第82キロ ヤリッパは倒れた!
どうしよう!どうしよう!
メイのことが好きだって、好きなんだって気が付いてしまった。
顔が熱くって、その辺を走り回りたいような気持ちになる。
メイが俺のために戦ってくれていることは嬉しいけど、顔を合わせることを考えると緊張して仕方ない。
「どうしよう?!」
「下手なことしないでくださいね?変に刺激すると、またチョコレートフォンデュですから!!」
サラマンザラが俺を正気に戻そうと頑張ってくれている。
けど、耳にメイの声が届くたびに胸が高鳴って仕方ない。たとえその声の内容が
「潰す!めっちゃ押しつぶす!!」
「メイ殿!!生け捕り!!生け捕りじゃ!!潰し切るな!!」
「半殺しってことかよ?!」
「そう!粒あんじゃ!粒あん!!」
……大分内容がやばかった。
言葉の内容を聞いたことによって少し俺は冷静になった。
ヤリッパは、小豆じゃないと思う……。美味しくないと思うんです。
「ただで、やられてたまるか!」
ヤリッパの叫びにそちらを振り返る。何をする気なのだろう。
性格が悪いヤリッパのことだ。メイたちを道連れにしようとしているのではないか。
大分焦ってそちらを見る。
大分ボロボロになったヤリッパに、メイが光る魔力を叩きつけている。
そんなメイの防御はマッチョンが担当しているようだ。メイに魔力を叩きつけられているのにヤリッパはその間に何かやっているようだ。
メイも、脳筋な感じなのは良いけどそっちのヤリッパの行動を封じることも考えよう?!
「メイ!なんかヤリッパがやろうとしてる!!」
「知ってる!!それごと潰す!!」
分かっててその行動なのか!
メイの攻撃にヤリッパが遂に意識を手放す。
なんだか分からないけど間に合ったっぽい?
そう思った瞬間
「うわ?!」
地面が揺れる。
顔色を変えたマッチョンがメイを抱え、俺とサラマンザラのことも回収する。
なんだかいつもよりマッチョンの手に力が入っている気がする。マッチョンの顔を見れば真剣そのものと言った表情だった。そんなに不味いのだろうか。
そんなことを思っているとヤリッパが倒れている後方。
地面の割れ目から何か黒いものがすごいスピードで飛び出して行った。
俺たちを気にする様子も無く、それはどこかに飛んでいく。
「……ドラゴン?」
遠くなったシルエットがドラゴンぽい形に見えた気がした。
マッチョンは辺りの様子を確かめてから俺たちを丁寧に下ろした。
「さっきの物体の調査は、ヤリッパたちを光の国に連行してからである。」
と言った。
「いやー……、俺まで助けてもらって……ありがとうございます。」
サラマンザラが苦笑しながらマッチョンにお礼を言う。マッチョンは真剣な顔で
「この両腕に守れるものは、全て守るのだ。……本来はいつだってそうするべきだったのだ。」
と言った。
そこで俺はピンとくる。
どうやらマッチョンは雪が落ちてきた時に俺たちを守り切れずバラバラにしてしまったことを悔いているらしい。
でも、マッチョンは超越者で、何と声をかけて良いのか分からない。
そう悩んでいると、マッチョンの気持ちなんて気が付いてなさそうなメイがサラッと言った。
「そうだな!マッチョンもまだ修業が必要だな!」
マッチョンはメイの言葉に静かに頷いた。
なんだか納得したらしい。