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第18キロ  美味しい感情ってどんな感情だと思いますか?

それからは少し楽だった。

栄養ドリンクを作って小林さんの診療所に持っていく。

で、小林さんが膝蓋腱反射のチェックをして栄養ドリンクを処方する。

自分で売る労力が減ったから楽になった。メイもあんまり人前に出たく無さそうだったし助かったかな。




久々にメイと町にやって来た。

町にドリンクを売ったりしてたから結構町の中のことも分かってきたんだ。


「見てみて!あの店、お菓子屋さんかな。」


前から気になってたアイス屋さんみたいなものを指差す。


「ああ。氷菓子の店だな。」


メイは頷いた。


「……食べたいのか。」

「うん。」


ダイエットしてても食べたいものは食べたい。お八つには大体メイの感情を食べ、きな粉餅を食べる際は食事の量を減らしていた。今日も食事の量を調節しよう。

この際ラクトアイスでもアイスクリームでも構わない。確か日本では明確な基準があるんだけど、この世界では気にしなくていいだろう。メイはため息をつきながらも頷いてくれた。


「感情でアイスって出ないの?」

「出て欲しいのか?」

「美味しそう。」

「アイスって冷たいんだぞ……。絶対良い感情じゃなくないか。」

「でも甘いし……。ツンデレな感情てことかな。」

「ツンデレってなんだ……?」


アイスが感情として出てくるならまん丸の一口サイズのアイスで出てくるんだろうか。


メイはいつの間にかアイス屋さんの前のショーケースを指差していた。


「味は何が良いんだ。」


寧ろ何があるのだろう。


「うーん。」


味は結構な種類があった。


(ちゃんと元の世界っぽいな……。一部を除いて。)


その一部のラインナップはあめいか、闇の遺物、初恋、という感じだ。


(あめいかは……あれか、お菓子の国の特産の何かか。闇の遺物って何?食えるの?何の味なの?闇の遺物味って何なの?……そして初恋である。初恋のイメージで作った甘酸っぱい味なんだろうか。それとも…………感情の味?)


「俺はちょたこ味とスイカ味にするぞ。」


ちょたこって何?!

お、俺は……俺は……!!


「牛乳とチョコレートで。」


無難なものにした。





 アイスといっても何か軽くシャーベットっぽい。もしかしたらジェラート系なのではないだろうか。クリームが町に流通しているかはよく分からなかった。けど美味しいから良いとする。アイスを食べるのは久しぶりで何となく感動する。


「美味しい。」


ふと横を見たらメイが柔らかい笑みを浮かべて俺の方を見ていた。


「何?」

「いや、美味しそうに食べるなーと思って。」


ふふっと笑ったメイからチョコレートの感情が零れた。そのままアイスで受け止めて食べる。


というか何かナチュラルにアイス、ダブルを頼んでた。多分こういうのがダイエットの敵なんだよな。出されたもの全部食べるとかアイスダブルにするとか、つい量が多い方選んじゃうとか……そういうの。


「そう言えばちょたこって何?」

「お菓子の国の名産品だな。あめいかみたいな感じ。基本的にお菓子の国以外では火を通したりしたちょたこが食べられている。」


……たぶん察するにチョコなたこなんだろう。お菓子の国なら生チョコなちょたこが食べられるんだろう。……変なところでファンタジーである。


そして今日のメイの感情も美味しい。

今日のチョコは中にはチョコソースが入っているようで噛めばとろりとしたものが溢れてきた。


ちなみにミズタマンとリーダー、ニジは今日も町について来ている。






「あ、実君じゃないですか。」


感情屋のフィールが後ろから声をかけてきた。バッとニジとリーダーが警戒するのが分かる。


「実。誰だ?この人。」

「え?あ、この人は感情屋のフィールさん。」


そう言えばフィールはメイにウインクした。


「はーい。私はフィールです。よろしくね!」

「感情屋さんか……。俺はメイだ。」


メイはそう言って軽く頭を下げた。


「メイ君は小さくて可愛いですね。実君の仲良しさんなんですか?」


フィールは軽く膝を曲げてメイの顔を覗き込もうとした。


「あ、すみません。メイ、恥ずかしがり屋なので。」


何となくそう止めればフィールはすぐにごめんねと言って顔を離した。


「メイ君はフェアリー族なんですか?」

「まあ、はい。あと、すみません。俺、一応女子です。」

「わ、重ね重ねごめんなさい!お詫びにこれどうぞ。」


フィールはそう言うと手にポンッとキャンディを出した。

緑のセロファンに包まれたそれをメイは包みから出してそのまま食べた。メイが抱きかかえているニジが何やら軽く手足をバタつかせているが、気にしないらしい。


「あ、美味しい。」


メイ的には美味しいらしい。


「そっか。メイちゃんは真っ直ぐそうな子なんですね。」


フィールはそう言うと俺に耳打ちした。


「君が美味しいと思う感情はメイちゃんのなんでしょう。君に向けられた感情だし、君が向けられたい感情だもんね。」

「は?」


フィールはクスッと口角を釣り上げて笑った。


「どうして実君がメイちゃんの感情を美味しく思うのかちゃんと考えてみたらいいんじゃないかな。」

「え?」


フィールは俺から離れてパンパンと手を叩いた。


「とりあえずこの町を離れる前に会えてよかったです。」

「え?この町から出るのか?」


メイが首を傾げる。


「そう言えば以前旅人だって言ってたような。」

「はい。でもこの国、この町は何か元気になってきたけど他の町は微妙だからなあ。他の国に行っちゃうかもしれないですね。」


フィールはそう言うと


「またお会い出来たら!!」


と言って去っていった。






「感情屋かー。」

「珍しいの?」

「まあまあ?」


メイは普通な感じだけどリーダーとニジは何やら不服そうだ。


なんか「お前ああいう身長高いお姉さんタイプがなの?」みたいな雰囲気を感じる。

別に俺はあの人のことそう言う風に思ってないから!!

ニジ達に向かって身振りで否定を伝えている内に俺はフィールに言われたことを普通に忘れてしまった。

一応町へのお出かけ回のつもりでした。

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