第7キロ 町に行こう
メイの後を追って森を抜ける。
俺とメイが初めてあった場所から少し行けば確かに町があった。
「わあ……!!」
思わず歓声をあげてしまう。今までメイと森の動物としか会ってこなかったから何となく人間って他にいるのかなーって思ってたし、文明ってあるのかな?って何処か半信半疑だった。でも今、目の前に町がある。しかも何かレンガ造りの街並み。
ヤバい!異世界っぽい。異世界ファンタジーの波動を感じる!!
歩いてるのも耳が尖ってる人とかメイみたいに羽が生えてる人とか、俺みたいに普通の人とか、けも耳が付いてる人とか、鳥っぽい翼のついてる人とかもいる。コスプレじゃなくて本物なんだろうか。すごい。興奮のあまり俺の語彙力はどこかに飛んで行っていた。エルフとかそういう用語は出てこなかった。
「あ!ちょ、ちょっと待って!!」
メイはそんな俺にかまわず町に入って行った。
「さて、蛇の肉は肉屋か魚屋か……。」
「おいちょっと待て。」
とりあえず食用はやめた方が良いと思う。メイはそれに頷くとモンスターの肉とか部位を売っている店に行くことを決めた。最初からそこで良かったと思うんだ……。
何かその店はイメージと違って近代的なスーパー的な感じだった。モンスターの肉とかを扱うので設備はしっかりしているとメイは言った。うーん。どうしてこう世界観がちぐはぐなのか。店に入って買い取りカウンターに蛇の肉を持って行く。番号札を渡されたのでその間に店の中を見てみることにする。
「ユニコーンの角。」
「ヤバそう。」
「実は年に一回生え変わるからそこまでヤバくはない。」
何だろう……もっと命がけで採取するものの様な気がしてた。
「これは?」
「こぶ取り爺さんのこぶだな。」
「おい待て、それは良いのか?」
「こぶ取り爺さんはとある地方に伝わる伝説の生物らしい。」
「……ちなみに効果は?」
「地面を転がすと探し物がある方向に転がる。」
どういう事なのだろうか……。え?何か俺のもとの世界と似て非なる全く別物な話が伝わってないか?
……何か顔が付いた人参的なものが液体に漬けられて売られていたので尋ねる。
「これは?」
「マンドラゴラだな。」
「あ、本当に別種でいるんだ。」
店の奥には生きた魔物も数匹透明なケージに入れられていた。
メイ曰くペット用らしい。そしてそこにも何かめっちゃ赤い人参みたいなのがいた。
「……これは?」
「そいつは忠実な使い魔として有名なやつだ。結構高いぞ。」
「へぇ。」
「どんな困難にも諦めず、主人のために立ち上がる。」
「そうなんだ!」
「その名を―――挑戦人参と言う。」
「挑戦人参……?!」
なんだかんだ言って店の中を見て回って番号を呼ばれた。買い取りナンバー32番様って……何か古本屋とかに本売りに来た気分だ。
「いやー、すごいですね。何か鱗が綺麗にとれましたよ。」
ビタミンA中毒で毒殺したからなあ……。
「なので今回は53万ポンで如何でしょう。」
「……うん。これで良い。ありがとう。」
……ポン?え?もしかしてお金の単位なのかな?ポン……。ポン。緊張感に欠ける気がするのだけれど。
その後色んな店を見て回ったけれどどうやら本当に単位はポンらしい。そしてお金の価値は元の世界の日本とほぼ同じ感じ。1ポン=1円。100ポン=100円の様だ。
翼が生えた人の店で洋服を買って(あれはワンチャン自分の羽根で服を織ってたりするのだろうか?)、何か角が生えた人の肉屋に向かった。
「牛肉、龍肉、ウサギ肉、鶏肉……鹿肉、キメラ肉……。」
どうしよう肉の種類に大きな違いが!!
野菜の方で変なのが水玉くらいしかなかったから油断していた。
「え?豚肉は無いの?!」
小声でメイに聞けば光の国では豚肉は基本的に好まれていないのだと言われた。さて、亜鉛とかは牛肉で良いけど……俺としては是非豚肉も欲しかった。でも無いものは仕方ない。とりあえず牛肉と鶏肉メインに他の肉も買ってみることにした。栄養成分を後でメイと調べてみよう。
お米は町で買っているらしい。一応栽培所でも育ててはいるがメインで食べる用じゃないとのこと。
「光り輝く白い米。光の国の誇り!光の国の主食だよ!!」
どうやら光の国だから白い米が主食らしい。
「……玄米は扱ってないんですか?」
「ははは。玄米なんて、光の国に似合わないだろう!もう流通してないよ。」
メイを見ればメイは不思議そうな顔で頷いた。
「光の国ではもう玄米なんて売ってないよ。精製技術が2年前に確立してね、みんな喜んで白米を主食にしてる。」
2年前……か。俺は静かに頷いた。米は生成された白米しか手に入らない。豚肉は流通がほぼない。どうやら心配すべきはビタミンB1とかだったようだ。
ベッドはメイが使ってるものを参考に選んだ。5万ポンくらいしたけどメイは蛇を倒せたのは俺のおかげだからと言って、それこそポンと買ってくれた。
そういえば町では大豆を見かけなかった。メイに聞けば大豆は彼女の師匠が森で育てていたもので、メイや森の動物は食べるが、町の人は見向きもしないのだと。大豆って結構すごいんだが……。まあ良いや。とにかく今は食材の確保及び、食材の研究をしなければ。
「おおー。」
俺はベッドの上に寝っ転がって腹の肉を揺らしていた。この行動に特に意味はない。
「……何してるんだ?」
メイが不可解なものを見る目で俺を見る。
「揺れてる。」
「……。」
メイが軽く引いてるのが分かるけど許してほしい。俺は俺のベッドが嬉しいのだ。だってこの家はメイの家で何処に居ても良いんだろうけど、それでも自分のスペースは無いようなものだった。それがベッドを買ったことで、ベッドの上は確実に俺のスペースになったと言えるだろう。テンションくらい上がると思うんだ。俺は引き続きベッドを堪能することにした。
町には他にも色んなものがあるはずです。