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ギルドに入ってすぐのところにギルド内の案内板、右側には酒場からトイレ、アイテム販売所、依頼ボードなどなど。
左側には二階へ行くための階段、そして冒険者用の受付窓口が横一列にズラッと並んでいる。
受付窓口は番号で分けられていて、手前から、一から三までが冒険者になるための手続きができるところ。
三から七は冒険者になった人たちがアドバイスを受けたりするところ。
そして、僕たちが向かうのは八以降の探検隊の申請を行うところ。
「じゃあ、そこにかけて下さい」
オリアナと僕は椅子に座り、真剣な眼差しでポロンさんの顔を見つめる。
「そんなかしこまらなくていいから……いま書類持ってくるね」
「はい」
「よろしくおねがいします」
ポロンさんはデスクから離れ、奥の棚から一枚の書類を持ってきた。
「これが、探検隊の申請書、んでこれに部長がハンコを押して国に書類を送って、タイダル王の許可が降りたら無事探検隊結成って感じ」
「タイダル王……」
「オリアナさん?」
タイダル王という言葉にオリアナが過敏に反応するように顔をしかめた。
「すみません、続けて下さい」
「えぇ、でこの書類はまず私が破ります」
立ち上がるとポロンさんは書類を綺麗に破った。
「ちょっとポロンさん!?」
咄嗟に大きく開いた両手で机をたたき机から身を乗り出し、
「あなた達は何もわかってない!! 多くの人が探検隊を組んで、行き倒れしたか!! 探検隊っていうのはお互いの人生を預けるってこと、結婚とはまた違う意味でね、冒険者って職業はダンジョンから無事に戻ってこないと収益ゼロどころかマイナス、今の智也くんには悪いけど探検隊を勧めることはできない!!」
ポロンさんから聞いたこともない怒号を浴びせられ怯むように僕は静止した。
他の職員も驚いた顔でこちらを見ている。
「だけど、どうしても、どうしても出会ったばっかのオリアナさんと探検隊を組みたいというなら、これ」
静止した僕の前に一枚の紙が押し付けられた。
「こちらは?」
「これは遺跡の調査票、あなた達にはこの遺跡の攻略を探検隊結成の条件とします」
「なるほど」
「ちょっと、ポロンさん!?」
「意義があるなら探検隊の結成は智也くん担当の わ・た・し がハンコを押さないので通りません」
ポロンさんのいつにもなく真剣な顔、本気だということくらい僕でもわかった。
紙に書かれている遺跡は「ふるぼけた遺跡」と呼ばれるまだ調査の段階で進行が止まっている厄介なダンジョンという噂を耳にしたことがある。
帰還してきた人たちがあそこはやばい、というくらいには危険なダンジョン。
アイアスの森すら攻略できていない僕にできるのか……
「期限は二週間」
「えっ?」
「流石に私だって鬼じゃないよ、でも期限の二週間の間に遺跡の攻略ができなかったら探検隊の結成は無し、いいね?」
僕はオリアナの顔を覗く。
「二週間、それだけあれば十分です」
「じゃ、それで上に話通してくるから」
本気で言ってるのか!?
名のある探検隊が挑戦してまだ調査段階、それを攻略って流石に無理がある。
「智也さん、いきましょう」
「はい?」
立ち上がったオリアナは僕の手を引き、ギルドの外へ連れて行った。
「ポロンったら、ちょっと厳しすぎない?」
「え? そんなことないわよ」
「そんなことあるよ」
遺跡の調査票を読んでいたポロンに同じ受付嬢をしているアリナが声をかけてきた。
ポロンよりも人気は劣るが、ヒート地方と呼ばれる場所出身の人の特有の黒く美しい髪に目を奪われる人も少なくない。
「なーに、あの子に嫉妬でもしてるの?」
「ちっ、違うわよ!」
慌ててポロンは立ち上がり手に持っていた調査票を上下に振る。
「どーだか」
鼻で笑いながらアリナは自分のデスクに戻っていった。
「なんなのよ……」
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