第107キロ あんまり聞いたことない物質
「で、ヨウ素ですよ。欠乏症は甲状腺腫。」
「唐突に欠乏症。」
「まあ、ヨウ素と言ったらこれ!ってぐらいのポイントだから。」
土壌にヨウ素が含まれてるかどうかで大分摂取できるかどうかが変わってくるらしい。地域差がすごいので国によってはヨウ素を塩に添加している国とかもあると聞いたことがある。
日本は島国なのでそこのところは比較的大丈夫だとか。地域差(海が近くにあるか)って感じらしい。
「体内の7、8割は甲状腺にあるよ。」
「で、何をしてるんだ?」
「甲状腺のホルモンの原料になってます!」
そう言えば光の国のヨウ素はどうなんだろう。海産物が流通してるっぽいし、ぱっと見甲状腺が腫れてそうな人もいないから大丈夫なのかな。
「セレンもヨウ素と似た感じで土壌にないと欠乏症になったりするよ。ちなみに欠乏症の名前はケシャン病。」
ケシャンは漢字だったけど、漢字は覚えてないのでカタカナで言わせてもらおう。
「体内でタンパク質の構成とか、抗酸化反応で使われてるよ。ただ、元々結構毒性が強いから……うん。」
気楽にサプリで摂っちゃえ!とかはやめた方が良いと思う。昔から栄養素というよりは毒として知られてきた系の元素だし。摂取量もμgだから。g単位で摂ると大分ヤバい症状引き起こすから。
重症の胃腸障害とか急性の呼吸困難とか心筋梗塞とか腎不全とか。慢性の過剰症も下痢、疲労感、末しょう神経障害とか色々あるし。
「次は」
「クロムだな。」
「そうそうクロム。クロムは欠乏症は糖代謝異常。クロムが欠乏するとインスリン作用が低下するかららしいよ。」
クロムが少ない人は糖尿病とか動脈硬化が起こりやすいとかなんとか。
「インスリン?」
「血糖値を下げるホルモンって感じかな。」
簡単に言えば。
「普通の食生活ならあんまり欠乏も過剰もないかな。ただ、クロムメッキ……人工的に作った六価クロムでは中毒が起こったりしたらしい。」
「六価クロム……それ以外のクロムもあるのか?」
「普通に自然界にあって、食べて摂取してるのは三価クロム。六価クロムは毒性が強いから皮膚炎とか肺がんとかを引き起こすこともあるとか。」
「いきなりがんか。確かに毒性が高そうだ。」
「最後はモリブデン。」
「モリブデンか。俺の包丁はモリブデン鋼だったような気がするが。」
「いいよね。モリブデン鋼の包丁。錆びにくいし欠けにくい。モリブデンは体内では酵素の構成物質として頑張ってるよ。」
「酵素か。で、欠乏と過剰は?」
「普通の食生活をしてればどっちもほぼ起こらないね。他の金属に比べれば毒性も弱いから過剰症にもなりにくいんだ。」
「それは良かった。なんかセレンとかクロムとか一歩間違えれば毒薬感半端なかったからな。」
「まあ実際重金属は毒性が強いのが多いからなあ……。」