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第5キロ  ダイエットの目標設定

今日は仕事の関係上17時頃にあげれなさそうなのでこの時間帯に……。

メイに秤の使い方を習って、その中でも大きな200キロまで耐えられる秤で俺は体重測定をしていた。和食を食べて、運動もいつもよりしていたし、ワンチャン100キロ以下の可能性もあるのではないだろうか。

表示された体重は……110キロ……。


「うん。すごいすごい。短い間で5キロも減量!!」


へそ周りもメジャーをかりて図る。ふむ、105㎝……いや104㎝……?ブラックな職場環境は異世界に来てからと同じくらい腹を絞めていたのだろうか。紙に計算式を書く。


体重が110キロ。身長が154㎝。BMIが……46.4……?え、マジで?


BMI。それはビタミンミネラルインターネット……などでは無く、ボディマスインデックスです。理想的なのは病気の可能性が一番低い22。


あれ?俺のBMI高すぎ?

どうやら早急に痩せる必要がありそうだ。


BMI22を目指すとは言ったが、それはつまり体重何キロなのか。身長(m)を2回かけて、そこに22をかければその数値が出る。曰く約52.2キロが俺の理想体重らしい。ふむ……。

俺はもうひっくり返りそうなくらい上を見上げる。


「現体重の半分以下か……。」


リバウンドも考えて緩やかに減らすべきではあるだろう。


「とりあえずご飯の量を減らそう……。」


俺は皿が無いから適当にメイに渡された金属製のボールに白米を盛って食べていた。思うにそれがいけないのだ。この世界で太る様な要因なんてそれくらいしかない気がした。




 人間ってそんなに太れるんだな。そう言ったのはメイだ。別に悪口でも皮肉でも無く本当にただの感想だったようだ。彼女はこの世界で俺ほど太っている人物を見たことが無いらしい。確かに太った妖精って飛ぶの大変そう。


「別にフェアリーじゃなくても普通、そんなに太れない。」


この世界の者がそこまで食事に興味があるわけでは無いのか、単純に食料が無いのかは俺には上手く判別出来そうにない。


「どこかの人間の貴族が雪だるまのように太っているという話は聞いたことがあるけどな。」


こんな感じで風の噂に聞く程度。どうやらデブは本当に希少の様だ。






 さてカロリーカロリー言っているけれどそもそもカロリーになる物と言うのは限られている。カロリーになるのは炭水化物・タンパク質・脂質である。他にたくさんの栄養成分があれど一番大切なのはこの3つだ。だって俺たちはエネルギーがなければ生きられないのだから。まあ俺は摂りすぎなんだろうけど!


で、この3つ。純粋なものだと大体1g約何キロカロリーになると思う?

答えは1gごとに炭水化物4キロカロリー、タンパク質4キロカロリー、脂質9キロカロリーである。

これが分かるとどんな食材でも何となくカロリーの推測がしやすくなるのだ。メイにこの話をした時


「脂質ってすごいな他の2つと比べて倍以上のカロリーがあるんだな?!」


と驚かれた。その際出た驚きの金平糖はしっかり美味しくいただきました。


 ちなみに俺は脂質で太った奴では無い。糖質で太ったタイプだ。揚げ物も脂身の多い肉も好きではない。むしろ食べ過ぎると頭が痛くなる。俺が好きなのはご飯。それから甘い物!!……糖質の食べ過ぎで太ったタイプなのだ。あ、ちなみにアルコールは7キロカロリーね。俺はほぼ酒を飲まないけど!


 さて俺が52キロまで体重を落とすということは58キロ痩せるということだ。


(……あれ?無理じゃね?いや、諦めるな。穏やかに減量していくんだ!!)


まあ、一か月一キロ減らすイメージで頑張ろう!!

5年弱かかるとか……。早急とはいったい……という感じではあるが、1キロ痩せるごとにリスクも減っていくから、まあ良しとしよう。


で、痩せるならこの歩くたび揺れる腹。そう、腹の脂肪をどうにかしなければいけない。体の脂肪と言うのは体で余ったエネルギーをためる方法なのだ。何かよく分かんないけど体にたまった脂肪は1g7キロカロリーで燃やせるみたいだ。なので、1か月で1キロと言うことは……。


「7000キロカロリー消費すればいいのか。」


ぽつりと呟けば背後でガタッと音がした。後ろを振り返るとリーダーが変なポーズで固まっていた。その後なんか慌てて身振り手振りで何かを訴えてくる。

……うーん。何を言いたいんだろうか。ニンジンの使い魔には口も無いし、目も無い。目で訴えるとかもできるはずがない。でも何か身振り手振りが……


(ふむ。「ええ~?7000キロカロリー?!そんなん無理っすよぉ。そのポヨポヨのお腹もそのままでいいじゃないですか~。勿体ないですよ~。」って感じか?…………。)


……うん。ダイエットの数値が無謀すぎて衝撃を受けられて慰められているみたいだ。

いやいやいや!!確かに58キロ減量って無謀に聞こえるだろうけどな?1か月1キロはだいぶまともな数なんだぞ?7000キロカロリーって言うとすごい数に思えるかもしれないけど30日で割ってみたら約234キロカロリー。そう、一日234キロカロリー。摂取カロリーが俺が必要なカロリーよりそれだけ少なくなれば良いのだ。


「ふーん?それで実の必要なカロリー?ってどれくらいなんだ?」

「うわっ?!」


いつの間にか後ろからメイが俺の手元を覗き込んでいて驚いた。


「実がやってることは俺の専門とは違うからよく分からないけど、とりあえず太ったり痩せたりする原理は何となくわかった。」

「お、おお。優秀だな?」


俺には錬金術なんて全く分かんないからな!


「それで生物が活動するのに必要なカロリーってどうやって求めるんだ?ほら、お前が気に入ってる感情やるからさっさと教えろ。」


メイはそう言うと俺の口にあのチョコレートみたいな感情を押し付けてきた。


「ちょ、痛い!」


美味しいけど、叩き付け方が酷い。そして実はこのチョコレートみたいな感情は一番味に揺れが大きかった。この前はイチゴジャム的な味だったのに今日はオレンジ系のジャムみたいな味がするのだ。


(不思議な感情だよな……。)


同じ見た目でも味に違いがある可能性に気が付いてから、俺はマシュマロも金平糖も味わって食べた。確かに甘みの違いや風味、そう言ったものに違いはあった。しかし、明らかに材料が変わってる様な味がするのはチョコレートだけだった。


「まず俺は身長が低い。」

「フェアリー的には許容範囲だが。」

「フェアリーじゃない人間なんだよなー……。」

「ゴブリン系、トロール系でもワンチャンありだぞ!」

「に・ん・げ・ん!!」


俺はため息を一つつく。


「えっと、何か本とかに乗ってる数値って平均身長のやつを基準としてるんだよ。」

「ほお。つまり身長がそれより低いと数値がずれるのか。」

「うん。平均身長との差が大きいほどずれる。」


だから個別にダイエット計画を立てたりするなら個別に計算した方が良い。


「基礎代謝は計測が面倒だから基礎代謝基準値を使うとして……。」

「計測が面倒?実験道具ならあるぞ!!」


メイはその瞳を輝かせて研究施設を指差した。俺には意味が分からない施設なのであまり触れたくはない。お世話になりたくも無い。僕はゆっくり首を横に振った。メイは納得いかないようで頬を膨らませている。


「基礎代謝基準値は早朝空腹時に計測しなきゃいけなくて、計測するなら朝起こして寝ぼけてる様な相手にやるしかないんだぞ。目は覚めててもそこから動かない状態で測るんだ。」

「ん……んん?」


つまりもと居た世界でやるなら泊りがけの実験である。しかも専門機器を使って、計測する側もされる側も色々注意しなければいけないのだ。とりあえずここでは先人たちの知恵。基礎代謝基準値を利用させてもらう。男性で俺の年齢なら24だったか。そしてここに自分がなりたい体重をかける。


「後は身体活動レベルによって異なる数値をかける。」


その辺りの表は頭に一通り入っているので計算は苦ではない。異世界に来て普通に動いてるけど、基本的にメイの家の周りにしか出かけないし……。身体活動レベルは真ん中のⅡでいいだろう。


「1日2184キロカロリー。」

「何気に多いな。」

「うーん。まあ分かりやすく、2000キロカロリーを下回るように頑張って食べます。」

「そんなに大まかでいいのか。」

「やってみて後はそこから修正するし!」


結局は実践してみないと分からないのだ。






「そういえばメイは何か用事があってこっちに来たとかじゃないの?」


尋ねればメイは思い出したように頷いた。


「この前のカロテノイド系なんだけど、保管方法について相談したい。」

「あ!今行くー!!」


メイはあれから野菜類から色素を取り出す実験をしたりしていた。俺はサプリとか作れそうだな~なんて横で考えていた。メイ的にはカロテノイドはカラフルで色々楽しいみたいだ。


「そう言えばこの前コッコさんに貰った卵からもカロテノイドっぽい成分が見つかったんだが。」


そう言えばその説明もしていなかった。俺たちが卵を食べていたのはトラップに使うためって言うのもあったが、ビタミンA補給の意味もあったのだ。後卵食べるとタンパク質も取れる。しかも料理の幅もグッと広がる。


「それは多分ルテインだな。」

「るていん?」


メイはキョトンと首を傾げた。卵にはレチノールも含まれてるが色素にカロテノイド色素も含まれている。


「水酸基……えっとレシピで描くとOHが多いんだけど。」


俺は紙に化学式を描く。


「カロテノイド色素はカロテンとキサントフィルに大別されるんだ。違いは構成元素。」


メイは興味深そうに俺の描いた化学式を見ていた。


「で、ルテインはそのキサントフィルの仲間だ。」


俺の世界では餌にルテインが含まれていて、それで卵黄を綺麗な黄色にするとかいう話があった気がする。メイは俺の描いた化学式を見て


「うん。これも今後の研究対象だな。」


と言った。ちなみに俺の描いた化学式は研究室の一番いい場所にファイリングされて置かれている。メイ曰く一番成果が出る研究らしい。個人的には栽培所にある人工太陽とかの説明が聞きたい。





 保管庫は基本的に暗くて低温だ。ちなみにこの前の大蛇はある程度の大きさにメイがよく分からない道具で切ってリーダーが冷凍室に放り込んでいた。もはやホラーである。まあとにかく保管庫に保管する分には野菜の色はあまり変にならない。しかし適当に長時間放っておいたものは退色してしまったのだとメイは言った。そんなメイの手には何か白っぽく色が抜けたトマトが握られている。


「カロテノイドの弱点は光と酸化だ。」


長時間光が当たるところに置いておくと分子の形が変わったりして退色したりする。あとカロテノイドは酸化されやすい。まあその特徴故に食べれば人間の体の代わりに酸化されてくれる。老化防止に良いとか言われる所以はここにあるだろう。


「つまり?」

「保管は低温暗所でお願いします!」

「保管庫に突っ込んでおけばいいね!」


でも腐るより前に食べたりして使おうね!!


「食べきれなかったら冷凍したい。」


うん。現在冷凍室には大蛇の冷凍死体があるんですがそれは。

続けてメイは葉物野菜を手に持って言った。ていうかそれってほうれん草?収穫所の確認がしたくなった。


「このまま冷凍していいか?」

「待って!そのままだと退色するから!!」


冷凍は避けたかったが仕方なく俺が折れた。


「バッと湯通しして酵素を失活させてから冷凍します。」


他にも冷凍してから窒素ガスを使って空気との接触を絶って暗所に保管するっていう手もあるけど些か面倒だ。


「かるーく茹でて冷凍だな。覚えた!」

「ちなみにこの作業をブランチングと言います。」

「へえ。お前は本当に物知りだな。」

主に食い物について。メイはそう言って微笑んだ。


メイの家については次回以降詳しい説明が入る予定です。

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