オンファイア
剣を振り下ろされる
風を発生させながら横に移動する事で振り下ろされるとわかってから回避が可能だ
剣を横薙ぎに振られても、上下の感覚が広い方、最悪大きく上に飛べば当たることは無い
そう言えば反発し合う鉱石が見つかったとか報告があったな…それを使えばどこまでも逃げ続けれないか?
…いまはよそう
相手の風圧も利用して避ける鎧、開発にマオ相手にボッコボコにされたのが頭をよぎる…
さて、年がら年中工房に引きこもって何かしら弄り回しているような自分が、なんで対人戦なんかしてるんだって話だ
…昨日、あの一言さえなければよかったのか?
◇
「よし、出来た」
「おっーコウ!どんなの!!?」
いつにも増してテンションが高いマオ、なんだろう、出し惜しみしたくなる
でも言っちゃう
「これは人に火傷を直接付与する魔法だからね、効果あるとかはわからない方がいい」
「えぇー」
思ったより残念そうだ、難しそうな理由でも付けとけば諦めるでしょ
「怪我しない人でもいないと」
「ん?それなら簡単じゃん!任せて!明日には試し斬りできるよ!」
そう言って外に行く準備をする
「…え?」
「コウも!対人戦の準備しといてね!」
バタン…
「え、…え?」
どうやら以前に会ったソエルさんの知り合いの…セーラさん?がそういうセッティングが御茶の子さいさいらしい
ちなみにマオはセーラさんとも仲良しらしい
おばけコミュ力やわー
そんで日をまたいだらマオに連れられ、控え室とやらに放り込まれた
手続きとかは済ませたよーって言われたけど大丈夫?同意規約スルーして了承してたりしない?ちゃんと読んでる?
はぁ…
着慣れない自作の防具やらを装備して、座って待ってたら控え室から繋がる重々しい窓…扉…いやこれ柵だ、というか檻?
が開いた
まぁ行くよね
なんとかなるだろうと軽い気持ちだ
向かいから出てきたのは鈍器のようなでかい剣、がっちがちな鎧、な、でけー体をした男性
見た目的に鈍足パワー型とでも言おうか?
ビーっとブザーがなった、同時に動き出す相手さん
どうやら今のが開始の合図だったようだ
グンッと加速して…はやいっ
予想より遥かに早い速度で駆けてくる
…まずはどんなことをしてくるか、だな
◇
「ほらー!コウ!試し斬りするんでしょー!」
後ろからマオの声がかかる
ちらりと見ると観客席であろう場所からこっちに声をかけているようだ
さながら自分と相手さんは見世物だな
観客席はほとんど人はいないようだ
戦っている場所を囲むような客席は闘技場を思わせ、相当に広い
普段外に出ない自分でもここを貸切にできるのは相当すごいとわかる
…セーラさん何者です?
「ふんっ!」
ちっ…と相手さんの剣が頬を掠める
防具のインチキブースト回避に慣れ始めているようだ
けれどこちらも振り方や癖はだいたい見慣れた
ほら、振ったあと基本の体制に戻ろうと足を引く
ここっ
鞘に納められているように見える剣を斬るつもりでは無く、当てるつもりでふる
今回の試し斬りしたい剣はこちら
刀身は無く、無骨な見た目となっている赤と宝石のようなキラメキが特徴で一見飾る用の剣だ
一応刀身がない訳では無い…ただ抜くと魔法陣の為に彫られまくってるため多分何かを切ろうとすると剣がポッキリだ
この剣は斬るための剣じゃない
「オンファイア」
それは言霊、魔法を発動させるキーワード
「ぐおっ!?」
ボウッと燃え上がる相手さんの鎧
最初の火種にあまり熱さは無いだろう
それを織り込み済みのド派手な炎だ
ほら、ビビって後ずさりしちゃった
トンと剣で突く
「オンファイア」
ボガンッ
相手さんのみぞうち辺りの鎧が爆発したように見えた
そのまま尻もちを着いてしまう相手さん
「ぐおおっ!」
バキッ
横に転がり直ぐに立ち上がる
そして鎧を力任せに剥ぎ取りこちらに投げてくる
「は?」
いやいやいや!?バケモンだな、お相手さん!?
グワンと足に当たる
「あいったぁ!?」
「なかなか奇妙な剣を使うな」
なかなか奇抜な対処法ですね!?
「初見殺しの虚仮威し…と言ったところか?」
お相手さんの目線には投げ捨てた鎧
それには焦げた跡など無く、いまは燃えてない
間違ってないけど、オドシではあるコケではないが
そうじゃないか
別に発火を促す剣っていうわけじゃない
そんなんだけなら刀身がボロボロになるまで魔法陣を彫る必要なんてないから
鞘付きのような剣を天に掲げる
…あの辺でいいかな
この闘技場、屋根がある
下手に発生位置が高すぎると
おそらく突破ってしまう
「オンファイア」
天井スレスレの所にいくつもの魔法陣が展開される
大小様々な魔法陣は一つ一つが別々のものだが、それらが組み合わさり大きな魔法陣として再築される
魔法陣から生み出されしは、赤い岩
熱を放ちながら剣を振り下げた先、お相手に目掛けて落ちていく
シュゴゴォォォオオっっ!
いくつも、いくつもの隕石が
「ぬぉぉおおお!?!?」
剣に彫られた魔法陣は
空間に干渉する、位置、座標を指定する魔法陣
炎を生み出し、発射する魔法陣だ
空間干渉のだけで刀身はほとんど原型を留めなかった
それくらいボロボロに彫ったのだ
天井スレスレで再築された魔法陣は大きさ倍加と剣先の座標を追尾するように発射する魔法陣も組み込まれている
蛇足だがオンファイアは実は言わなくても大丈夫だったり
かっこいいから言うけどね!
ズシンズシンと降り注ぐメテオ
しかしお相手さんもなかなかやるようで上手く回避し隙あらばこちらに近づこうとしている
ではトドメの一撃
「オンファイア」
ごうっ
「ぐあっ!」
相手さんが苦しむ声を上げる
見た目に変化はない、炎が発火した訳でもない
この鞘のような剣先は魔法陣のスタンプになっている、効果は
火傷をおわせる、だ
強化、支援魔法があるならその逆もあるだろうと闇魔法をちょっと齧った
そしたら状態異常に陥れる魔法もあったから魔法陣に落とし込んだだけよ
鎧越しに効いたのは驚いたけどね
これは自分にやって分かった事だが
火傷を直接付与する、というのは最初はただ体の中から燃えるような何かに責め立てられているよう感じるだけだ
少しだけならやる気すら上がる
しかし時間が経ちだんだんと動きが鈍ってくる
ただそれだけだと体調不良と変わらない
どういう訳か、自覚した瞬間にこの異常を火傷と捉え
まるで火炙りにでもされているように感じるのだ
なかなか恐ろしいね、うん
自分にやった時は夜、火炙りにされた悪夢でうなされたよ…
お相手さんはあとは自分との戦いだ、さっさと降参して欲しいところだね
◇
「た、助かった」
大柄な男性に状態異常を治す魔法…自己暗示のようなものをかけている
闘技場の真ん中、降参してくれたので魔法陣を解除、トラウマになるのでアフターケアくらいね?
自己暗示といっても光魔法の癒しの魔法陣かいて魔力流して、「もう大丈夫ですよー」なんて言うだけだ
状態異常はまだまだ奥が深そうだ
「コウーおつかれさまー」
マオがこちらに歩いてくる、後ろにセーラさんとソエルさんも見える
美人は絵になるなー
「結局どんなだったの?上手くいってた?」
「どんな魔法だったのですか?」
「メテオレイン…かっこいい…」
ソエルさんとセーラさんも口々に感想をくれる
感想というか疑問か、セーラさんの何かの線に触れたようだけど
「単純ですよ、上から土と火の複合魔法を降らせるだけです」
精神的に追いやったのは火傷の方だがわざわざばらす必要も無い
「防具も完成してたんだね」
マオ、それは手の内を晒す行為だから…
「防具?」「防具もなにか?」
「うん、ビューってなるとフッてなってスワンってなるやつ」
著しい脳の低下を見たかな?
その後少しだけ話をし、慣れない戦闘で疲労が溜まっていることを伝えてその場を離れる
お相手さんだけはずっとこちらを見ていたんだけど…
セーラさん、ソエルさんときてこの人も要人だったとか?
…まさかね?
さって!点検して寝よ!