第52キロ トウモロコシ畑と麦わら帽子
「次郎さんから聞きました。私のコンプレックスをどうにかしに来たとか。」
その言葉に頷く。
「誠に申し訳ありませんが、そんなことはしなくていいのです。この村の特産品をお土産にするので、それを持ってお帰りください。」
そう言って彼女は頭を下げた。
「うわ、頭を上げてください。」
「そもそも解決できるかも分かんないし、そんなに気張らなくてもいいよ。しばらく滞在はするつもりだけど。」
メイがそんなことを言いながら椅子に座る。花子さんは一応滞在中の食事は出してくれるそうだ。
「ところで、肌荒れってそれですか?なんか火傷っぽいですけど。」
サラマンザラが率直に花子さんの頬を指差して言う。彼女は頬の炎症を隠すように手で覆い、俯いた。
「そろそろ夏ですから。冬場はもう少しマシなんですが……。」
ふむ。つまり季節によって差があると。まあ血管系の病気が冬場に多いとか多くないとか言うしな。後は栄養素で言うと日本ならビタミンCが良く聞くかもしれない。ビタミンCは季節によって大きく摂取量が変動するという。秋にグッと摂取量が増えるのだ。理由は秋の果物、柿とかをよく食べるからだとかなんとか。閑話休題。
「悪化する季節は夏ですか?」
尋ねれば花子さんは頷いて
「春から夏にかけてです。」
と答えた。火傷のような皮膚炎と春から夏にかけての悪化。
(太陽光に対する炎症……。光線過敏症?)
春から夏にかけては紫外線が多くなるともいうし、ありえそうだ。でも紫外線は専門外だし、そうなると役に立たないな。いや、でもダークエルフって肌の色的には日差しに強そうなものだけど……?そっちの知識はあんまりないので分からない。皮膚に関係あるビタミンと言えばCとDと……悩んでいると
「とりあえずゆっくりしていってください。」
と言って花子さんがお茶を出してくれた。
「あ、香ばしい。」
「なんだろこの風味?紅茶じゃない、麦茶じゃない。」
「そもそも色が薄いですしね~。」
お茶の感想を言う俺たちに花子さんは
「それはトウモロコシ茶ですよ。」
と言った。
「へぇ!トウモロコシってお茶になるんだな!!」
メイの言葉に頷く。まあ俺は聞いたことはあったけど。というか麦茶があるからワンチャンありだとは思う。そう言えば米のお茶もあったような?三大穀物つながりでそんなことを思う。三大穀物とは米、麦、トウモロコシのことだ。そこで俺は思う。
「ここの主食ってもしかしてトウモロコシですか?」
尋ねれば花子さんは頷いた。
「良かったら、トウモロコシ畑を見ますか?」
彼女はそう言って俺たちを畑に連れて行ってくれた。
「おー広いですね?」
「トウモロコシがデカすぎて辺りを見渡せないんだが。」
メイが不服そうにしている。そんなメイにはやっぱり麦わら帽子をかぶってもらっている。うん。夏のトウモロコシ畑で麦わら帽子をかぶった金髪美少女って絵になるよな。後は白とかのワンピースがあれば映画のポスターみたいになる気がする。そんなことを思っていたらメイと目があった。
「な、何だよ?」
メイは少し恥ずかしそうに帽子を深くかぶりながら俺を軽くにらんできた。
「麦わら帽子、似合ってるなって思って。」
そう言えばメイは目を見開いてそっぽを向いてしまった。え?なんか怒らせること言った?慌てているとサラマンザラに肩をポンッと叩かれた。
「この集落をチョコレートフォンデュにしたいんですか?」
何そのセリフ?!しかも真顔で言われた。どういうことなの。
「そう言えばもし栄養関係の病気なら、ここの食事を摂ってたら俺たちも発症しません?」
花子さんに聞こえないくらいの小声でサラマンザラがそんなことを言う。俺はその言葉に口元を緩めた。
「ふははは。そのために用意したものがあるのだよ。」
「なんですか~?キャラまで変わってますけど。」
俺は口でどこぞのネコ型のロボットの、あの効果音を口ずさむ。そうして取り出したのがこちら!
「マルチビタミンの栄養ドリンク~。」
「なんですか、それ?」
俺とメイは密かに研究を重ね、脚気以外の病気にも効く栄養ドリンク的なものを開発していたのだ。まだまだ試作品段階でビタミンの量は十分ではなく、ドリンク自体の量は多く、味は美味しくなく、保存も気をつけないとビタミンが吹っ飛ぶ可能性があるようなものだが、欠乏症の発症くらいは抑えられる……またはかなり遅れさせることが出来るはずだ。美味しくないけど。そう言えばサラマンザラは嫌そうな顔をした。




