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第39キロ  一通りだけじゃ辛いですよね

 ゴールデンフェアリーは生まれたときからゴールデンフェアリーだ。

金色の髪に金色の瞳。それから魔力があふれる金色の羽。ゴールデンフェアリーは生まれ落ちた妖精の里の共有財産だ。誰が本当の親かなんて誰もどうでも良い。その里のゴールデンフェアリーであることが大切だった。


 彼女は魔力の量も質もゴールデンフェアリーと呼ぶにふさわしいものだった。

素晴らしいゴールデンフェアリーだと里の誰もが喜んだ。

彼女は努力家だった。いつだっていつだって勉強して、自分の魔力を使った何かをなそうと努力していた。けれどゴールデンフェアリーに望まれるような大きな魔法も強大な錬金術も彼女には合わなかった。魔法は小さなものは発動させられるのに大きいものは発動しない。錬金術で強大な兵器を作ることもできなかった。

しかしそれでも人の作った兵器は使えたし、周りの者が彼女の魔力を使うことも出来た。だから彼女はそれでいいと言われた。


ゴールデンフェアリー。ゴールデンフェアリー。とっても尊い魔力の塊。生きているだけでそれでいい。そんな彼女と俺は小さいころから婚約者だった。いずれ里の長になる俺には彼女がふさわしいと父は言った。でもそれは彼女を里にとどめるだけの理由で、彼女を愛することは条件になかった。

幼い俺がそれを思い知ったのは、彼女を愛そうとした時だった。メイは可愛かった。すごく可愛かった。まだ勉強を本格的に始める前から努力家で、好奇心旺盛で。彼女が空を見上げるのが好きだってずっと見てた俺には分かった。だから青い花をプレゼントした。恥ずかしかったけれどメイは頬を染めて花を受け取ってくれた。


「あの子に花をあげたのか。」


食事中、父にそう聞かれた。


「はい。」

「良いことだ。……しかし聞けばお前、青い花を渡したそうだな。」

「はい?」

「どうして金の花じゃなく、青い花にしたんだ。」

「え?」


だってメイは青い花が好きだから。俺の言葉は出なかった。


「ゴールデンフェアリーに捧げるなら金の花だろう。他の色なんて以ての外だ。」


別に俺は花を捧げたかったわけじゃない。純粋に花をあげたかっただけだった。喜ぶ顔が見たくて、メイという少女に花をあげたいだけだったんだ。


翌日、みんなから持たせられた金色の花束を彼女に渡せば彼女は困惑したように眉を寄せた。その表情が、どうしようもなくて、でもその表情が俺の救いだった。









 王都に向かう途中、時に焦って、時にいらいらして、食事をとりたくないと思う俺を小林さんとサラマンザラは叱咤してくれた。


「君は栄養士なんだろう?」

「何食べたらどうなるかとか、あんまりわからないんですけど。あれですか?毎食ドラゴンの肉の塩漬ke

とか、もち豚のソーセージだとまずい感じですか?」


うん。どうしても毎食保存食な肉ばっかりは放って置けなかった。塩分も過多になるし、場合によっては脂肪分だってやばい。そして野菜が無いのはもっとやばい。幸い研究所である大樹の中の畑は相変わらずの速さで成長してくれるので野菜には困らないけれど。困るのは調理法だ。


「野菜スティック。」

「生野菜のサラダ。」

「ポトフどうですか?」


新鮮な野菜は良いと思うんだけどね。


「どうなんですか?!俺たちの野菜のレパートリーヤバくないですか?!」

「栄養が取れれば良いんだろう?なあ?」

「あー……いや……。」


こう考えると家庭料理レベルだったけれどメイって料理上手だったんだなと思う。


「メイの料理が食べたい……。」

「なんなんですか。ないものねだりしても意味ないですよ。」

「うぅ……。」


栄養士的には栄養は大切だけど、やっぱり味も大事だと思う。だって美味しくないと食べたくないし。基本の料理は一応できるはずだけど、俺には経験が足りないのか食材を見ても何の料理にしよう!っていう思い付きが無いのだ。飲食業経験もあるけどやっぱりホールじゃダメなのかな。そこにニジがトコトコ歩いてきた。何か持ってきたらしい。どうやら……レシピらしい。


「ほうれん草のお浸し。ニンジンの胡麻和え。きんぴら。ふろ吹き大根……。」


ちょっとしたお野菜のレシピだった。おそらくメイのものだろう。何かめっちゃ和風だけど!王都への道中の野菜レシピに希望が見えた。

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