第67キロ 診療所への来訪者
「生鮮食品を運ぶ部隊が襲われるのなら、生鮮食品を運ばなければいい。けれどビタミンCは生鮮食品に含まれている。」
フィールにいい商品が出来たのだと話す。
「その問題を解決する商品を発明しました!!」
それこそがメイお手製の粉末ビタミンCである。白い粉を見せるとフィールは少しだけそれを舐めた。
「すっぱ!!!」
「酸っていうのは味覚的には酸っぱいものだよ。酢酸も蟻酸もそれこそ塩酸ですらね。」
良い子はたとえ希釈しても劇薬を舐めちゃいけないよ?
「でも、確かに粉なら生鮮食品じゃないから奴らの目をかいくぐれるかもしれない!」
それに生鮮食品ほど嵩張らないし、たくさん運べるだろう。フィールはため息をつきながら
「流石というべきですかね。知識だけでなく、加工して流通方法を探そうとするとは。」
「名ばかり大臣に給料が出ないので商売のことも考えざるを得ないよね!!」
そう言えばフィールは苦笑して、王様に話を通してくれた。
以前は毎日足が痛いという患者さんに対処療法しかできなかったらしい。その後は実さんの栄養学を元に治療を行い、今はこの国で唯一栄養関係の治療もできる診療所になった。そんな小林君は今日も大忙し。そこで働かせてもらっている私も大忙しである。私も看護師なので、仕事はしっかりこなす。けれど
「小林君、ちゃんと休んでね?」
「うん。まあ今は普通の病気とかだけだし大丈夫。」
診療時間がそんなに長いわけでもないし、と小林君は患者さんのカルテに目を通していた。夕方になって診療が終わったので今は業務時間外。私はとりあえずそっとお茶を淹れた。
「ありがとう。」
うわ!そっとやったつもりなのに気づいてくれるとか!!やっぱり小林君はすごい!!本当は手作りのお菓子とかプレゼントしてアピールするべきなんだろうけど……。
そんなことを考えていると診療所の扉が叩かれた。時間外診療でしょうか?首を傾げながら扉を開くと
「すみません。この辺りに栄養大臣が住んでいると聞いたのですが。」
とフードを深く被った人物が立っていた。旅人だろうか。それにその後ろにもう1人。どうやら2人で診療所に来たようだった。
「えっと……どちら様でしょうか?」
声的にまだ年若い男性……少年のように思えるけど。
「実君は知り合いだけど……何か?」
どう対応するべきか悩んでいるといつの間にか様子を見に来てくれた小林君がそう尋ねた。尋ねながら私を庇うように前に出てくれる。そんな場合じゃないのにさりげなくそういう行動をしてくれる小林君にキュンとしてしまう。
「……申し遅れました。僕の名前はシタッパ。ゴリッパの血を持つ者たちの横暴を止めるために来ました。」
そう言って少年は被っていたフードを外した。