第72キロ カシッパの覚悟
実君達を見送った次の日、城に来訪者がやって来た。
「お久しぶりです。」
小林さんと、電話越しに聞いた声の主の花子ちゃん。そしてフードの二人組だった。
「……そちらは?」
少し警戒しながら尋ねれば二人はフードをとった。
「!!」
「僕はシタッパ……初代シタッパの孫です。」
「私はカシッパ。弟の罪について告発しに来ました。」
謁見の間に彼らを通す。
「ふむ。久しぶりじゃな。シタッパは元気か?」
「はい。祖父はまだ元気です。けれど昔のように派手には動けない。」
どうしたって年というものはあると彼は言った。私の国の王様より年上だと言う初代シタッパ。今はもう齢100ほどなのではないだろうか。
「そこで孫のお主が動いているのじゃな。」
「はい。ゴリッパの血筋のものが悪を働くことを許せないのはもはや性のようなものです。」
「それで……そちらの……カシッパ殿?ゴリッパ家の血筋のものだとか?」
王が白い髪、白い肌の女性に目をやる。カシッパと名乗った彼女は仰々しく頭を下げた。
「はい。私はゴリッパ家の血を持つ雪の国の貴族……。その長女です。」
「僕はゴリッパ家の血を持つものが全員悪いとは思いませんよ。そもそも初代ゴリッパは素晴らしい人だったという。……それゆえにその血を引くものに驕りが生まれるほどに。」
王は一つ瞬きをした。
「そうだな。その人をしっかり見るべきだ。他の何にも縛られずに……。」
王はカシッパに向き直る。
「それで、此度は何の用かな?」
「私は、現在弟がしていることを知っています。その証拠を持ってきました。」
カシッパはそう言って何もなかった空間に水晶の塊のようなものを出した。その中に閉じ込められているのは……
「手紙……?」
「はい。ヤリッパと弟のやり取りです。直筆のもので指紋や魔力も残渣もあります。」
確かにそれさえあれば王は雪の国と協力してヤリッパたちを捕える命令が出せるだろう。
「……あなたはそれで良いのか?」
王が静かに尋ねる。病気の治療を妨害し、多くの民の命を弄んだ事実は重い。裁かれるとした徹底的なものになるかもしれない。そして彼女の弟はその主犯だ。カシッパさんは目を逸らさなかった。
「構いません。民の命を弄ぶなんて許されない行為なんです。……あの子は、カリッパは……裁かれなくてはいけない。」
そして証拠を提出してくれた彼らは
「そう言えば栄養大臣殿が城にいると聞いたのですが。」
と言ってきた。どうやら小林さんが言ったらしい。小林さん達も実君に会いたいみたいだけど……。
「彼らは雪の国に病気収束のために向かいましたよ。」
そう告げればカシッパさんが目を丸くした。
「私たちの国のために?!そんな、栄養大臣殿太刀に迷惑はかけれません!!私も行きます!!」
「そうだね。そして僕も栄養大臣殿も君も放ってはいけない。一緒に行こう。」
どうやら後を追う気が満々のようだ。
私は静かにため息をついた。
必要なものは貰ったけれどこのどの国にも大きな影響力がある二人を護衛もなしに雪の国に行かせていいわけがなかった。
「マッパン、王様を頼みます。」
「おお!まかせとけ!!」
「私がお二人を護衛します。」
丁度いいからタイミングが合えばヤリッパをとっ捕まえてしまおう。王にヤリッパとカリッパの悪事の証拠が渡ったのだから堂々とやって良いはずだ。私はお二人と小林さん達と実君達を追うことになった。