聖女から悪役令嬢にジョブチェンジ
「エヴァ・アレクサンデションは聖女の名を語りし偽物。聖女であるソフィア・サンドベリを貶め、数々の罪を着せた大罪人である。よって王太子との婚約を破棄、また聖女の称号を剥奪の上身分を平民としこの国を追放する」
いつの間にか聖女から悪役令嬢になっていたらしい。うん、知ってた。
仕組んだのはあたしだし。
悪役令嬢ぽいでしょ?
目標達成できた記念に、ここで胸を張って高笑いすべきかしら?
しないわよ。アーサー…。
後ろに控えている従者の冷たい視線を感じ、残念に思いながら周りを見渡した。
それにしても沙汰を聞きながら目を鬱血させ怒りを堪えている王は、醜悪で見るに堪えない。
王家より人気のある聖女なんて、徹底的に排除、処刑したかったのだろうけど、残念ながらこれが限界だったようね。
残念でした!恨むなら人気のない自分たちを恨みなさいね。
さて、追放するといいながら国を出ていくときに、あたしを亡き者にしようとしている者がいないとは限らない。
あ、うん。周りを囲っていた騎士達が動き出したから間違いないね。
分かりやすくて助かるよ。
最後にとっておきの切り札を出しましょう。
「アーサー」
素早くあたしを抱き上げたアーサーは、人間業とは思えない脚力で天井へと飛び上がり窓を突き破った。
ぽっかり空いた窓から見えたのは銀色の見事な竜と、その上には先ほど追放となったばかりの聖女改め悪役令嬢。
「ど、どういうことだ!聖女にしか仕えることがない銀竜だと!!」
冤罪で聖女の称号を剥奪した女が、聖女を象徴する銀竜を伴っていたら、ね。
王家の面子丸つぶれ。
ざまあ!
聖女として地方を巡礼中、瘴気によりその土地を守る聖獣や幻獣が狂い、それに付随するように魔物が跋扈した場所が多くあった。
勿論銀竜であるアーサーがいる限りあたしに怪我はない。聖獣や幻獣を傷つけないように癒すのには、本当に骨を折った。その分、今から向かう先が楽園になったのだけど。
待ってて、あたしの楽園。もふもふちゃん!
ああ、早くあのふわふわで柔らかなで優しく肌を包み込むあのもふもふに包まれて癒されたい。
ん?
あ。もちろん、アーサーは別格よ?
意外に人間臭くツンデレの銀竜の頭を撫でながら、エヴァは風を感じていた。
聖女よりも自由な悪役令嬢、…悪くないわね。
聖女改め悪役令嬢、幸せになります!