第97キロ 少なくても多くてもダメ
「あー……でも確か飽和脂肪酸は摂りすぎると糖尿病や心筋梗塞のリスクが上がるとかいう話があったな。」
「じゃあそれを摂らなきゃいいのでは?」
「ところがどっこい。少なすぎると死亡率が上がってくるんだな~。これが。」
「え?なんで?!」
「脳出血のリスクが上がるのが大きな要因かと。」
「なんでこう、脳とか心臓とか狙ってくるんだ?!」
「狙ってるわけじゃなく、結果的にそれが決定打で死んだって話が多いからだと思うよ。その疾患が出る前から、体のあちこちで不具合は起きていた。けれど死につながらなかっただけって感じで。」
「日頃の行いの結果って感じなのか。」
「必ずしもそうとは言えないけれど……。」
さて、次に進もう。
確か異世界転移する前にテレビとかでも話題になってたn-6系脂肪酸とかn-3系脂肪酸の話。
「えっとn-6系脂肪酸はリノール酸とかアラキドン酸があるよ。」
「必須脂肪酸が出てきたな。」
「リノール酸は植物油に多くて、アラキドン酸は動物組織にあったりするよ。」
「同じn-6系と言っても由来する食材が違かったりするんだな。」
ホワイトボードに軽くアラキドン酸とか書いて話を進めていく。
「次はn-3系脂肪酸。」
「もう必須脂肪酸は出たから用済みじゃないか?」
「用済みとかかわいそう。ていうかあと一つ!!必須脂肪酸がいただろ!」
「あー、あの1つだけカタカナだけじゃ終わらない感じのやつ?」
「αリノレン酸って名前があるんだけど。」
「そうそれ!」
俺が言った名前を聞いて嬉しそうに手をぶんぶん振るメイ。うん、可愛い。
こう、胸の奥、お腹の上のあたりがポカポカする感じ。いっそこの熱エネルギーを生産することで腹の脂肪も燃えないだろうか。
ちなみにEPAと呼ばれるエイコサペンタエン酸やDHAと呼ばれるドコサヘキサエン酸もこのn-3系脂肪酸です。
「で、こいつらは生体内で合成できなくて、欠乏すると皮膚炎になったりします。」
「ビタミンだけじゃなく、脂質の欠乏でも皮膚に影響が出るんだな。」
皮膚は影響が見えやすいからある意味分かりやすいかもしれない。
脂質をたくさん摂って肌にできものが出来たと思い込んで脂質を控える。でもその原因が脂質の欠乏だった場合はそれは悪手でしかない。
「あ!あと生活習慣病たちに予防効果を示したりもするんだ。」
「へえ。じゃあお前はいっぱい摂ったほうが良いんじゃないか?」
「でも油なので。1グラム9キロカロリーあるので。」
「つまり?」
「たくさん摂るとその分太る。」
「あっはい。」
痩せ気味の人とかならある程度とってもいいだろうけど、俺の場合は体重を落とすことのほうが生活習慣病のリスクを下げることにつながると思う。
「それからコレステロール。」
玉子が1日1つと言われたりした成分ですな。
「これは種類の大枠じゃないのか?」
「そうだね。これは成分名。細胞膜の材料であり、性ホルモンやステロイドホルモンの原料。あと胆汁酸の原料でもある。」
「で?それだけ聞くとたくさん摂ったほうが良さそうだが」
「過剰だと動脈硬化とか胆石症のリスクが上がるよ!!」
「やっぱり問題があるわけだな。」
だけど問題点はそこじゃなかったりする。
「実はコレステロールは体内で合成できます。」
「体で作れるんかい!」
「その通り。それで経口摂取するコレステロールは体内のコレステロールの3分の1とか、7分の1とかなんだ。」
「つまり体内で合成されるコレステロールの方が大事ってことか。」
「まあね。」
そういうことが分かったからコレステロールの摂取制限がなくなったりしたんだけど……。
だからと言って食べすぎは良くない。摂取制限がないからと言って食べまくっていいわけじゃない。まあどれくらい食べればいいのかは撤廃される前の元の制限を参考にしてみて下さい。