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第19キロ  王都からの騎士


 小林さんのおかげで町には活気が戻った。

最近は噂を聞いた他の町の人も来ているらしい。

ビタミンB1のドリンクを作るのもメイが何か色々やってどうにか機械化してくれた。


「やっぱりメイってすごいよな。」

「機械化って言っても魔術と錬金術だよりのまがい物だぞ?」

「それでもすごいよ。」


だって実際楽になるんだから。俺からしたらメイはすごくてすごくて……時たまメイが言う落ちこぼれの意味が理解できない。


(まあ……理解できなくてもいいかな。)


理解したってきっとメイは笑ってくれないだろうし。

そんなことを考えながら今日もゆるゆると暮らしていた。


発酵食品に手を出すのは菌の扱いが面倒なので億劫だ。

とりあえずキノコが採れる場所を地図に示したりするべきか。







「おい!ちょっと来てくれ!!」


小林さんが血相を変えて店に飛び込んできたのはそんなある日のことだった。


「小林さん?!」

「どうしたんだ小林。とりあえず茶でも飲め。」


メイは帽子を被って羽を引っ込めてどくだみ茶を持ってやって来た。一体どうしたのだろう。何かインテリなキャラが焦ってるとあんまり良い事がある気がしない……。


「どくだみ茶……うん。」


小林さんは微妙な表情をしながらもどくだみ茶を飲みほした。もしかしたら結構状況は不味いんだろうか。


「どうしました?幻覚?全身倦怠感?ドリンクでは治療が追いつかない患者が出ましたか?」


ヤバい患者が出たのかと思ってそう尋ねれば首を横に振られた。そういう話じゃないらしい。


「じゃあ何が?」


メイが尋ねれば小林さんは意を決した表情で口を開いた。


「……王都の騎士が君たちを尋ねてきている。」


……は?


「王都の騎士?」


光の国って王都があるんだなーと思った。って、そうじゃない!


「王都の騎士って多分偉い人じゃないですか?俺たちに何の用があるんですか?!」

「そりゃ、正体不明の病に対する治療薬について話を聞きに来たんだろ。偉い人ほど症状が重いって聞くしな。」


確かに食事の炭水化物による食事のカロリーが多い人ほどビタミンB1は必要だけどな!

日本でも確か贅沢病とか呼ばれてたような……。ふと横を見ればメイが俯いていた。


(メイ……?)


「とにかく研究所めいじつの人たちに話をしてもらうしかない。だから君たちに騎士と話してほしいんだけど。」


小林さんが俺たちの様子を窺ってくる。とりあえず、この話に関して一番詳しいのは俺だろう。


「うん。俺が行くよ。」


メイがバッと顔をあげた。


「とりあえず俺が行くから、メイはドリンク作ってて!」


そう言えばメイは視線を彷徨わせた。何か葛藤することがあるのだろう。


「ミズタマンもいるし大丈夫!」


そう言えばメイはおずおずと頷いた。





町に行けば町はいつもより少し騒がしかった。それはどうやら噂の騎士様のせいらしい。町の人は俺を見かけると口々に気を付けるように言ってきた。やって来た騎士様は悪い人ではないけれど、王都の方にはあまり俺たちを良く思っていない人がいるらしい。

王都で開発できないものを地方で開発するなんて信じられないということらしい。そして治療できるなら原因を作ったのもその者たちで、謎の病気を広めたのは俺たちなのではないかという噂まであるらしい。


(想像以上に面倒そうだな……。)


とりあえず騎士様には低姿勢で会おうと思った。








 「僕は王都の騎士、サラマンザラと言います。初めまして。」


そうして出会った騎士様は何か思ったより穏やかな男性だった。背は俺より高いし筋肉もムキムキだけどどちらかというと可愛い感じの顔つきで、口調もフワフワしていた。


「初めまして。めいじつ研究所の秋野実です。なんでも我が所の薬について聞きたいことがあるとか?」


ちなみに場所は小林さんの診療所の1室である。小林さんが休診にして話し合いの場に提供してくれた。小林さんがお茶を出してくれた。何のお茶か分かんないけど緑茶っぽい。結構高級らしいけど、お客様用にちゃんと用意があったようだ。流石インテリな医者!!そんなことを思っていたらサラマンザラさんが何か話し出した。


「実はめいじつ研究所の方に王都まで直接足を運んでいただきたいのです。小林医師もご一緒に。」


やっぱりそう言う話なのか。正直に言って面倒だし、そもそもドリンクを作る施設の問題的にもあんまりよくない。メイを連れてくのも難しいだろうし、メイと離れ離れになるのは……。


「ええっと……王都って遠いんですかね?施設的にあんまり離れたくないんですが。」

「一応僕が空中竜車をご用意したので片道1週間ほどでいけますよ。」


1週間か……。往復2週間。滞在とか含めるともっとかかるだろう。小林さんも俺も行くとして……この町が少し心配だ。もっと皆回復してからならいいんだが、今町を離れると町の人たちの症状が悪くなる可能性がある。栄養ドリンクが薬として扱われ、それに頼り切っているだけでは根本の解決にならないからだ。


「騎士さんって多分、結構影響力ありますよね。」

「え?まあ……多分?」


そしてこの国の法律とかもよく知ってそうだ。


「ちょっとこの町の食生活を改善しましょう。そしたら王都に赴きたいと思います。」

「食生活の……改善?」


サラマンザラはコテンと首を傾げた。


サラマンザラはたくましい感じ。

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