第96キロ 脂質も大切
カロリー管理は大切だけど、やはりバランスというものは大事だ。
「脂質が一番高カロリーなら、脂質を減らせばいいのでは?」
「理屈としては間違ってないけど、バランスが大切なんだ。しかも俺は炭水化物で太ったタイプだし、血縁関係に糖尿病の人物がいるので家族歴的にもその方法は良くない。」
「家族歴?」
「糖質を体の中でどれくらい処理できるか~とか、脂質をどれくらい処理できるか~とか、食物繊維を消化できるか~とか、遺伝の問題とかも関わってくるからな。」
「先天性の才能なのか……?」
「ある意味?」
いや、体質というものを作るには後天性の行動も関わってくるだろうけど。それでも家族歴は一定以上は大切だ。カルテに書き込む意味がある程度には。
「低脂質で高炭水化物の食事は血糖値や血中中性脂肪を増やしてHDLコレステロールを下げたりする。この状態は心疾患のリスクを上げると言われているんだ。」
「マジか。心臓を狙ってくるとか即死魔法かよ。」
「あと極端に低脂質だと脂溶性ビタミンの吸収が悪くなります。」
「脂溶性ビタミンってA、D、K、Eだよな。それは不味いのでは。」
「不味いんだよ。だから食事のカロリーの20%以上くらいは脂質でとりましょうっていうのがあるんだよ。」
年齢によって30%までだったり25%までだったりするけど。
「というわけで、脂質のお話をします。」
「タンパク質の話はなんだかんだしたりしてたもんな。」
「タンパク質は体を作る上で大切!ってわかって貰えたと思うけど脂質だって大切なんです。」
「さっきもいろいろ言ってたもんな。」
「まず人間は脂質というものを優先的に蓄積します。マジ面倒だよね?そりゃ餓死とか考えたら脂質が大切なのは分かるよ?けど脂質を体につけさせて病気にするとかどうなんだろうね?」
え?自制できない人間が悪い?まあそうなんですけどね。
「実。脂質の良いところを言え。それ悪いところだろ。」
ニジを抱えたメイにツッコまれる。その通りですね、はい。
「えーっと脂質はまず、細胞膜の主要な構成物質です。」
「細胞を作る物質なのか。そりゃ大切だよなー。」
「で、飽和脂肪酸やらn-6系脂肪酸やらn-3系脂肪酸やらコレステロールやらの種類があります。」
「誰だそいつら。」
「一応全部脂質です。」
メイは少し悩んで口を開く。
「タンパク質で言うロイシンとかイソロイシンとかのレベルか?」
「それはタンパク質の中の物質名なのでそのレベルの話ではないかな。そんな決まった分子式が書けるような話じゃないし。」
それよりも大枠なのだと伝えたい。こう見ると結構脂質って面倒だね?
「どっちかというと炭水化物の中の糖質と食物繊維みたいな感じかなー。」
「ふむ。大分類という感じか。」
「で、体の中で合成できない脂肪酸を必須脂肪酸と言います。」
「他のは体の中で合成すると?」
「そうだね。必要なら自分で合成するよ。」
「タンパク質の時も思ったが、錬金術の起源は生命の体の中にあるのではと思えるほどだな。」
「生命は化学反応の宝庫だな。」
俺という存在の中にはいくつもの化学反応が起きていて、そのエネルギーで俺たちは生きているわけだ。
ちなみに必須脂肪酸はαリノレン酸とリノール酸、アラキドン酸です。
個人的になんかアラキドン酸って怪獣っぽくない?って思ってる。怪獣!アラキドンって感じで。