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第9キロ  やれることからやろう

明日はハロウィンだけどカボチャじゃなくて、スイカみたいな水玉が動きます。

 やりたいことは色々ある。優先順位を高い方から並べると


1豚及び玄米の代用品探し

2土壌のヨウ素調査

3栽培所の確認

4油の確保

5牛乳の確保


という感じだ。


しかしやりやすい順番は異なる。一番急を要する1は多分一番難しい。まあ大豆を使えばどうにかなる気がするけど……。やりやすいものからやっていってその間に異世界のもので1をどうにかできればいいんだけど。とりあえず俺はやりやすい2と3からやることにした。


 「この森……というか、光の国の東側は海に面している。一日も頑張って飛べば海に着くぞ。」


メイはこともなげにそう言う。俺は飛べないから少なくとも三日くらいかかりそうだ。


「運動神経はあるデブなんだけどな。」

「運動神経は誰にだってある。」

「デブの割には動ける方だと思うんだ。」


動けるデブ……とは言わない。デブだけど普通の人と同じくらい動けるだけだから。ちなみに得意スポーツは水泳。バタフライまで泳げる。デブだから浮くとか、デブだから沈むとか思った?俺は自分の意思で沈み、自分の意思で浮上できるんだ!!俺は泳げるデブである。


とりあえずヨウ素が土壌に含まれてるか調べてもらった。十分に含まれてる様なので、この辺で作物を育てたり、この辺の塩を使ってるならヨウ素不足の心配はなさそうだ。



次は栽培所の確認である。メイに言えば、リーダーと見て回ると良いと言われた。

なので俺は今リーダーと一緒に栽培所の収穫をしている。せっかくなので収穫しながら作物の確認をしているのだけど……。


「広いよな……。」


結構歩いても先の壁が見えてこなくて体力を思ったより消費した。正確な形は分からないけど1辺1キロメートルくらいある気がする。そして俺は作物の葉っぱの部分だけじゃ何の作物があるか判別できなかった。仕方ないので収穫物を運んだら保管庫にある作物を見せてもらうことにする。うん、作物の種類が知りたいだけならそれで良かったような気がする。とりあえずリーダーに教わりながら水玉を収穫する。はさみを使ってツタを切って……。


――――ギョロリン


「…………。」


水玉と目があった。

水玉の模様の内二つ。それが目玉のようになっていてギョロッとして、瞬きを……。


「目玉だよ!!!」


目玉のようなじゃなくて、め・だ・ま!!モロ目玉じゃん!!

俺は驚いて水玉を思いっきり放り投げた。


――シュルルッ


「ひぇっ。」


放り投げた水玉は落ちる……ことなく空中に留まった。一瞬浮いているのかと思ったけれどそうじゃない。水玉の実から生えたツタが伸びて地面についていた。そして水玉の目玉が俺の方をジロリと見ると、ツタを手足のように動かして、近づいてきた。


「リーダー!!リーダー助けて!!」


俺はバッとリーダーの後ろに隠れた。リーダーは水玉を見て、両手を広げ……そこに水玉を迎え入れた。


(えええー……。)


リーダーは水玉を大事そうに抱えてこちらを振り返った。多分、身振り手振り的に……


「TO・MO・DA・TI……?」


どうやら友情が芽生えた様だ。







「わあ!!新しい使い魔だあ!!」

メイは動く水玉を見て目を輝かせて喜んだ。どうやら新しい使い魔らしい。


「えー……人参以外もあり得るの?」

「あり得るみたいだね!」


メイは頷くと俺に水玉の使い魔をグッと近づけた。


「な……何?」

「この水玉の使い魔!実に名前を付ける権利をあげよう!」

「え?なんで?」

「発見者が実だからね!」


発見者が名前を付けるものらしい。俺に、ネームセンスは……。


「じゃあ……ミズタマンで。」

「みずたまん……。」


どうだ!今まで友達にえーって顔をされたネームセンスだぜ!


「いいな!かっこいい!!」

「え?」

「よーしよし。お前は今日からミズタマンだ!」

「ええ……。」


メイがそう言ってミズタマンに話しかければミズタマンは嬉しそうに目を細めた。俺のネーミングセンスが受け入れられてしまった……。心の中で俺はミズタマンに詫びた。



 結局のところ栽培所で結構な種類の作物を育てていた。ピーマンとかなすとかネギとかほうれん草とか玉ねぎとかジャガイモとか……。とりあえず欲しい野菜があったら外に探しに行く前に保管庫に来ようと思った。ちなみに水玉はこの前俺が採ってきた水玉の株から分かれた物らしい。




 牛乳はメイが牛のモーモーさんにお願いして貰ってきてくれた。やっぱり牛乳はあったんだ。必要なら羊やヤギからも貰えるよ!とメイは言っていた。得意げなメイからはマシュマロっぽい感情が零れていた。個人的にはコッコさんもモーモーさんも自称なのかメイが勝手に呼んでいるのか疑問だ。俺には動物たちの話していることは分からない。


 メイは師匠から引き継いだ研究設備の幾つかで醤油や味噌、豆腐と言った大豆製品を作っていた。大豆製品の幅を広げるのも良いけど……。


(納豆や湯葉はまあ……今度でもいいかな。)


とりあえず今日は乳製品の開発をしようと思った。


「牛乳は……基本的に飲むんじゃないか?まあそこまで俺は使ってないけど。」

「まあそうだけど牛乳があればバターとか生クリームとかチーズとかが作れます。」


メイは不思議そうな表情をした。この世界にあってもメイの近くにあった物じゃないのかもしれない。


「まずはバターが欲しいけど……。」


牛乳を頑張って振ってもバターは出来ないだろう。何かバターづくり体験とかで牛乳っぽいの振ってるけど……多分あれはクリームなんだ。ステップは踏んでいこう。


「最初は牛乳の説明からします。」


俺によるメイたちのための食品講座である。メイ以外にニジとリーダーとミズタマンが席についている。俺の言ってることを理解しているかは謎だが。


「牛乳は88%くらいが水分。」

「まあ液体だしな。」

「タンパク質が約3%。脂質が3%~5%くらい。糖質5%くらい……って感じだ。」


ホワイトボードに書きながら説明する。まあ牛乳の調理特性を説明するならこの中のタンパク質とかを詳しく説明した方が良いし、牛乳飲むとお腹痛くなる人がいることについては糖質について説明した方が良いけど、今回は割愛。


「で、この牛乳から脂肪以外の成分を除去したものがクリーム!!」

「え?たんぱく質とか除去するのか?」

「そうです。」

「勿体ない。」

「本当にな!そっちはそっちでスキムミルク……水分を飛ばせば脱脂粉乳になるだろうし、有効活用しよう。」


俺たちは席を立って実験設備の方へ歩く。


「私が直接やると……タンパク質の分解とかになるし……それは違うんだよな?」

「うん。そういう方向の除去じゃない。俺のいたところでは比重差を使って遠心分離でクリームをとってたみたいだ。」


そう言えばメイは納得したように頷いた。


「確かに油は水より軽いからな。脂肪の多いところを集めたいならその方法で良いと思う。」


そうしてメイは何か地球儀みたいな装置の前で止まった。


「それは……?」

「錬金術で作られた遠心力を操る装置の一種だ。遠心分離も出来るぞ!」


ニジが何か丸いフラスコ的なものに牛乳を移して持ってきた。メイはニジをなでなでして受け取ったそれを装置にセットした。


「これで少し待つぞ。」




 そうして出来たのがこのクリームです。クリームも脂肪の%でいくつかの分類に分けられるけど今回はまあホイップクリームが出来そうなくらいの高脂肪って感じで作ってもらいました。多分高脂肪の方が固まる!!


「で、これを激しく混ぜます!!」


プラスチックっぽい器にクリームを入れて俺は激しくシェイクした。

手と一緒に腹も揺れた。

俺は力尽きた。


「実ー!!」


メイは俺の手からクリーム入りの器を奪った。


「仇はとるぜ!!」


そしてリーダーに渡して振ってもらっていた。うん。最初からそうすれば良かったな。俺たち理系。体育会系じゃないし……。筋肉痛は敵……。

とりあえずそんなこんなでバターは完成した。


「で、この油の塊をどうするんだ?」

「料理とかお菓子作りに大活躍!!」


とりあえず久々に俺がキッチンに立つ。いや、応用が苦手なだけで基本的な調理は出来るんだよ。包丁なら桂剥きも三枚おろしも出来るぐらいの腕はあるんだよ……一応。


「はい。バターで焼いたオムレツ!!」

「ただの卵焼きなのでは……?」


そう言いながらオムレツを食べたメイから黄色い金平糖が飛び散った。はい!今日のおやついただきましたー!


「美味しいだろ?」


卵と出汁なら和食っぽいけど卵とバターとなればグッと洋食らしくなる。トマトをつぶして塩で味を調えたケチャップもどきも横に添える。


「ぐ……!美味しい。」


マシュマロとチョコレートみたいな感情もポロリと零れた。


脂質は必ずしも良いものだとは言わないけれど、悪いものでもない。

とりすぎにより肥満やら高脂血症やらはヤバいものではあるけれど、おそらく戦後日本で多かった脳出血とかの病気は脂質がなさすぎで塩分が多かったために多発していたんじゃないかって考えもある。

何だって食べ過ぎは毒かもしれないけど、摂取が必要なものだってある。今後じゃがばたやらほうれん草のバター醤油いためやらも作ろう。あと小麦粉があればお菓子も作ろう。メイがほっぺを赤くして瞳を輝かせて、感情をポロポロ零して美味しそうに食べているのを見てそう思った。







 バターがあるから油は後でもいいか。大豆と菜の花から油を搾ろうかと思っていたけれど……。とりあえずビタミンB1の確保が大切だ。米の精製所に糠を貰いに行く手段もありなんだけど、精製所は近くの町にあるものではないようだ。水溶性ビタミンだし毎日コツコツ摂りたいんだけどな。


「じゃあ行こうか。ミズタマン。」


俺はミズタマンをお供に森に探索に来ていた。栽培所にもなさそうで、俺の世界にもなさそうな作物を探しに来たのだ。後森の中での土地勘もつけておきたかった。いつまでもメイに頼りっぱなしじゃいけない。


あとビタミンDを意識して魚も獲るつもりだ。一応釣り竿とかは持ってきた。……まあ素人にどれくらいできるか分からないけど。


植物の判別は本当に難しい。特に見たこと無いものについては雑草か毒草かも分からない。


(ビタミンB1は豚肉および穀物の外側に存在してることが多い。)


だから穀物を探せばいいとは思うんだが。まあ、大豆を加工しないで大豆として食べても良いんだけど……。


どうしようかな。とりあえず魚でも釣ろうかな……そう思って川の方に向き直る。

ミズタマンが頑張ってた。

ツタを伸ばして川の両淵に足?をついて川の真上に陣取り、シュピシュピとツタを動かして魚をひょいひょい取っていた。


「わお……。」


ミズタマン強くね?

何気にミズタマンの攻撃力高くね?

今日の収穫は魚です。

ミズタマンはメイの魔力的には使い魔だけど、ある意味では実の使い魔でもあります。

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