002 面接~仲間を求めて~
面接は、懺悔室にて始まった。
「ケッケッケ! 俺様は切り裂きジャック!! 奴隷から解放してくれるって聞いて――」
「……チェンジ」
「オデぇ、お腹空いたァ……女ァ食べる、ダイスキィ……」
「――チェンジ!」
「俺は騒音のガサラッ!! 夜だろう昼だろうと他人を寝かさねぇ! 皆! 俺の歌を――」
「チェンジ!!」
「ぶひーぶふふ、ぶひー。ぶふふ……拙者――」
「チェンジじゃ、ボケッ!!」
吠えると同時に机に突っ伏し、俺は頭を抱えてしまう。
大きく息を吸って、一言。
「くそッ! ロクな奴がいねぇ――ッ!!」
「……どうでも良いけど。……いや、本当は良くないけど――面接で落とした彼等、自由にしちゃって良かったのかい? 何か問題にならない?」
「ああ!? 知らん! ――興味ないわ、そんな連中!」
「Oh……」
「大体、残って貰っても迷惑だろうが! 何に使えるんだよ、あんな奴等!?」
「うぐ……」
見た感じ、社会貢献とか一切出来なさそうだったぞ!?
よく奴隷として商品にしようと思ったよな――と。
逆に関心してしまう。
「――で、残ったのは彼等かい?」
「……」
そこにいたのは、薄汚れた格好をした子供達であった。ロクな物を食べていないのか、ガリガリに痩せ、骨が浮き出ている。その癖、眼だけは警戒した様にギラついていた。
どの子供も頭の上に特徴的な、獣の耳を生やしている。
亜人の子供だった。
「どうする? 彼等も仲間にスカウトするのかい?」
「……馬鹿を言え」
俺は言葉を吐きながら、子供達へと近付いていく。
ビクリと。怖がる素振りを見せる子供達の中で――俺は、小さい子を己の手で庇いながら、此方をビクビクと見詰める年長の少女へと声を掛けた。
「……あー、そんなに怖がるなよ」
「……っ」
「何にもしないって。ほれ、俺の目を見ろ。人畜無害な綺麗な目をしているだろう?」
「むしろ濁ってる様な気もするけど……」
「おい!」
横から余計な口を出すな!
ほれ見ろ、何か警戒しちゃってるじゃないか!!
どうしたもんかと、俺が悩んでいると。
「わ! 猫耳の子が一杯……!」
キッチェの奴が、教会へと現れた。
どうやらケーキ屋のバイトは終わったみたいだな。
「あ! プレアさん、いつもすいません! お邪魔します!」
「あぁ、いらっしゃいキッチェちゃん。君は礼儀正しいね。何処かの誰かさんにも見習って貰いたいくらいだ。此処は教会。神は誰にだって門戸を開いているし、そう畏まらなくても大丈夫だよ。――まぁ、そう言う僕も居候みたいなものだしね」
「……気にしくなくても良いってさ。良かったな、キッチェ。今度此処で宴会でもするか?」
「……相変わらず、幼馴染が絡むと攻撃的になるねぇ、君は。嫉妬するくらいなら、もう少し優しくすれば――って! 痛たたたたたたッ!?」
余計な口を聞く、神父見習いの背中を蹴り付けてやる。
プレアの奴は一言多いんだよ。
「ねぇねぇ、ハイン?……この子達、どうしたの?」
「あぁ、実は――」
俺は、此処までの経緯をキッチェに説明する。
「ええ!?」とか「へぇ!?」とか面白いくらいに表情をころころ変えるキッチェ。
そうして――
「お友達になろう! ――ね! ね!」
――と。コイツは、亜人の子供達へと、ぐいぐい行くコミュニケーションを取り始める。
「おいキッチェ……戸惑ってるだろう? その子達……?」
迷惑そうだから止めとけ。
と、俺が声を出すが――聞き耳を持たない。
「ええ〜? そんなことないよ~。だってこの子達、こ〜んなに可愛いんだよ~?」
どんな理論だ。
全く答えになってないじゃないか。
「――ッ!」
「――あいた」
「おい!」
近付いてきたキッチェの手を亜人の少女が振り払う。人間の指と違って亜人の爪は鋭い。獲物を狩る為に特化した武器なのだから、それもその筈だろう。引っ掻かれ、腕から血を流すキッチェだが、コイツは俺に向かって「大丈夫」と微笑んだ。
「……っ」
怯える少女へと、キッチェは再び近付いた。
「見て見てー」
「……?」
腕の傷口を少女へと見せる。
「え……?」
みるみる内にキッチェの傷は再生していった。まるで時が巻き戻る様に。数秒後、そこには傷があった事すら信じられない様な、まっさらな腕が存在していた。
「えへへ。怪我の治り早いんだ~、私」
「え、えぇ……?」
「だから気にしないで?」
「……」
「ね? 貴女の名前を教えてよ?」
「……シュチャ」
「シュチャ?」
「シュチャ……パルマ……」
「シュチャ……シュチャちゃん! ん〜? 言いにくいから、シーちゃんで良いかなぁ?」
「……うん」
「私、キッチェ=ルヴィ! よろしくね、シーちゃん!」
アホそうな笑顔を浮かべて、シュチャ=パルマへと手を差し出すキッチェ。亜人の子は、恐る恐るその手を握り返す。
「ふん」
「おや、何処か行くのかい?」
「見ただろう? 此処は俺の出る幕じゃない」
あの様子なら、他の子と打ち解けるのも時間の問題だ。
「飯でも買ってくるよ。痩せ細って、ロクなもん食って無かったみたいだしな。御機嫌取りって奴だ」
「お、優しい。ついでに僕もご相伴に預かっても?」
「勝手にしろ」
言って俺は、教会を後にする。
それにしても――あのキッチェの回復速度……。
「――魔王の、血か」
何か、厄介な事にならなければ良いんだがな……。




