第74キロ VSカリッパ
再び竜車に乗って移動していると外からマッチョンの声が聞こえた。
「はあ!!」
一体どうしたと言うのだろう。
外の様子を伺おうとして、急に竜車が止まった。
「竜車責められると面倒ですからね~!二人とも、屈強な戦士が守りやすいように外に出て近場で固まっててください!!」
サラマンザラにそう言われて竜車の外に出る
「「うわっ。」」
竜車を囲むようになんか黒い服の人がいっぱいいた。
「二人に手出しはさせぬ!」
俺とメイの前にマッチョンが立ってくれる。
「これは、これは。光の国、最強の盾と謳われる屈強な戦士殿ではありませんか。」
澄んだ空気の中をよく通る声がした。マッチョンの後ろからメイの手を握りながら、様子を伺う。
「お久しぶりです。」
白い肌に、白い髪。着ている鎧も白とを基調にしている。青年はマッチョンに頭を下げた。
「あなたは、カリッパ殿……!!」
ええっと……カリッパって言うと……。
「雪の国の貴族か……。」
メイが呟く。
そうそう、そうだった!
じゃあこの人がヤリッパと組んでるらしい雪の国の貴族なのか……。確かに肌も髪も白くて雪って感じはする。
「護衛対象は……姉上ではないんですね?」
カリッパが首を傾げる。
「二人の男女……。あなた方がヤリッパが言っていた栄養大臣ですか。」
カリッパが品定めをするように俺たちを見る。
その視線が嫌で俺はメイを後ろに隠す。
メイはニジを抱きしめながら睨むようにカリッパを見ていた。
「良かったら、皆さんを僕のお屋敷にご招待したいのですがいかがでしょうか?」
張り付けたような笑顔でカリッパがそう言った。これは、あんまりよろしくない感じだ。
ついていく訳にもいかないけれど、貴族に歯向かってどうなるのだろうか。とりあえず力づくで連れて行かれそうなことはわかる。
(周りにたくさん人がいるしなー。)
「申し訳ありませんが、我は任務の最中である。行くことは出来ない。」
それを真正面から断るマッチョンはやっぱり強者だ。
「仕方ありません。では力づくでご招待しましょう。ヤリッパが最重要だと言っていましたからね。」
そうカリッパが言った直後に何かが飛んできた。
「うわ?!」
それをマッチョンが弾き飛ばす。
「っ、トントン。」
トントンに呼びかければトントンが大きくなって俺とメイを守るような体勢になった。
俺は戦えないから足を引っ張らないように防御に集中するしかない。サラマンザラも守りに徹するようでマッチョンと逆側に竜と一緒に戦闘態勢をとった。
でもこれじゃあ、守りばかりだ。攻撃手段がないなら消耗戦にしかならない。
「まあ、防御に不安はないからな。適当にやってみるか。」
隣からそう気軽な声がした。見てみるとメイがその手に魔力を集めていた。
そしてそのまま魔力を敵のいるほうに放り投げた。
するとその辺りがバーンと爆発した。
「……意外といけるのでは。」
「まあ、援軍が来る前に片づけたいよな。」
メイが幸い魔力は溢れるほどあると笑った。ちょっと怖いです。
「くっ?!これがゴールデンフェアリーか?!」
情報でしか知らなかったらしいカリッパが顔色を変える。敵戦力を見誤るのは大きな問題だろう。
「うわわ?!」
サラマンザラがたじろぐ。敵の攻撃の強さが増したらしい。
なりふり構わず、こちらを瀕死にしてでも捕まえようと武器をふるってきているようだ。
マッチョンは余裕で防げるけどサラマンザラには辛そうだ。トントンはびくびくしながら時々飛んでくる攻撃魔法を跳ね返している。ミズタマンが何かしたそうにうずうずしているけれど、今してもらえることは無いだろう。
メイの力があればどうにかカリッパの軍勢を退けられそうだ。
そう思っていたらいきなり敵の一部が吹っ飛んだ。思わず隣のメイを見る。
「いや、俺じゃないし。」
「じゃあ、あれは?!」