第63キロ 本題の前に
ちょこちょこした説明があったりなかったり。
毎回思うけど竜車ってなんでこんなに高いところを飛ぶんだろうなって思う。
今更ながらに説明すると竜車とは竜が引く車である。牛車みたいな感じだ。竜の上には竜に乗れる人が乗って運転する。車の方には一応着地した後のことを考えて車輪はついているが、飛ぶ時は使わない。浮かぶ原理は魔石らしい。車の下に浮遊の効果がある魔石を埋め込んでいて、竜が空を飛ぶのを感知して石も浮かぶんだとか。でも浮かぶだけで進む力はないため、竜に引かせているということらしい。全部サラマンザラの受け売りだけど。
「竜と仲良くなるのは結構大変なんすよ~。」
とサラマンザラは得意げに笑った。サラマンザラの竜はサラマンザラと長年付き添ってきた相棒らしい。……サラマンザラって槍使いだと思ってたけど実はドラゴンライダーなのでは?
「こいつは俺に付き添ってきたから結構人懐っこいんですよ。」
野生の竜にあったら実さんみたいなのは食べられちゃうかもですねと笑われた。笑い事なんだろうか。
「じゃあメイは?」
俺が食べられるとするならメイはどうなんだろう。
「俺はフェアリー族だからな。幻獣たちの捕食対象にはなりにくい。」
メイは竜車から足をぶらぶらさせながらそう言った。危ないからやめろと言ったが、メイは自分で飛べるから危なくないそうだ。うん!確かにな。
「でもメイもドラゴン肉食べてるじゃん。」
「流通してたら食べるけど、基本的にフェアリー族は幻獣を狩らないんだよ。」
自分たちが狩らずに他の奴らが狩ったものを食べてれば許されるのだろうか……?
「そもそも幻獣は魔力と生命力が密接に結び合ってますからね~。ゴールデンフェアリーに危害を加える幻獣はいないですよ。」
サラマンザラがそう言った。メイはそれに頷く。確かゴールデンフェアリーはすごく魔力が溢れてくる存在だったはずだから……。
「メイの近くにいると元気になるのか。」
納得してそう言えば、それに答えるようにサラマンザラの乗っている竜が嬉しそうに鳴き声をあげた。
「……そいつ、鳴くんだな?」
「いつもは結構無口ですけど、まあ鳴きますよ~。」
そうして城に着いた俺たちはフィールに出迎えられた。
「無事に着いてくれてよかった!!何かあったらヤリッパ元将軍をどうにかしなきゃいけないとこでした!!」
俺たちは王との謁見の間ではなく、比較的小さめのサロンに通された。
「なんだか可愛らしい雰囲気だな。」
この国の王族については知らないけど、お姫様が居たら優雅にお茶でもしてそうな雰囲気のサロンだった。フリルのあしらわれたカーテンやらテーブルクロスやらが可愛らしい。それに全体的にパステルカラーだ。
「ふむ。これは我らの趣味でな。」
聞きなれた声に振り返ればマッチョンとマッパンがいた。久々の再会である。けど
「え?趣味?」
思わずそう言えばマッパンまでガハハと笑って
「そうだ!この場こそが吾輩と屈強な戦士、そして王と3人で定期的にお茶会を行う場所である!!」
と言い放った。
「……。」
うん。お姫様がお茶会しそうな場所とか考えてごめん。この世界の世界観はマッチョンとかマッパンだった。こんなホンワカゆめかわルームでお茶してるのは筋肉もりもりの戦士と海賊、それから雪だるまみたいな王様でした。
「すっごく可愛らしい光景なのよ!」
そんな風に笑うフィールの感性は俺には分からない。メイはフィールの発言を聞いてから俺をジロジロ見て
「確かにありなのかもしれない。」
と呟いた。何がありなのだろうか。
マッチョンとマッパンと王様の趣味なサロン。月1くらいで集まって「我」と「吾輩」と「わし」のわわわトリオでキャッキャウフフなお茶会が開催されいるとかなんとか。