


とんとん拍子で決まったな。

傭兵団の仲間入り決定と見て良いんじゃないか? これは。



「いや――言っとくけど、マジで高いからな」

「あぁ、大丈夫大丈夫」


金なら一杯あるから。マジで。



「庶民に払える給金じゃ――って、もうどうでも良いか」



「面倒臭せぇ」と言いながら、その場から歩き出すメイド。


その足が――唐突に止まる。



「おい、何やってんだよ、アンタ?」

「あ?」

「付いて来いって言ってんだよ。――てか、流れで分かるだろう、こんくらい」

「いや、分からんし」

「……」

「何だよ?」


呆れた様な顔で、此方を見るメイド。


「アンタ聖人か?」

「はぁ?」

「主人助けたんだ。礼の一つでもしなきゃ――こっちの顔が潰れるだろうが」







ルーシー=スカイバーンは、元は名の知れた傭兵であった。


金次第でどんな戦場でも駆け巡った。

派手に戦い、派手に殺す。

味方であった奴ですら、金次第では敵へと周って殺し合う。


傭兵とはそもそも、そういう連中の筈だろう?

アタシの親父だってそうだった。

弱肉強食。


親父と同じ、傭兵として生きていくと決めた瞬間――いや、それ以前から、その摂理は自然だったのだ。



だと言うに――気が付けばアタシは追われていた。

懸賞金というものが、掛けられたらしい。


誰に――? さぁ知らねぇ。


恨まれていたんだろう。

憎まれていたんだろう。


傍若無人に――好き勝手生きてきた。



アタシにはそれが当然だったし。当たり前だった。


悪い事だなんて、感じた事が無かったから。

だから――こうして他人の敵意を感じ、初めてアタシは自分が悪い奴だと気が付いたんだ。



昨日同じ釜で飯を食った奴を――今日には笑って切り殺していた。

普通の奴はやらないらしい。

そんなこと。


そんな――悪い事を。



世界がひっくり返った様な気がした。

実際に命を狙われて――初めてアタシは自身の世界の狭さに気が付いたのだ。



気付いてからは早かった。

アタシは居ても立っても居られなくなり――傭兵稼業から身を引いた。


とは言え――全うな事をしてこなかった人間が、いきなりソレに慣れるかと言えば、それは不可能だと言う他ないだろう。



生きるためには、飯を食う必要がある。

飯を食うには、金が要る。


戦う事しか能のないアタシは――当然、餓えた。


ボロボロの姿で、路地を彷徨い――そうして、誰かが襲われているのに気が付いた。

むしゃくしゃしていたんだ。

腹が減って気が立っていた。


そんな中――懐かしい、暴力の匂いを嗅いだ私は――辛抱溜まらず乱入した。


良く分からなかったが、ボコボコにした。

殴った相手なんざ見ちゃいねぇ。


ただ――残った貧弱そうな奴が、私に礼をしたいと言ってきやがったから、腹が減っていた私は何も考えずにそれに頷いたんだ。



出てくる飯に舌鼓を打ち、

着飾られる服装に満更でもなく、

遜る青年に気を良くした私は――



何故だろうか――メイドになっていた。



――何故だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 自分で開放した犯罪者を自分で取り締まる意味がわかりません。 流石にこの行動は馬鹿すぎる気がします。 開放した犯罪者に主人公の身内が殺されたり、犯罪者に親を殺された子供が主人公を殺しに来る…
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