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第15キロ  大豆の生産量を増やそう!

今回あの頭文字Gな虫が出て来ます。苦手な方はすみません。

「そういえば結局ビタミンB1って何なんだ?」


メイはビタミンB1の抽出作業をしながら俺にそう聞いてきた。確かに化学式は渡してあったけど、詳しい説明はしていなかった。


「ビタミンAを覚えてる?」

「あの夜盲症に効く毒性の高いビタミンだろ。」


まあ間違ってはいない。


「ビタミンAは化学名はレチノール。ビタミンB1にも同じような名前があるんだ。」

「その化学名ってやつか?」

「うん。ビタミンB1の化学名はチアミン。糖質のエネルギー代謝に関与するビタミンだ。」

「糖質のエネルギー代謝?」

「えっと、ご飯とかパンとかそう言うのを食べて体の中でエネルギーにするのに必要ってこと!!」


メイは不思議そうな表情で頷いた。


「なんか糖の代謝を図にしたりすると3回くらい出てくるんだよね……。」


俺は学生時代に習った糖の代謝の図を思い出した。


「何か大事だってことは理解した。」


まあ不足するとご飯食べた時に上手く代謝出来ないのだ。特にいっぱい食べたならその分多く必要になるわけだし。


「まあ仕組みを知っていても、どうすれば予防できるか分かっていても、伝えられないんだよな……。」


文化というのは難しい。そこにこだわりやプライドも混じってきて本当に難しい。白米の精製技術を喜び、白米を誇りだと謳う人たちに玄米を食べろと言っても伝わる気がしなかった。








 「畑を!広げる!!」


人工太陽は素晴らしい。異世界なせいもある気はしてたけど短いと1週間くらいでここの作物は実を結ぶ。俺の世界より明らかに成長スピードが速い。でも別にそれは自然なことでは無く人工太陽の効果の一つだという。人工太陽にはいくつかモードがあり、そのモードの作物育成スピードアップモードを選んでいるそうだ。


でもとりあえず……。

「この厳重装備は何なんだ?」

ヘルメットに銀の腕輪。魔力の込められた皮の鎧。正直腹が締め付けられてヤバい。メイが呆れながらズボンにゴムを通してくれたんだけど……。きついものはきついです。多分後でゴムのところが赤くなる。


「栽培所の下には更に地下があるんだ。それでそこも畑として使えるみたいなんだが……。」


なんでも地下は何階まであるのかよく分かってないが、一番奥深くには何かやばいものがいるらしい。

メイの師匠が何かやらかして一番地下に放置されてるとのことです。

本当にメイの師匠って何者なんですか……。頭の中でイメージの山姥が包丁を舐めているんだけど。


「というわけで地下は封鎖してるんだけど、使わないと間に合わないから踏み込むよ!!」


リーダーとニジを先頭に人参の使い魔10匹くらい、それからミズタマンも集合している。

そっか、人参の使い魔結構いたんだな……。

ちなみにメイの格好はいつも通りの格好だ。ただし何か金色に輝く石のついたネックレスを付けている。俺はメイに渡された鉄パイプのようなものを持っている。うーん、バールのようなものとかでも良かったんだけど。


(まあリーチがそこそこあるから良いか。)


メイはあの蛇を解体した時の刃物を持っていた。どうやらこのよく分からないもの、レーザー剣みたいだ。何か小さい銀の筒をメイがいじると光る剣の部分が出てくる。剣の部分もメイの羽根と同じように金色に光っている。


「その剣、カッコいいね。」

「んー……。そうか?」


メイは微妙な表情で剣を見つめた。


「まあ明るいし、便利かな!」

「そういう問題?」


懐中電灯代わりみたいなこと言ってる。





とりあえず家に鍵をかける。それで人参を数匹研究室に置いていく。完全に家を空けるのはちょっと不安らしい。俺とメイはそっと地下に降りた。


うん。暗い。

光源はメイの羽根とネックレスと剣だけだ。

いや、思ったより明るいな?

メイを中心に照らされた地下は地面は土みたいだけど、何か荒れてた。というか……


「メイの羽根から鱗粉みたいな粉が落ちてる……。」

「ん?そう見えるかもしれないけど、実際は魔力の光だな。」

「へぇ……。」


それを見ていたら、何か視界の端に黒いものがよぎった。


「ん?」

「あ。」


人参の使い魔たちが散って何か足をじたばたさせている。まるで何かを踏みつぶそうとしているようだ。


「さて……。」


メイは荷物から何か黄色いボールを取り出した。


「それは?」

「ああ、人工太陽だ。」

「それが?」


何かおもちゃのボールみたいだ。太陽って感じはしない。メイはそのボールみたいなものを手の間に浮かせた。毎回思うけどメイの手の上に物を浮かせる技術ってどうなってるんだろう……?魔力でどうのこうのしているんだろうか。


メイが優しくボールを撫でる。そうしてボールがパッと姿を消した。と思えば地下がいきなり明るくなった。


「設定完了!!」

「ひっ?!」


明るくなったからそこに何がいたのか分かってしまった。


「頭文字G……!?」

「あれはかぶり虫だ。」

「かぶり虫?!」

「正式名称ごきかぶり。」

「やっぱり頭文字Gなあいつじゃん!!」


俺の世界でもあまり知られていないかもしれないけどあいつの正式名称はごきかぶりです。


「ニンジンたちに駆逐してもらって後で集合フェロモンを打ち消す薬品をまこう。」


そう、あいつらは集合フェロモンを出す。潰した死体からも集合フェロモンが出るのだ。だからメイはそれを打ち消す薬品を使うのだろう。この調子だと更に下の階にもこの頭文字Gはいそうである。他の魔物とかはいないようだったので俺たちは地下1階に戻った。


「使い魔と人工太陽を使って大豆を収穫するのに10日くらいかかるかな。」

「それでもすごく早いと思う。」


まあ原材料の供給が安定すれば少しは安心だろう。乾燥させた大豆は日持ちも悪くないし、利用法はいっぱいあるし。地下の整備が終わるまで俺たちは待つことにした。

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