第78キロ 秋野実の自覚
この世界の善悪を判断する前に、ヤリッパ将軍にあって、口車に乗せられていたらそういう道もあっただろう。
知識というものは、それを使って人を殺すことの方が簡単なんだから。
人を生かすために学んだ10の知識。そのうちのたった1つで人を殺せる。そんなもんだ。
食中毒について学んだ。防ぐために学んだ。けれどそれは、逆の方法をとれば食中毒を起こせる知識だ。毎日給食を安全に作るよりも、どこか1日、食中毒を起こすことの方が簡単だ。
「あなたの言っていることは……内容はどうであれ、俺にとっての結果はそこまで悪くない。」
俺以外の誰が死ぬのかは分からないけど。ヤリッパは俺の言葉を聞いて口元を釣り上げる、
「おお!分かってるじゃないか。その知識を俺の元で活かせよ。俺はお前のことを買ってるんだ。」
だけど――――
「俺はあなたより前に、出会ってしまった。」
この世界が素晴らしいとは思わない。
きっと、誰かにとっては辛い世界で、苦しい世界だ。
ゴールデンフェアリーなんてものが存在しても、
感情が形になって飛び出しても、
人間の本質は早々変わらないらしい。
この世界が好きかと言われたら分からない。
俺の世界での、最後の記憶がブラック企業だからその補正で少し良く見えてるかもしれないけど。
それでも、この世界に、大切なものがある。
「俺は、彼女に嫌われたくない。」
これは、きっと自分のためだ。
どうしたって、俺は彼女に嫌われたくなかった。
この世界に来て初めて出会った彼女に。
自分の中の良心とか、損得勘定とか、色んなものはあるけど、一番強い想いがそれだった。
俺が元の世界に帰らなくても良いと思ってしまう理由。
2つの世界の何よりも大切な彼女。
嫌わないで欲しい。
ずっと隣にいて欲しい。
彼女がゴールデンフェアリーだからとかじゃない。
最初に森で出会って、
外国人かと思ったら異世界人で、
初めて感情を見て……居場所をくれて、
感情を向けてくれた。
そうだ、俺は、ずっと―――――――
メイのことが好きなんだ。
短いですがちょっと大切な回な気がするので、ここで切ってみます。メイはメイであの回まで自覚がなかったし、実は実で今回まで自覚がありませんでした。




