第106キロ まだ聞いたことはある物質
「ついでに他の微量ミネラルも知っとく?」
「ああ、まだあるんだな。」
「銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンかな!」
銅以外は物質としての知名度が低そうだ。
まあ錬金術師のメイはあっさり飲み込んでそれが必要なのかとか頷いてるけど。
俺初めて聞いた時特に後半三つとか初対面?!って思ったレベルだよ。まあ元素を覚えるときに名前だけは知ってたけど。
「銅……か。金属として鉄と銅と銀と金はなんかこう、有名どころな気がするよな。」
「ねー。工業用とか、商業用とか、美術用とか色々使われてるイメージあるよな。」
石、青銅、鉄……こっちは歴史だな。うん。いや、今言った代表的な金属は俺の世界では人類の歴史に深く関わっていたけれども。こっちの世界ではどうなんだろうね?魔法とか錬金術があるから人類の発展もきっともっと違うんだろうな……。
「まあ良いか。銅はヘモグロビンを合成するのに必要なんだよね。」
「ヘモグロビンか。あれだよな、酸素を運ぶ赤血球の赤い色素。」
「そうそう。へモブロビンには鉄が必要だけど、銅はいらない。作るのには必要だけど成分としては入ってないんだよね。それで欠乏症は貧血です。」
「ああ、ヘモグロビンが合成できなくなったりするのか。」
「ちなみに節足動物とか、軟体動物に血が緑っぽいやつがいたりしません。」
「ん?いるぞ。巨大エビーンとかはさみクラブとか。」
「それ魔物じゃないですか?」
まあいっか。
「血が緑の生物はヘモグロビンじゃなくてヘモシアニンで酸素を運んでたりするんだ。これは鉄じゃなくて銅を使った呼吸色素だね。」
「どうして血は赤いのか、って問いへの答えになるわけだ。鉄は錆びたら赤色に、銅は錆びたら緑っぽくなるからな。」
「そうそう。」
ちなみに赤貝とかゴカイとかはエリスロクルオリンとかいう鉄を使った呼吸色素だから赤いらしいよ!
「過剰症は?」
「うーん。急性中毒はあるけど慢性は……先天性銅代謝異常のウィルソン病くらいかな。」
「マンガンは消化管からの吸収率は約3~5%らしいよ!」
「少ないな?」
「……。」
「……。」
「……。」
「……え?」
「……。」
「で?え?それで終わり?!マンガンについてなんかないの?!」
俺としてはマンガンと言えば、なんかチェッチェコリから始まるガーナ民謡の日本語版が浮かぶんだが。なんかCMで二酸化マンガンとか歌ってると思ってた。ちなみに聞き間違いだ。
「いや、骨の形成とか消化を助ける働きがあるよ。」
何しろ必須栄養素なので。
「あと不足すると疲れやすくなったり、成長異常を起こしたり平衡感覚が狂ったり色々あるって。」
「大事じゃん!!」
「大事だけど、天然の水とかに元々含まれてるから普通に生活してるとほとんど不足しないんだよね。」
「そういうことか。あまりお前が重点を置いてないのは。」
「イメージ的にはパントテン酸とかビオチンに近いイメージがあります。」
「誰だそいつら?!」
「ビタミンB群。普通の食生活ではあんまり不足しないビタミン!」
パントテン酸なんてどこにでもあるとかいう言葉が由来らしいしね。
「マンガンにも中毒症は錯乱状態とか、結構こう、神経?感情?感覚?頭に来る感じの症状が多めかな。」
「頭にくるとは……。」
「怒るって意味じゃないからね。」
「分かってる。」
マンガンは酸素を吸着する力が強いから脱酸素剤としても使われてたりする。