第10キロ そうだ、お餅を食べよう
ちょっと仕事の時間が変則的だったので投稿時間がずれました。すみません。ちょっと明日、明後日もずれる可能性があります……。
新しいものを探すよりあるものを加工するほうが早い気がする。
なんたってメイは錬金術師なんだから!!別に、探索の才能が無いことに絶望したわけじゃないんだからな!!
……うん、探索って向き不向き、運もあるし仕方ないよな。
ビタミンB1は水溶性ビタミンだし、豆腐にしたり茹でちゃうとビタミンB1は逃げてしまいそうだ。蒸すか炒るか……。いっそ潰してきなこという手も……。あれ?
「そう言えば砂糖ってどうしてるの?」
「さとう?」
おっと、どうやら砂糖じゃないらしい。料理に甘みがあるから砂糖的なものを使ってると思ったけど。
「ああ、樹液だな。」
「樹液!!」
つまりメープルシロップとかの方か。一体どの木から摂れる樹液なのだろう。
「え?この木だぞ。」
「え?」
メイが指さしたのは1階の壁。外装が木の家、または木をくりぬいて作った家だと思ってたけどどうやらこの木はバリバリ現役らしい。
光合成もするし何か春には花が咲くし、秋には実がつくし、紅葉するし、木の内側に樹液も出るそうだ。しかも葉は人間には分からないけど魔物とかが嫌う匂いを出してるらしい。何この木、高性能。
「この木は俺と契約してるんだ。」
メイはそう言うと嬉しそうに木の壁を撫でた。
とりあえず甘味料は手に入る……。後は……きな粉を美味しく食べるなら……。
「この前買ってきた白米、何種類かあったみたいだけど、もち米ってある?」
「ん?一応あるぞ。」
俺たちは餅つきをすることにした。
「そう言えばもち米って普通の米と何が違うんだ?」
ペッタン ペッタン
「含まれるでんぷんの種類だな。もち米はほぼ100%アミロペクチン。他の米はアミロースがもうちょい多くてうるち米って言うんだ。」
ペッタン ペッタン
「よし!私にレシピを頂戴!」
ペッタン ペッタン
「良いけど……どうすんの?」
ペッタン ペッタン
「私なら上手くやればもち米をうるち米に、うるち米をもち米に出来るかもって思ったんだけど。」
ペッタン ペッタン
「あー!」
俺は納得した。ちなみに俺たちの後ろではリーダーとミズタマンによる餅つきが行われている。ニジがとことこ歩いて来てメイの服の裾を引っ張った。どうやら餅つきが終わったらしい。
「今から餅を丸めるぞ~!」
「それからこのきな粉にまぶしてください。」
俺は大豆を潰して作ったきな粉(樹液を煮詰めた粉を混ぜ合わせたもの)を皿に出して台所の台に置いた。
「ちなみにもち米ってお値段はどれくらい。うるち米の5倍くらいかな~。」
「高いな?!」
「だってお餅は高級品だもん。お祝いの時に食べるの。」
「マジか。」
それを今思い付きで食べてしまっている俺たち。
「この前の蛇が高値で売れたから良いかなーって。」
確かに自給自足できる状態で53万ポンの収入があればなかなかいい気はする。
「ふむ。つまり、うるち米をもち米に出来れば商売が出来るな。」
「確かに。上手くいったら町に売りに行こうか。」
そう言いながら俺たちはきな粉餅を作った。
「今日のおやつはきな粉餅です!」
「お前いつも俺の感情食ってるよな?現物のおやつ食っていいのか?」
「確かにダイエット中だけど!!足りない栄養を補う方面のおやつでもあるから!!」
「……。」
「……夕飯のご飯を少し減らします。」
「ふむ。」
メイは頷いてきな粉餅を食べ始めた。
「なにこれ美味い!!」
「だろー!」
どうやらこの世界では餅はしょっぱい味で食べるのが普通の様だ。メイの体重は分からないけどどちらかと言うと細めなのでもっとこう、食べる楽しみを知って欲しいと思う。BMI22が一番病気とかになりにくい。つまり痩せすぎも良くないということなんだから。
「なんか……こう、お茶とかもあると良いかな。」
「お茶……。」
俺たちが今まで飲んでたのはお冷だ。つまり水である。たまに何か柑橘類を絞ってるみたいで爽やかな感じになってたりするけど基本的に水だ。
「確か、この辺に……。はい!どくだみ茶!!」
メイはそう言うと笑顔で研究室の奥からどくだみ茶を持ってきた。
「どくだみ茶かー。」
何か効用がありそうだなー、と思う。
淹れてもらったので飲んでみた。
「うーん……。これっていつも飲んでるわけじゃないよね?」
「ん?まあ薬だよな。」
「ですよねー!」
どくだみ茶は……結構苦くて独特な癖のあるお味でした。多分慣れれば美味しいのかもしれない……。
「俺の求めてるお茶はどっちかというと緑茶とか紅茶とか……後は麦茶とか。」
「お茶はなぁ……高いから基本的に買ってないんだよな。」
どうやら常飲するなら栽培所で作ったりするしかなさそうだ。
さてビタミンB1についての心配が少なくなったので、少し俺の気持ちに余裕が出来た。まあ、この国としては依然として危機的な状況だとは思うのだけど。
「とりあえず俺の研究所の商品として、もち米を作ろうと思う。」
普通のうるち米を買ってきてもち米にして売ろうという話だ。
「で、錬金術を使っていくにあたって米についてもっと詳しく知りたい。実、後は頼んだ。」
「任されたー。」
米の良いところはまあ結構保存できるってところだ。商品が売れ残ってもリスクが少ない。
さてこの世界の米だが、食べてる限り普通なので恐らくジャポニカ米だろう。インディカ米ならもっとぱさぱさしているだろう。
「米の75%はでんぷんだ。そのでんぷんにはアミロースとアミロペクチンがある。もち米はアミロペクチンがほぼ100%で、うるち米はアミロペクチンが80%、アミロースが20%くらい含まれている。」
「思ったより差は無いんだな。」
「たった20%。されど20%って感じだな。」
メイは早速米のでんぷん構造をいじることにしたようだった。この実験が上手くいけば白玉粉の販売も可能かもしれない。
油の抽出はそれ用の研究設備があったらしく言ったらすぐに稼働させてくれた。ただしオリーブは無く、大豆油と菜種油である。
「実?」
メイは首を傾げて俺の顔を覗き込んできた。
「な、なに?」
「最近、微妙にずっと何か思ってるだろ?」
どうやら俺は思ったより顔に出やすいらしい。
「そっかー。」
「何だ?」
「多分メイにはバレバレなんだろうなって。」
そう言えばメイは眉を寄せた。
「そんなわけないだろ。ただでさえお前は感情が零れないんだから。」
感情が伝わりにくいったらありゃしないとメイは不機嫌そうに言った。
「ずるい。」
メイはそう言うと俺の腹を指で素早くつついてきた。
「地味に痛い。」
「ふはははは。」
俺はメイに話した。近々この国が陥るかもしれない状況について。