第65キロ 動物も植物も大概構成物質は同じようなものだったり
実は結構ネガティブだし、そもそも良い人であっても善人じゃない気がします。
護衛の関係で城に泊まって欲しいと言われた。王様たちはヤリッパ将軍に関しての話し合いをするそうだ。
「メイちゃん!実君を守るのも良いけど、あなたも気をつけなきゃ駄目よ!!ゴリッパ家はゴールデンフェアリーに並々ならぬこだわりがあるんだから!!」
フィールがそう言って俺たちを客室に押し込めて言った。
「初代ゴリッパの仲間にはゴールデンフェアリーがいたらしいぜ。」
良くわかないけど。
メイはベッドに転がりながらそんなことを言った。
「へえ?」
「だからゴリッパ家はゴールデンフェアリーがいたら初代と同じくらいのカリスマになれると勘違いしてやがるんだって。」
ゴールデンフェアリーのカリスマとゴリッパのカリスマは別物だろうに。
「でも俺以上に実は危ないからな!!」
メイはビシッと俺を指差すとトントンとミズタマンの頭を撫でた。
「お前らも実のこといつも守ってくれてありがとうな。また頼むぞ。」
2匹が嬉しそうにしているとニジが自分のことも撫でてと言わんばかりに飛び跳ねた。俺も何か戦う術を覚えるべきだろうか。
思いつくのはこの世界に来て初めてやったビタミンAの中毒のトラップ。俺にあるのは栄養の知識だが、全体的に体の中に物質を入れたりしないといけないから護身術には向かないだろう。籠城している奴らを攻めるとかの方が向いてそう。
城に運ばれる食品にヤバい栄養素を添加するとか。栄養障害、中毒以外に公害もいけそうだけどあんまり考えちゃいけない気もする。
「一酸化炭素とか、鉛とかさー……。」
「ん?」
「体に必要なものと体の中にあるもの以上にくっついてヤバくなるとか、身体に必要な栄養素と似てるから体に取り込んじゃうとかでヤバくなるんだよなー……。」
「お、おお?」
なんで俺、毒性について考えてるんだろう。うーん……。
痩せるための運動を考える面でも、体を動かす系の戦う術を持つべきだろうか。学校で武道の授業……もうほぼ覚えてないな。体重の重さ的にはのしかかりとかが良さそうだけど当たらないだろうし、そもそも攻撃後の隙が大きすぎる気がする。
「うーん。」
とりあえず俺は基礎体力作りのためにベッドの上で腹筋をすることにした。
「やはり筋肉を育てることは大切だと思うんだ。」
「急にどうした?」
「生物というものは大概たんぱく質やら炭水化物、脂質から出来ています。」
「ほお?あれだな。お前が言う三大栄養素とかなんとかじゃないか。」
腹筋を10回して疲れた俺はベッドで天井を仰ぎながら口を動かす。
「植物と動物って見た目が全然違うだろ?動いたり動かなかったり、そもそも細胞からして異なってる。けれどどちらも確かに生物ではある。」
「意外と動くぜ?植物。」
うん。この世界の植物は動くんだった。そいつらに俺の常識が通じるかは分からん。けれど、
「動物も植物も構成要素はほとんど変わらない。」
「ん?」
「動物がたんぱく質、炭水化物、脂質から出来ているように、植物もタンパク質、炭水化物、脂質……まあ後はどっちも水分か。とにかくメインはそれらで出来ているんだ。」
「つまり同じものから出来ているってことか?まあそうでなければ植物を食べたり動物を食べたりして消化して自分の体には出来ないのか。」
メイは相変わらず理解が早い。こういうのを自頭が良いと言うのだろう。
「そうそう。そもそも炭水化物は大概植物産だしね。」
だからと言って植物にたんぱく質が含まれていないわけでもなければ、動物に炭水化物が含まれていないわけでもない。構成物質が同じなのに構成割合が違うだけで存在する姿が大きく違うのだ。俺は何となく何とも言えない驚きと感動を覚えてしまうのだけど、どうだろうか?生物及び栄養に対する萌えもそうだけど、こういうエモさみたいなのもあんまり共感は得られるものでは無い。
「で?実的にはそれがどうした。」
「まあ結局のところ俺の体内の構成割合をどうにかしようかと思いまして。」
「つまりたんぱく質を増やして脂質を減らすと。」
「体重を落とすだけじゃ体脂肪率が落ちるとは限らないしね。」
人間の体というのは便利というか不便というか、余ったエネルギーをわざわざ脂肪に変換して体に貯める機能がある。その機能の結果が俺の体重であり、腹回りであり、歩くたびに揺れるこの腹なんだけど。何にもしないと体は勝手に脂肪を増やしていくのだ。許すまじ。
さて、人間の体の機能に逆らってたんぱく質を……つまり筋肉を増やすにはどうするべきかというと……。
「やっぱり運動は不可欠なんだよなあ……。」
ため息をつきながら腹筋を繰り返す。メイが足を抑えてくれているがメイは軽いから足を抑えられていても足が浮いてしまいそうになる。
筋肉を増やすにはやっぱり食事もたんぱく質を多く含むものにするのが好ましい。それからたんぱく質代謝をきっちり進めるためにビタミンもしっかりとらなければいけない。特にビタミンB6とか。たんぱく質をいくら食べても代謝に必要な栄養素が足りなければタンパク質不足状態になる可能性だってあるんだから。確かたんぱく質の推奨量はを求める式は、窒素平均維持量を消化率で割るんだったか……。
「成人の場合は体重に0.72をかけると出るんだっけ?」
でもそれは通常時の話だし、体を鍛えたいとか筋肉を増やしたいと思うならそれより増やすべきか。そもそも食事摂取基準はトップアスリートとかは対象じゃないし、いや、トップアスリートになりたいわけでは無いな?スポーツ栄養学は専攻してないんだよな……。熱を出した時も怪我をした時もたんぱく質を中心に摂取するべきエネルギーは増えるし、標準より多く摂れば良いか。後、出来れば運動後にたんぱく質を摂取して体にたんぱく質を吸収してもらおう。
俺はもう10回腹筋をして豆腐を食べることにした。