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最後

ここに記すはこの物語の最後

「ここに…収束したのね」


その少女が見下ろすは見れば言葉を失うほどの絶景


綺麗、美しい、はたまた優雅とも


似たりよったりな言葉で、しかし用途は変わる言葉だがその言葉が全て間違いでは無いような情景


その光景はそう言い表せる光景なのだ


花が咲き乱れ

鳥が優雅に飛び

風が撫でる

月がそれらを美しく照らしている


あぁ、うまい言葉があった


まさに花鳥風月だ


ただ人工的な、魔法による光景なので正確ではないが



目を奪われたことに違いはない



人生とは糸のように細いものだ

細い糸が伸びている、延び続けている


その糸はほかの糸に絡まり、されども延びていく


絡まった糸は解けることもあるけれど

何某らの関係を持つ


関係が持たれ、絡まると糸は束となり、太くなっていく


多くの糸が集まり、それはどこに向かうのか、それは運命の糸でも操らない限りは知る由もない



…はぁ、カッコつけようと糸とかの例え話なんて出すものじゃないわ

そういう柄じゃないもの…


私はマオ、この最後を、美しい光景を見届けることが出来た幸運な一人よ



最後から言えば、


自分が生き長らえるために他の人の寿命を奪い続けたある王が、四人の魔法によって亡き者にされる話


少しだけ話しましょう、この光景に至るまでの話を、ほんとに少しだけね



王座に座る人王である人物


フル=ネセト


何年もの、何百年もの間この玉座に座り続けている人物だ


その事を疑問に抱くものは周りにいない、なぜなら抱くことが出来ないから

そうさせられているから


長く生きたことにより得た知識はこの世界の理にすら干渉が可能なほどの知識を得ていた


同時に、長く生きたことにより多くの運命をねじ曲げてきてしまった


そのしわ寄せというのは、いつか来るもので


フル=ネセトの前の空間が裂ける、何かに切られたように、唐突に、なんの前触れもなく


「お前のくれた土地に招待だ」


そんな声と共に裂け目から伸びてきた手はフル=ネセトを掴み、引きずり混む


フル=ネセトは抵抗しなかった

いや、してはいたのだが、出来なかった


まるで凍りついたように固まり震えることしか出来なかったのだ



「ぐ…ココは…」

体に着るように厚い氷に覆われている人王、氷は目に見える形で人王の動きを止めている


「ここは元学園だ、お前のくれた俺の土地だよ」



首だけは動くらしくキョロキョロと当たりを見渡す人王


周りには数人の男女が人王を囲むように立っていた

近い、一見大人しそうな明るい茶髪の女性に人王が声を荒らげる


「おい!キサマッ!この氷をくだけ!」


女性の反応はない、ただ、冷たい目線を送るだけだ


「おい!聞いてんのか!」


「…こんなのが人の上に立つ人物とはねぇ」

この空間に引きずり込んだ人物、フェルがやれやれ…と言ったような雰囲気で声に出す


「いま!私を逃せば許してやろう!」


「うっさい」

囲むように立っていた人物の一人、赤黒い光沢のある長い髪の女性が怒気の含んだ声で返事する


バゴンッ…


その声と共に爆発する人王

その衝撃で氷は砕け、人王はその場に倒れる


「…お前…お前!絶対許さないからなっ!」

地面に這いつくばりながら返事をした女性、セーラを睨みつける人王


人王に向けて歩くフェル


「ちぃ…なんなんだよ!おまえら!

あっちいけよっ!」


どすっ

「うぐ…」


背中を踏みつけるフェル

その目は酷く冷たい

「…こどもみたいにさっきからうるさいな」



フェルが人王を踏みつけたまま

茶髪の女性、ソエルをみる


頷くソエル


「花の芽よ、咲き乱れ、もとある姿に戻しなさいフラワーブレッシング」


ソエルを中心に地面を草が覆い始める


「ねぇ、お前攻撃していいと思ってんの?なぁ?」

強気な口調の人王


「ちっ…バードプロテクション」


舌打ちしながらセーラが呟く、赤い、燃えているような鳥達がセーラから飛び立つ


何匹も


「ホント、おまえらやめろって!」


「コウ、さっさとやろう」

セーラが濃い緑髪の男性に向けて声を出す


「…そうだね、こんなやつとは思いもよらなかった、罪悪感もない」


耳の先が尖っている緑髪の男性


コウが返事をする


「風よ、この声を聞き届け給え、世界を正す力をいま、ここに、ウィンドアナイアレイション」


コウから黒い風が吹き始める


そこ冷えする恐怖を感じるほど、その風は異様だ


その風にあてられた人王は苦しそうに声を出す

「ぐあっ、お前…お前さえ!お前さえいなければ!ボクは幸せに生きることが出来たんだよ!」

ギギギ…と顔を動かしフェルを睨みつける人王


「うわぁ…」

フェルが蹴ると地面を転がる人王

その人王の周りには赤い、吸い込まれるような花が咲いていた


「…ヒガンバナっ」

目を見開きビクッと反応する人王


バサバサっ


人王の周りに赤い鳥達が降りる

鳥達は見定めるように見下ろしている


「コウ、いい?」

「いいよ、ミヨ」

囲んでいた最後の女性、ミヨが返事をする

「狂いなさい、ムーン エクスターミネーション」


どこからともなくとても大きな月が明るく照らし出す

近く、手が届きそうなほどだ


「フワァ、ワァアァ、マァア!」

人王の目が赤くなる


「ばかっ!アホドジマヌケっ!」


人王は立ち上がり四人、ソエルとセーラ、コウとミヨから距離をとる


その先にはフェル


「回復したら許す!回復したら許す!回復したら許すっていってんだろ!」


フェルに向けて拳を振りかぶる人王


「氷弾」


バシュンっ


「アブナイッ」

体を傾け、そのまま地面に伏せる人王


「いじめないでっ」


「…はぁ」


フェルからはもはや呆れの声が漏れる


「一生このまま負けたままで生きたくない!お前に勝つ!」


そう言いながら立ち上がる人王


「なんなんだよ…お前」


「「「「花鳥風月」」」」


四人から揃った声が聞こえる、それは魔法の完成を意味している


「た、助けてくれっ!」


「言ってることがメチャクチャだな」


人王の後ろから迫るは魔法の衝撃波

その衝撃波の後は美しい光景が生み出されていく


人王には違う光景に見えているようだが



フェルを通り過ぎ、走る人王、その口元は何かを必死に呟いているが何か反応がある訳では無い



「くっそ、くっそぉ!」


人王に衝撃波が追いつく



「こんなはずじゃないのにィ」


衝撃波が通り過ぎたあと、人型の灰がその場に残り、黒い風が見えなくなりながらその灰をさらっていった



これが人王フル=ネセトの最後


実にあっけない最後ね


この物語の最後はこんな感じ


そしてこの物語はこれから始まるわ

記されしは最後のお話


ただし、最後であって終わりではない

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