第112キロ シタッパ再登場
メイと研究を進めていると魔石にサラマンザラからの連絡が入る。なんでも干しシイタケは他の町で作っているからそこから陽光町に医薬品扱いで輸出することになるらしい。これで効果が出れば緊急性はぐっと低くなるだろう。
俺とメイは今回は現地に行かずに研究所で研究することにした。とりあえず地下で栽培できるシイタケを加工するのが一番楽な気がする。
「でも結局、根本原因を解決しなきゃいけなさそうだよなあ。」
「その辺はマッチョンとか、王国騎士団とかの仕事だろ。」
まあ闇のドラゴンをどうにかするなんて確かに管理栄養士の、栄養大臣の仕事じゃないな。
だけど
「こんにちは。雪の国以来ですね。」
「「シタッパさん?!」」
キュウリの精霊馬に乗った彼がいきなり訪ねてきた。
「一体どうしたんですか?あ、シイタケのだし汁飲みますか?」
研究のために大量にあるだし汁を勧めてみる。お茶は高級品なので相変わらず置いてない。一応もち米と国からもらってるお金でお茶も買おうと思えば買えるんだけど。
「シイタケのだし汁……。」
シタッパがきょとんとするので俺は苦笑して水を出すことにした。
「僕はゴリッパ家のしでかしたことを収めるために動くことが多いんです。」
以前も聞いたような話だ。
「それで今回はヤリッパが封印を解いた闇のドラゴンをどうにかするために動いていました。」
「お疲れ様です。」
「あなた方の干しシイタケのおかげで住民の身体的な体調不良の一部は改善に向かっています。」
あーつまり精神的な体調不良とかは治ってないんですね?まあ朝が来なくなったら精神異常ぐらいきたすかもしれないけど。
「良かったです。俺精神科医じゃないんでこれ以上は何もできませんが。」
俺の言葉にシタッパが頷く。
「ええ。何をしてもそれは一時的なものにすぎません。根本を解決しなければいけないのです。」
「それは、闇のドラゴンを討伐するということか?」
メイがニジを抱え、リーダーが見守る中尋ねた。いや、リーダーは見守るというか、目が無いから何とも言えないけど後ろに背後霊みたいに立ってるだけなんだけど。
……話がそれたな。闇ドラゴンは町1つをその影にできるほど大きいはずだ。討伐も相当大変なんじゃないだろうか。
「あのドラゴンの封印を、どうしてヤリッパが解けたんだと思いますか?」
「え?」
突然尋ねられて驚く。どうやって……?
「なんか秘密を知って呪文とかでこう……?」
適当な想像を言う。そんな俺を見てシタッパは苦笑した。
「今回闇のドラゴンが大人しくしているのは、封印が合意の上でなされたものだからです。」
「合意の上での封印?」
「闇のドラゴンの友人が、死んでしまう時に闇のドラゴンを残して寂しがるといけないからと、ドラゴンと話し合って施したものだったのです。」
いつか未来に、闇のドラゴンとまた友人になれる存在が現れることを願っての封印。
「闇のドラゴンも被害者ですね。」
悪いのはヤリッパ。それは間違いない。
「それで?そのドラゴンを封印した友人とやらは誰なんだ?」
メイが少し目を細めてシタッパを見た。
「初代ゴリッパに力を貸した、当時のゴールデンフェアリーです。」
どこかで察していたのだろう、メイがため息をついた。俺はというと、その言葉でようやくシタッパが研究所に来た理由を察した。