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第29キロ  したいことは決まってますから


 「ゴールデンフェアリーよ、どうか知恵を授けてください。」

「そうか。それでは私の重さと同じだけの黄金を用意しなさい。」


そのゴールデンフェアリーは素晴らしい知恵の代わりに黄金を要求しました。


「見返りを求めるなんて!」


ある日ゴールデンフェアリーはその形をした黄金になっていました。たくさんの人が嘆き悲しみました。だってゴールデンフェアリーの与える知識はそんな黄金が足元にも及ばないくらい価値があったのですから。







 いろんなタイプの本を読んだ。

まだまだ足りないと思うけど諸説あるって言うのを念頭に置いて知識を得た。


どうやらゴールデンフェアリーは崇拝の対象に近いものらしい。無償の知恵者としての存在が理想とされるのかもしれない。

そんな自分なりの仮定を立てながらメイを見守る。小林さんが患者の病状を見て俺とメイがその薬を渡す。メイが微笑みながら薬を渡すとそれだけで患者さんたちは安心した表情になる。それはゴールデンフェアリーの名のなせる業なのだろう。


俺たちの指示のもとサラマンザラが王都でも餅ブタの流通を促している。王様がそれを光の国中に広めていく予定なのだとマッチョンが言っていた。ちなみに王様とマッチョンは結構信頼できる間柄で王とマッチョンともう何人かで1年に数回城の庭の庭園でお茶会をするらしい。どんなお茶菓子が出るんだろう。……そんなことを考えてる場合じゃないな。うん。




 「メイ。お疲れ。」


俺に出来ることなんてあんまりないけど、俺のしたいことは決まっている。マッチョンに教えてもらったホットミルクの作り方。メイの瞳と同じ色の蜂蜜を入れてある。


「ありがとな。」


部屋に戻ってもメイの雰囲気はすぐには戻らない。俺が話しかければハッとして雰囲気が和らぐのは二日目から気が付いた。


だから、俺はそれがもっと柔らかくなれば良いと思う。


甘いものは心を和らげる効果がある様な気がするんだ。とりすぎは勿論ダメだけど。

ココア、ホットミルク、葛湯、甘酒。元の世界に似た飲み物があったからマッチョンと小林さんから作り方を教わった。あと自分で考えて作ったりもした。


栄養学的に考えたら全体的にただの糖質だけの飲み物かもしれないけど少量、部屋に戻ってきたときに飲むなら良いと思う。ココアはアルカロイド飲料だけど比較的カフェインとかも多くないし。

カロリーが足りない状態で休んでも回復両少なかったりするし!


まあそれは持論で、その結果がこの腹なので本当に気を付けないといけない。











 とりあえず王のもとで治療を行い、薬と餅ブタが流通することで光の国のビタミンB1不足はどんどん落ち着いていった。栄養不足による病気は、不足している栄養素をちゃんと取れれば結構回復も早い。俺の話を聞いて玄米を見直す動きも出ているようだ。


「王様。そろそろ病気も落ち着きましたし俺たち帰っても良いですか?」


前より距離が近くなった王様にそう尋ねれば目をパチパチされた。どうやら驚かれているらしい。王様の近くに仕えていたフィールが怪訝な表情をする。


ちなみにヤリッパ将軍はメイとその仲間の俺たちを不当な扱いをしたということで謹慎処分を受けているらしい。あと俺たちとの接触禁止令。

その際小林さんは証拠としてメモっていた色んなことを提出したようだ。やっぱり小林さんはインテリイケメン眼鏡だと思う。

サラマンザラはヤリッパ将軍の部隊からは外れて何か新しい部隊に入ったらしい。どっちかと言うと出世らしいので良かった。


「実君。王はあなたたちを国賓として……出来ればこの後も国の重要な……栄養大臣とかの地位を与えるから城に住んでほしいとお考えなんだけど。」


フィールはメイと何かあったのかあの二人は何か気まずそうだ。考えられるのは俺とメイが一緒にいなかった期間。バラバラに投獄されていた時だ。俺に踏み込んでいい問題なのかは分からないので触れないでおく。


「縛られないなら地位は貰えるなら貰っても良いんですけど、そうじゃないならお断りしたいなーと思います。」


いつだって帽子を深く被って羽をしまって町にもあんまり行きたがらなかったメイがそんなものを望んでいるとは思えなかった。


「城にいれば美味しいものだって食べれるのよ?」


この人は俺を何だと思っているんだろう。確かに俺は腹に従い味覚に従い食欲に従い生きているけど。


「俺が一番美味しいと思えるものが食べられなきゃ意味がないですから。」


王様は静かに頷いた。


きっとゴールデンフェアリーのメイには言えない。

小林さんも比較的王様には固いから言いにくいだろう。


だから、俺が言うんだ。


俺が出来る小さなこと。

俺がするのが一番角が立たないこと。


「俺たちはあの町に、あの森に帰ります。研究施設もあそこにあるし、あの環境が一番やりやすいですから。」


笑ってそう言えば王は笑って頷いた。


実は基本的に善人だし、どちらかと言えば良いことをしたいけど、それより自分のしたいことが大切な「ある意味我儘な人」です。

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