第118キロ 想いの伝え方
ドラゴンが言う、とか「」を使っていたりしますが、闇のドラゴンは音としては喋ってません。何言いたいか分かる程度のテレパシー的な感じでメイと会話してます。
元の世界に帰れないという事実を知って、精神的にちょっと弱ってるところに「私がいるよ。」とか、なんかいいセリフを言ってしまえばよかったのに。そんなことを伝えてくるのは闇のドラゴンだ。
「そんなことしたくない。」
「あなたの場合は本心でしょう。」
いや、確かに本心だけれども
「……先に言われたし。」
メイがいれば、大丈夫だから。
俺がそういうことを言う前に実がそういうことを言ったのだ。……敵わないなあとも思う。
「無自覚にしても脈無しは多分ないから、告白しても良いと思うんだけど。」
闇のドラゴンがそんなことを言ってくる。
「期待させるだけさせて、そういう風には見れないとか言われるかもしれないじゃん。」
不安なことを口にすれば闇のドラゴンにも刺さることがあったのか、微苦笑を返された。
「寿命にしても、突然の事故にしても、事件にしても、病気にしても、命は簡単に尽きるから。」
闇のドラゴンが遠くを見つめてそんなことを口にする。
「元の世界に帰れなくても、いつ居なくなってしまうかなんて分からないじゃないか。心なんて、命が尽きなくても変わっていくものだし。」
「……つまり?」
「他の奴が実に告白して、実がそいつと付き合うことになることもあり得るんだよ。」
「っ……。」
もしも実が、他の誰かと……その恋人になったり、結婚したりしたら……きっと今まで通り一緒に研究所に暮らすことも出来なくなる。それで、俺より誰かを優先して、その相手とチョコレートの感情を渡しあうんだ。
「おやおやおやおや。落ち着きなさい。」
闇のドラゴンに言われて顔を上げるとたくさんの悲しみのドロップが落ちていた。感情が溢れすぎてしまったようだ。
「想いを伝えれば、叶う可能性もあるのだから」
「でも関係が壊れる可能性もあるだろう。」
「動かなければ他の誰かに取られる可能性も、実やメイが居なくなることもあるぞ?そうなる前に伝えたいとは思わないか?」
「……。」
思う。
思うけれど、勇気が出ない。
大切な関係だから、大事な気持ちだから、動かすことが怖いのだ。
闇のドラゴンはそんな俺の様子を見て
「まあ、嘘じゃなければ良いかもしれないな。」
と言い出した。