異世界スローライフ[魔物編Ⅰ]
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紅明歴327年7月26日
夏に入ってきたせいからか、暑くなってきた。
この世界も四季があり、俺が住んでる村あたりは日本ような気候だ。
俺も今年で9歳だ。
毎日剣術や魔法の勉強をして友達と遊んで、子供の色恋に沙汰に巻き込まれたりなんだりと普通に充実した生活をしている。
そんなこんなで今日も1日が始まる。
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夕暮れ時前、俺たちは村の広場で話し合っていた。サッカーをしたあとだったので泥だらけになった状態で俺らは話していた。
たわいもない話をみんなでワイワイ話していた。
そして、いきなりカイル言った。
「なぁ、明日森に行かないか?」
みんなは少し困ったような感じになった。
続けてカイル言った。
「森の中に伝説の祠があるらしいんだ。そこに神秘の宝石があって、そこに光がさすと青く輝いてそこに幻想的な世界が広がって、幸運に恵まれやすくなる伝説があるらしいだ。」
ルーとノーラはそれを聞いたら不安が消えたように喜んだ。やっぱり子供はこういう伝説的なものが好きなんだなとおもった。
しかし、ティムは、
「森は魔物がいるから危ないよ、なあ、ロー」
「いや、いいんじゃないかな、俺らは剣も魔法も使えるし。最悪魔物が出てきてもどうにかなるだろ」
内心、俺も魔物のことを気にはしてた。でも、逆に魔物に会ってみたかった。せっかくファンタジーの世界に来たのに 魔法はあるのに村から出れず、魔物に会えないのはどうかという気持ちが最近募ってきたところだった。魔物討伐も10歳からだし、ここ9年間近く魔物を見たことがなかった。村の周りも魔物よけの結界が張られていてほとんど寄り付くことが ほとんどないから余計にだ。
ティムが、でもと言いたそうだった。それもそのはず、剣の修行中に父から魔物の怖さを嫌ってほど教わっていたからである。俺もそれは親から聞かされている。つまり、俺は父の教えに背くことになる。まぁ、バレる前に帰ればいいだろう。
「じゃあ、明日の昼後に集まろう」
俺はそう言い切って解散した。
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紅明歴327年7月27日
今日も毎日の日課である早朝の素振りをしている。今まで欠かしたことがないことから個人的には頑張ってると言える自信がある。
今日の素振りは特に集中してやった。験担ぎじゃないが、少しでも自分ができるということを実感したかったからだ。
素振りを終わったあとは朝食をとってエリシャに勉強を教えてもらう。前半は歴史についてだった。
この世界はもともと十の神達で治められていたらしいが、神間大戦による8もの神が消滅して魔神は封印され、唯一神である命神アストラルが残り今の世界を作ったというらしい。その後は、龍魔大戦が起きて、大陸全土を巻き込んで龍族がなんとか勝利したがもともと数が少なかった龍族は滅びて、魔族も数が減った。その後、蒼雷歴562年に勃発した蒼雷大戦では、魔族が、人間とエルフと獣人族に戦争を仕掛けてき、戦争中盤までは魔族の強さに負け越していたが、第4代アルビオン国王が勇者を召喚し、数多くの犠牲を払ったがなんとか魔族に勝利し、魔族達は西大陸に封印された。それから約400年は魔族の残党が少し出てくることがあったが、ほとんど討伐できていて、平和らしい。
エリシャの説明はわかりやすく、俺もやりやすい。前の世界の子供の頃の勉強をなにかと無意識にやってたからこう意識的に勉強するのは違和感あるが前の世界よりは楽しい。特に歴史や魔法は楽しい。
「じゃあ、次は魔力循環をしてください。集中して」
とエリシャ言った。
後半は魔法の練習だ。まずは基本の魔力循環からだ。体に中にある魔力を全身に巡らせることだ。これが魔法の基本であり、これがうまく扱えないと魔法を使うことをできない。また、循環中は、魔力耐性も上がる。
人族は魔力の扱いが生まれつき上手くないので循環中によく体外に霧散してしまう。こうなると魔力の無駄になる。扱いが雑になりすぎると魔力の暴走につながる。まぁ、あくまで基礎なので戦闘中に循環させ続ける人は少ない。
けど、これを無駄なく行える人は理論上自分の魔力を100%扱うことができ、噂では、周りの魔力を感じることができるようになるらしい。これは誰でもできると昔の賢者は言ってたらしいが、その領域に達している人はほとんどいないという話だ。
俺は15分×3で魔力循環をやった。伊達に5歳からやってるだけはあって、魔力循環は上手だと思う。魔力が霧散する量も少ないし、魔力量の割には持続する。少なくても兄や妹よりは上手い。ただ剣の訓練で魔力を循環操作しながらやってみると5分分持てばいい方だ。そういう場合だと兄や妹の方が持続する。複数属性の人はそれだけ魔法の才能があるということだから魔力量も多い。ちなみに俺は一般的なレベルだ。
「次は魔法の発動の練習をしましょう」
と言われて俺らは外に出た。
外には兄と妹は剣の訓練をしていた。今日は二人は別メニューだった。妹は護身程度に教わるらしく俺とはほとんど訓練する機会がなかった。
魔力循環の訓練が終わったら次は魔法の発動の訓練だ。魔力循環の疲労はほとんどない。集中してできていれば、魔力循環を無駄なくできる。伊達に5歳から英才教育?!みたいなものを受けてるだけのことはある。まぁ、魔力循環を普通にこなすまでに2年はかかって、魔法も1年かけてやってできるようになった。前の世界で魔力というものがなかったからコツが全然掴めなかったからだ。ちなみに兄や妹は俺より数倍早くコツをつかんだが。
「じゃあ、Eランク魔法のサンダーボールからやってみましょう。詠唱付きで」
エリザに言われて俺は頷いた。
俺は詠唱を始めた。詠唱は自分の深層心理に影響を与える言霊でもある。この世界の魔法は自分の深層心理に影響を与える=イメージ力と魔力がしっかりしていれば魔法は発動するらしい。
「雷の精霊よ、稲妻の玉となりて、我が敵を打ち倒せ」
E級魔法のサンダーボールだ。的はそれほどの強度ではないから壊すことができた。魔力の込め方次第では熊すらも倒せるらしい。
次は省略詠唱だ。
「雷の玉よ」
今度は完全詠唱の時と違い一回り小さいボール型だった。的は破壊するほどの威力じゃなかった。まぁ、わかるように魔法適正も普通だ。他と比べれば技術はあるみたいらしい。俺の年でここまで省略できるのはすごいとエリシャは言ってた。サンダーボールを5発撃つぐらいで疲れがきて、15発撃つ頃には倒れるぐらいだ。俺は5.6発撃って切り上げようとした。
「今日はブラストの練習はしないのですか?」
「ああ、今日はやめておくよ」
ブラストとはDランク魔法のことである。威力はあるが、魔力消費量がサンダーボールの4.5発分あるからあまり使いたくない。それにまだ発動する確率も50%ぐらいだから無駄撃ちはしたくない。俺は魔法の練習を切り上げた。そして家に戻った。
家に戻ると母さん《エルモア》が昼ゴハンを用意してくれていた。今日はクリームスパゲッティだ。この世界の食事は前回来た勇者に影響されたものが多い。食べるのが好きだったみたいでパンやハンバーグなど洋食のものが多い。500年前の日本にスパゲティとかなかったから欧米の人だっのかもしれない。そんなことを考えていると母さんが聞いてきた。
「今日も遊び行くの?」
「今日もティムたちと遊んでくるよ」
「へぇー、そんなんだ。どこで?」
俺はギクとした。ルーとかもそうだが、テレパシーというか勘の鋭い人が地味にいる。
「も、もちろん村の中でサッカーなり将棋なんかをね」
おれはバレてんのかなと思ったが、
「わかったわ、気をつけてね、ローランド」
「お友達はかけがえのないものですから友情は大事にしてくださいね」
母に続けてエリシャが言った。
[大事に] そう俺は理解できていなかった。自分がどれほど危険なことにみんなを巻き込んでいるのかを。いや、心の中では理解していても自分の自己中心的な考えで巻き込んでいるのを今はまだ理解していなかった。
俺は昼を食べたあと、自分の部屋でこっそり支度をして、玄関で
「夕方までには戻るから」
と大きな声で言って見つからないように家を出た。
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俺たち5人はこっそり村の塀に集まった。
「みんな、親たちには見つかってないな」
みんなは頷いた。そしては俺は
「魔物が出てきても俺とティムがなんとかするから叫んだりバラバラに散るのは危険だから駄目だ。みんなで行って、みんなで帰ろう」
と言った。
みんなは頷いた。おれは塀に穴を開け、みんなで村の外に出た。
「よーーし、出発だー」
カイルは元気よく小声で言った。
俺とカイルを先頭にルーとノーラを真ん中に一番後ろにティムの順で並び、一応なんかあっても対応できるような感じの並びで、進んだ。
村から出て15分ぐらいして早速魔物にエンカウントした。体長50cmぐらいのグリーンスライムだ。子供の俺らにとっては大きく感じた。
この世界のスライムは最下級の魔物であるが、体は酸で出来ていて、核があるが見えなくて、魔法以外じゃ倒すのは困難な魔物だ。そして、動きはおそいが捕まれば、体ごと溶かされる。体内に入ったりされれば、その時点でこの世からサヨナラだ。
ちなみに、俺は初めて魔物を見れて内心かなり喜んでいた。
みんなはかなり警戒した空気になったが、幸いあっちはまだ気づいていなかった。俺とティムは目配せをした。そして俺は詠唱を開始した。
「雷の精霊よ、光の玉のとなりて、我が敵を打ち倒せ」
俺はサンダーボールを放った。サンダーボールはスライムにあたり爆発した。再生する様子もない。つまり、倒した。初、魔物討伐。感極まるものがあった。魔物倒したからみんなの緊張した空気も緩み、最初の和んだ空気に戻った。
「おーし、じゃあどんどん進んでこうぜ」
「おー」
俺たちは最低限どの声でみんなでワイワイ楽しく進み始めた。自分たちが「死」という階段を登っていることに気づかずに




